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特別講座 「インターネット度」を読む


■はじめに
この特別講座「インターネット度」を読むは、東京インターネット株式会社が創立3周年を記念しておこなった、貴方のオフィスのインターネット度アンケート調査の結果を、中小建設業の情報化という桃知の視点から分析をおこなったたものです。故に、この特別講座を読むに当たっては、是非、東京インターネット株式会社のホームページに掲載されている−「インターネット度診断アンケート」調査結果発表−を事前に読んで置かれることをお勧めします。
■アンケートの性格
今回のアンケートの位置づけを、東京インターネットは、
・「インターネットの利用実態をマクロ的に把握するために企画」し、
・「その調査対象を「法人単位ではなく、事業所・オフィスを単位とした」。そして、
・「インターネットの今日的普及状況を企業の内面から探りだし、インターネット導入済み企業における活用状況、未導入企業における計画状況等を相対評価の中でどのように位置付けられるものかを診断・指標化する試みを行った」としています。
桃知がこの調査報告書に対して興味を持つのは、
・「建設CALS/EC」への対応を踏まえた「情報化」とは「企業文化の変革」であり、
・「建設CALS/EC」の根底にあるものは、インターネットの文化である「オープン(解放性)」「ボトムアップ(平等性)」「ボランティア(自律性)」といった、いわば「グラスルーツ(草の根)」の文化との認識からです。
今回の調査アンケートは利用者側の「意識」を調査対象に加えることによって、企業の文化的側面をある程度映し出すことに成功していると考えます。
故に、今回の分析は、「建設CALS/EC」の根底を成すインターネット文化の企業文化への現時点での浸透具合を把握し、中小建設業の情報化に対する何らかの指標を得ようという考えです。
■インターネット度5つの指標軸と概念について
東京インターネットでは、今回のアンケート調査の分析を「5つの指標軸を設け、回答者との比較を全体対比、業種対比、従業員規模対比、業種+従業員規模対比の4フィールドの中での相対評価を抽出提供」しています。(表1)
以後の分析については当然これらの抽出結果を基にしていますが、この5つの指標軸を大別すると
1)をネットワークインフラの整備を中心とした「ハード的側面」
2)、3、)、4)、5)を「ソフト的側面」と見ることが出きると考えます。
*1項目60満点、合計300点満点で評価をおこなっています。
表1
インターネット度5つの指標軸と概念
指標目標   概念
1)システムポテンシャル  ネットワーク接続・システム化ステータス
2)ヒューマンポテンシャル 人的資源活用ポテンシャル
3)アクティビティ システムへの取組姿勢、活用頻度
4)モチベーション 動機づけ・触発・活性化等、組織としての取組み意識
5)プレゼンス インターネット上の存在感、企業アピアランス
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調査結果を読む


■全体平均レーダーチャート
まずは、全体の把握の意味から全体平均レーダーチャートから見ていくことにします。
今回のアンケート結果の全体的なまとめは表2のようになります。
全体として、ネットワークインフラの整備を中心とした「ハード的側面」であるシステムポテンシャルに比較し、「ソフト的側面」である他の4項目の立ち後れが指摘される結果と見ることが出きます。
表2
全体平均度数
システムポテンシャル アクティビティ ヒューマンポテンシャル モチベーション プレゼンス
46 34 31 35 29
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■従業員規模別合計度数
これを従業員規模別に分類したものが授業員規模別合計度数です。
この結果を、平均値を100とした比較表示に変換すると表3となります。
東京インターネットの分析通り「合計得点比較で見る限り小→大に徐々に指数得点が高くなっている。これは情報化投資力と不可分でないものと推測される。」は表3においては正しい指摘といえるでしょう。
インターネット社会での利点の一つしての「小規模故の強み」はよくいわれる事ですが、まだまだその強みを発揮できていない様に見えます。
ところが、システムポテンシャルを100とした比較表示に変換すると(表4)ちょっと見方が変わってきます。
表4で見る限り、従業員規模に関係なく、システムポテンシャル(「ハード的側面」)に対する、「ソフト的側面」4項目のうちプレゼンスを除く3項目の比率は「ほぼ同じ」だと見て取れます。
つまり「情報インフラ(ハード)の整備度は、「ソフト的側面」の充実度をある一定レベルまでは比例して引き上げる」と考えます。ハードに対するソフトの比率が、一応に7割程度の数値を示すのは企業のインターネット文化の未熟性を示しているのかもしれません。
「ソフト的な側面」のポイントは、小→大の方向で高くはなっていますが、それは単にハードの整備量によって押し上げられたものと言うことが出きると思います。企業文化としての「ソフト的な側面」つまりは人間的な部分は、どの従業員規模の会社でも沸点を迎えられないでいると考えます。
そしてこの文脈では、ほぼ「ハード的側面」の整備の行き渡った大企業よりも、今後にインフラ整備が必要な中小企業の方が「ソフト的側面」つまり「人材」の劇的変化をもたらす「余裕がある」といえるのではないでしょうか。
ただし、この仮定には一つの前提があります。すなわち、「情報システムへの投資価値をどう見るかで、そのネットワーク環境も形成されるように推測される。」という指摘のことですが、その問題の解答はは経営層・部門TOPの意識にあると仮定して部門TOPのインターネットに対する意識を見ることにしましょう。
表3
平均値を100とした場合の従業員規模別合計度数
従業員規模 合計得点 システムポテンシャル アクティビティ ヒューマンポテンシャル モチベーション プレゼンス 件数
1-9人 69.7 73.9 67.6 74.2 71.4 58.6 210
10-19人 85.1 87.0 85.3 93.5 85.7 72.4 128
20-49人 82.9 84.8 82.4 87.1 82.9 75.9 164
50-99人 92.4 93.3 91.2 96.7 94.1 86.2 323
100-499人 98.3 97.8 100.0 96.8 97.1 100.0 435
500-999人 110.3 108.7 111.8 109.7 108.6 113.8 293
1000-4999人 116.6 115.2 117.6 112.9 111.4 127.6 352
5000人以上 129.7 126.1 132.4 122.6 122.9 148.3 237
回答なし 87.4 87.0 88.2 90.3 85.7 86.2 42
平均 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 2184
表4
システムポテンシャルを100とした場合の従業員規模別合計度数
従業員規模 システムポテンシャル アクティビティ ヒューマンポテンシャル モチベーション プレゼンス 件数
1-9人 100.0 67.6 67.6 73.5 50.0 210
10-19人 100.0 72.5 72.5 75.0 52.5 128
20-49人 100.0 71.8 69.2 74.4 56.4 164
50-99人 100.0 73.8 69.0 76.2 59.5 323
100-499人 100.0 75.6 66.7 75.6 64.4 435
500-999人 100.0 76.0 68.0 76.0 66.0 293
1000-4999人 100.0 75.5 66.0 73.6 69.8 352
5000人以上 100.0 77.6 65.5 74.1 74.1 237
回答なし 100.0 75.0 70.0 75.0 62.5 42
平均 100.0 73.9 67.4 76.1 63.0 2184
■部門TOPのインターネットに対する意識
「但し、小規模であっても意欲的なところも数多く散見され、情報システムへの投資価値をどう見るかで、そのネットワーク環境も形成されるように推測される。」というように、規模が小さくなればなるほど企業TOPのインターネット(情報化)への理解が必要といえるかもしれません。特に中小企業の場合、専門の情報部門、専門の情報化担当者を設けることは難しいでしょうから、TOPの情報化に対する理念と、その理念の企業全体への浸透は特にに重要なことといえます。TOPの意識変革こそが、中小企業の情報化のキーワードであることは、分析結果をそのまま引用させていただくことで十分理解出きる事だと思います。
「情報化に対するTOPの意識はインターネット接続済み企業と未接続企業を比較すると明らかな差が現れている。インターネット接続済み企業では、トップが「非常に積極的」、「どちらかといえば積極的」というポジティブな意識を持つ割合が76%にも上っている。一方インターネット未接続企業ではトップがポジティブな意識を持つ割合は35%に止まっている。加速化する情報スピードへの対応という面でトップの意識が大きく反映されていることが見てとれる。また、インターネットに未接続の法人に勤務する方で、個人的にインターネットをすでに利用している方からは一刻も早く導入してほしいといった切望が回答ににじみ出ている。」
表5
部門TOPのインターネットに対する意識 接続済 未接続
ポジティブ対応(非常に積極的&どちらかといえば積極的) 76% 35%
中間(どちらともいえない) 19% 34%
ネガティブ対応(懐疑的&否定的&無関心) 6% 32%
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■業種別合計度数
全産業的な分析結果を見たところで、我々建設業について考えてみましょう。業種別合計度数をみると、建設業関連は全28業種中(その他を含む)下から数えて8番目に位置しています。建設CALS/ECの実現を考えると、官庁関係が建設業関係のまた下にいるのも気にかかるところでしょう。
さてこれを、システムポテンシャルを100とした比率で置き換えたのが表6です。
こうして見ると、「情報インフラ(ハード)の整備度は、「ソフト的側面」の充実度をある一定レベルまでは比例して引き上げる」という仮説が正しいように思えるし、ハードの数値がソフトの数値を支配しているという意味では、ハード先行で進む我が国の情報化が、いまだ文化と呼ばれるものを生み出していない。
企業体質の質的変化を起こしていない。といえるかと思えます。
しかし、業種別の場合、従業員規模での分析とは異なり業種によるインターネット文化浸透度は歴然とした差があると考えます。
つまり、同じ建設業関連での大と小の差よりも、コンピュータ関連業種と建設業関連の同規模の方が差が大きいと思えるのです。残念ながら今回はその部分の資料がありませんので推測の域を出ませんが、この部分の分析も面白い結果が出るかもしれません。

表6
システムポテンシャルを100とした業種別合計度数
業種名 合計度数 システムポテンシャル アクティビティ ヒューマンポテンシャル モチベーション プレゼンス
コンピュータ・ネットワーク関連製品 393.7 100 79.4 66.7 74.6 73.0
情報処理・VAN・通信サービス 394.8 100 79.3 67.2 77.6 70.7
電子メディア関連 381.4 100 78.0 69.5 76.3 57.6
SI・VAR 391.1 100 78.6 69.6 76.8 66.1
パッケージソフト開発 377.8 100 74.1 66.7 74.1 63.0
コンピュータ関連製品販売業 377.8 100 74.1 66.7 74.1 63.0
ソフトウェア受託開発 384.0 100 76.0 68.0 76.0 64.0
研究所 384.0 100 76.0 70.0 76.0 62.0
電気・電子・OA関連製品 387.8 100 77.6 67.3 75.5 67.3
その他情報サービス 374.5 100 72.3 66.0 74.5 61.7
機械・精密機械製品 371.7 100 71.7 65.2 71.7 63.0
広告・デザイン 367.4 100 69.6 69.6 73.9 54.3
学校教育機関 400.0 100 78.0 73.2 82.9 65.9
平均 380.4 100 73.9 67.4 76.1 63.0
その他製造 375.6 100 73.2 65.9 73.2 63.4
放送・新聞・出版 375.0 100 70.0 70.0 72.5 62.5
印刷関係 369.2 100 69.2 66.7 74.4 59.0
自動車・輸送機械 371.1 100 71.1 63.2 73.7 63.2
会計・コンサルタント 365.8 100 71.1 65.8 73.7 55.3
その他サービス 370.3 100 70.3 67.6 75.7 56.8
電気・ガス・水道 400.0 100 79.4 67.6 76.5 76.5
建設・土木・プラントエンジニアリング 367.6 100 70.6 64.7 73.5 58.8
卸・商社 378.8 100 72.7 69.7 75.8 60.6
病院・医療機関 384.4 100 75.0 75.0 81.3 53.1
金融・保険・証券・不動産 361.3 100 64.5 64.5 71.0 61.3
流通 370.0 100 70.0 70.0 73.3 56.7
官庁・協会・団体 392.3 100 76.9 69.2 80.8 65.4
その他 350.0 100 67.9 64.3 71.4 46.4
運輸・物流 346.2 100 61.5 65.4 69.2 50.0
注)この原稿執筆時点で、東京インターネットのホームページに掲載されている業種別合計度数には、システムポテンシャルの項目が掲載されてない。よって、この表のシステムポテンシャルは桃知が勝手に算出した結果である。
「平均」の合計点は160は間違いで175である旨の連絡をご担当者様よりいただいてはいるが、執筆時点での訂正はまだなされていない。04/25/98 03:00:06

まとめ


今回の分析結果を見ると、現時点での情報化の格差は「情報設備投資力の差」が「規模による情報化の格差」となって現れていると見ることができます。
桃知の研究対象である「建設CALS/EC」を見据えた中小建設業の情報化の視点から言えば、「規模による情報化の格差」は十分に解消出きると言えます。ただし、
情報システムへの投資価値を正しく踏まえた、経営TOPの情報化へのポジテブな意識が必要条件だと言えるでしょう。
現時点での格差は、情報インフラ整備投資力の差であり、決して人間の能力の差でないことに気付いていただきたいのです。そして人間の能力はあるレベルまでは、インフラの整備に比例してのびる事にも注目してください。
「弘法、筆を選ぶ」が正解の時代でしょう。
中小企業はその規模の小ささ故に、インフラへの投資金額も小さくて済みます。インターネット・情報化を取り巻く環境のコスト(パソコンの価格・周辺機器の価格・プロパイダのサービス価格)はますます低価格化する一方、高性能化し続けています。中小企業の情報化にとっては追い風の時代と言えるでしょう。正しい情報化への取組は、規模の小ささ故、人的資源の劇的変化も可能だと思えます。
小さい事の利点を十分に発揮できるチャンスは、これからの情報化への取組次第と言えます。

今回の分析に当たっての資料は、全て東京インターネット株式会社のホームページに掲載された−「インターネット度診断アンケート」調査結果発表−を、東京インターネット株式会社の了解を得て利用させていただきました。
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special thanks to 東京インターネット株式会社



桃知商店
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