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超訳『資本論』 的場昭弘を読む。

超訳『資本論』

超訳『資本論』 (祥伝社新書 111)

的場昭弘(著)
2008年5月1日
祥伝社
840円+税


午前5時30分起床。浅草は晴れ。妙に暖かな朝だ。この本のアマゾンでの書評をみると賛否両論なのだけれども、その賛否が、書かれている内容ではなく、要約が〈わかりやすい/わかりにくい〉であったりして、それがあたし的にはどうでもよいのは、要約なんていうのは、既に(ある程度)わかってる人には簡単に読めるが、そもそも『資本論』がなんだかわからない人が、『資本論』の要約を読んでも、なんだかわからないは当たり前だと思うからだ。

マルクス理解の要は、貧困や格差は政治と経済で解決できるということにある。ここが新自由主義的、リバタリアン的な、自己責任教義に慣れた脳みそだと最初の壁になるかもしれない。つまり所有権はあたしらの権利の中心になるのではなく生存権が中心となる。つまり生きることは(小泉さん的な)自己責任じゃなくともいいってことだ。

あたしはマルクスをリスペクトしている(ことは公言している)、なので『自己責任とは「なにが起きても他人(ひと)のせい」のことである。』等と書いてしまっていたりするけれど、だからと云って共産主義者ではなく自民党員であるのは、学生の時勉強した経済学というのが、マルクス経済学(マル経)であったからでしかなく、あたしの経済学の素養なんていうのは『賃金・価格及び利潤』でできあがっているし、昔の自民党というのは、配分(開発主義)を前提にした生存権の政党だったからだ。

しかし社会に出てから、それが役にたったのかといえば、たたなかった。けれど役にたたなくてもなんとでもなったのは、時代がそんなことを意識しなくても大丈夫だった(右肩上がりの時代)からでしかなく、みんなが生きていくには、なんにも考えず勤勉に働くことで十分な時代だったからだ(国民総中流)。

しかしITコンサルタントとして独立してからの時代は、開発主義が否定されることで、自己責任の時代は加速し、あたしが学生の時に勉強したものは、ますますあんまり役にたたないものになってしまった(ように感じた)。それでジョセフ・E・スティグリッツの『スティグリッツ入門経済学 <第3版>』を教科書に、近代経済学を学び直したわけだ。それも40歳を超えてからである。※1

そのおかげで、スティグリッツ先生や、クルーグマン先生や、村上泰亮先生ぐらいは読めるようになった。彼らの経済学書は金融資本主義が崩壊した今でも読むに値するのは幸いなのだけれども(たぶん)、それもマルクスがあたしの経済学の基体にあったから選んだ経済学なのであって(たぶん)、学生の頃に覚えたものは今でもずっとあたしをコントロールしているのかもしれない(たぶん、と「たぶん」だらけなのは自分でもなんでだかよくわからないからだ)。

かと思えば、今は『資本論』が売れてる(「読まれている」とはとても思えない)時代なんだそうで、 田原総一朗さんがこんなふうにいっている。

今、ドイツをはじめヨーロッパでマルクスが再評価され、「資本論」がベストセラーとなっている。
日本でも小林多喜二の「蟹工船」がベストセラーになっている。「資本論」を読んでいる人も増えていて、よく売れている。
共産党の志位和夫委員長に聞くところによると、共産党への入党者がここへきて増えていて、この1年間で約1万4000人増えているそうだ。共産党がクローズアップされている。
これは一体なんだろう。

今、「資本論」が読まれている理由とは?

一つには究極の資本主義と言われたアメリカの経済が破綻して、資本主義に問題があるのではないかという疑問を多くの人、特に若い世代が持ち始めた。
それでもう一度、マルクスの「資本論」に関心が集まっているのではないだろうか。
from 暴走した自由主義の反動? 今、「資本論」が読まれる理由 | 時評コラム | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉

超訳『資本論』 は今年の夏に購入した。それで、今頃この本をここで紹介しているのは、上の田原さんのコラムを読んだからなのである。けれどあたしにとってのこの本は、『資本論』入門ではなくて、あたしらの様な商売には必携の Linux コマンドブックのような感覚でである、って云えば、わかる人にはわかってもらえるかもしれない。

※注記

  1. 『人間が幸福になる経済とは何か』。(ジョセフ・E・スティグリッツ)―政治経済学的な立ち居地でブログを書くことが多くなっていること。 参照

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超訳『資本論』(著:的場 昭弘)

『資本論』カール・マルクスの著作です。共産主義の正統性を主張する本です。 資本主義の原理を解析することにより、資本主義の限界を示し、共産主義の正統性... 続きを読む

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