THE pinkhip WORLD中小建設業情報化特別講座


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特別講座 「建設省行政情報化推進計画」を読む


はじめに
この特別講座「建設省行政情報化推進計画」を読むは、建設省のホームページ 
URL http://www.moc.go.jp/policy/infinfra/honbun.htmに掲示された「建設省行政情報化推進計画」について、中小建設業の情報化という視点からの分析を試みたものです。故に、この特別講座のご購読に当たっては、是非、「建設省行政情報化推進計画」を事前にお読み頂かれることをお勧めいたします。
「建設省行政情報化推進計画」の位置付け
平成9年12月20日の閣議決定により「行政情報化推進基本計画」が全面的に改訂されたのを受けて、「建設省行政情報化推進計画」が建設省における省庁別計画として改訂されました。この計画は同時じ建設省の「電子情報システム整備目標」として取り扱われ、平成10年(1998年度)から14年度(2002)までの5ケ年計画として策定されています。
行政情報化推進基本計画
行政情報化推進基本計画
基本計画 「基本計画」=政府としての情報化取り組みの基本方針・整備方針
共通実施計画・各省庁別計画 「共通実施計画」=「基本計画」に基づき各省庁が共同分担して実施する事項
「各省庁別計画」=「基本計画」に基づき各省庁が実施する事項
      ↓
建設省の「各省庁別計画」=「建設省行政情報化推進計画」=「電子情報システム整備目標」
■視点
今回の「建設省行政情報化推進計画」を、私の視点、つまり「中小建設業の情報化」というの視点で見たとき、最も注目すべき項目は、

項目第2−2「情報通信技術の活用による建設行政の簡素化・効率化及び行政運営の高度化」と、
項目第2−3「建設行政情報化推進のための基盤整備」です。


ここには、建設省における、情報技術活用によるビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)の推進目標と、そのための必要条件としてのインフラの整備目標が掲げられています。

我々は、これを所詮、建設省の事ではないかと他人事にせず、建設省を自社に置き換え、自社の情報技術活用によるBPR一つの推進目標として読み替えられる事に気付くべきです。
つまり、
「情報通信技術の活用による建設行政の簡素化・効率化及び行政運営の高度化」を、
「情報通信技術の活用による我社の経営の簡素化・効率化及び経営の高度化」と、
「建設行政情報化推進のための基盤整備」を
「我社の情報化推進のための基盤整備」と、読み替えて、自社の事として考えてみるということです。
■項目第2−2「情報通信技術の活用による建設行政の簡素化・効率化及び行政運営の高度化」
さて、項目第2−2「情報通信技術の活用による建設行政の簡素化・効率化及び行政運営の高度化」の内容を見ることにしましょう。
項目2−2は、以下の5つの中項目に分けられています。

・ア 個別業務のシステム化、機能の高度化およびシステム間の連係
・イ 文書の管理・流通のシステム化
・ウ 情報共有の推進
・エ LAN等情報通信基盤の活用によりる業務の効率化・高度化
・オ 民間へのアウトソーシング等の推進

ここに記載されていることは、どれもすべて重要なことなのですが、特に注目すべきは、ウ-2とエの2と3です。
曰く、
ウ 情報共有の推進
2. データベースのイントラネットの活用等
 各部局内のLAN及び建設行政WANのイントラネットを活用し、各種データベース等の情報共有の推進を図る。また、本省においては 他省庁に提供可能なデータベースについて、霞が関WANによる省庁間利用を推進する。

エ LAN等情報通信基盤の活用による業務の効率化・高度化
1. LAN等の一層の活用の推進
 LAN等に組み込まれた電子メール、電子掲示板、イントラネット等グループウェアの各種機能を最大限に活用し、LAN等による業務 の簡素化・効率化、コミュニケーションの円滑化・高度化等を推進する。このため、特に説明を要せず読めば理解可能な、連絡事項をは じめとした情報の伝達・共有については、電子メール、電子掲示板、イントラネット等を活用することとし、原則として紙による配布は行 わないなど紙媒体の配布を制限する措置を検討する。
3. テレワーク
 情報通信技術の活用による業務の効率化、労働生産性の向上を図るため、先行省庁の検討を参考にしつつ、サテライトオフィス勤務、在宅勤務等のテレワークの導入について調査研究等を進める。

ここには、注目すべき用語が沢山使われています。「LAN」「WAN」「データベース」「イントラネット」「電子メール」「電子掲示板」「コミュニケーションの円滑化・高度化」「テレビ会議システム」「テレワーク」等など・・・・。
これ程情報技術の専門用語がふんだん使われた公文書というのも建設省では珍しいのではないでしょうか。それだけ情報技術用語も一般的になってきたと理解しましょう。エの1などは、そのまま、どこの会社にもあてはまる考え方です。
例題1
項目2−2−エ-3. 「テレワーク」について、自社の立場で考えてみましょう。
回答例 情報通信技術の活用による業務の効率化、労働生産性の向上を図るため、先行事例の検討を参考にしつつ、現場へのテレワークの概念の導入について調査研究等を進める。
解説
テレワークは、いわゆる「SOHO」の概念を取り入れた勤務スタイルの一つですが、建設業の場合、本社事務所とは別に存在する「現場」での仕事は、じつに「SOHO」的です。サテライトオフィスを「現場」と読み替えるとわかりやすいでしょう。
私は、「建設業の情報化とは現場の情報化である」とする立場なのですが、いちいち本社事務所へ戻らなくてはできない仕事というものが、意外と多いのではありませんか?業務の効率化を考えた場合、現場で出来るものは現場ですべきでなのです。
現場と本社事務所のコミュニケーションの改善を考えた場合、エ-1で言われる、電子メール、電子掲示板、イントラネット等グループウェアの各種機能を最大限に活用する必要があるのは、建設省に限ったことではありません。むしろ中小建設業の皆さんにこそ必要な意識だと考えます。
■項目第2−3「建設行政情報化推進のための基盤整備」
(1)情報通信基盤の整備

項目第2−3「建設行政情報化推進のための基盤整備」は、項目題2−3実現のための基盤(インフラ)の整備についての指針です。

(1)情報通信基盤の整備では、一人一台のパソコン配備等、基本インフラ整備について書かれていますが、「庁外業務のためのモバイル端末等情報機器の整備を推進する。」と、ここでも「モバイル」という公文書ではめったにお目にかかれない情報技術用語が使われていたりします。
例題2
項目第2−3−(1)−ウ「 民間部門との間のネットワーク基盤の確立」の読替えを試みてみます。
原文
個別業務システムについて、申請・届出等手続、データ交換等のオンライン化を実現していくため、インターネット等の活用による民間 部門との間のネットワーク化を検討する。
 また、公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)の実現のために必要な、省内全機関における電子デ−タによる受発信体 制の確立に向けて、セキュリティに配慮しつつ、1人1台パソコンからのインターネット利用環境の整備を推進する。
回答例 建設省から発表された「申請・届出等手続の電子化に係る実施計画」に基づく申請・届出等手続対応を実現していくために、また、公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)対応のために、必要とされる全社における電子デ−タによる受発信体制の確立に向けて、セキュリティに配慮しつつ、1人1台パソコンからのインターネット利用環境の整備を推進する。
解説 電子メール、電子掲示板、イントラネット等グループウェアを利用した社内の情報化にとっては、一人一台のパソコン配備は避けては通れない道です。その上で、社内LANからインターネットへのシームレスな接続の実現は、建設CALS/EC対応に限らず現在の情報化にとっては必要なインフラだと言えます。
■項目第2−3−(2)情報システムの開発、高度化、効率化及び運用・保守
(2)情報システムの開発、高度化、効率化及び運用・保守では、セキュリティの確保、2000年問題等、情報システムの運用・保守に関することが書かれています。これは、社内の情報化に関してそのまま適用できる項目ですので、これから情報化に取り組まれる方も、社内のインフラが整備されてくるに従って、こんな問題が起きてきたり、運用に対してこんな注意が必要なのだなと参考にされると良いでしょう。
■項目第2−3−(3)標準化の推進
標準化は情報技術活用によるBPRの基本です。次の項目が掲示されています。

ア ネットワークの標準化
イ 電子文書等の標準化
ウ その他
  1、地理情報システム(GIS)のデータ様式の標準化の促進
  2、公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)における標準化等

標準化はについては、「中小建設業情報化講座」で詳しく解説していますので、そちらを参照していただければ幸甚です。
■項目第2−3−(4)その他情報化を推進するための基盤整備
面白いのは「イ 人的基盤の強化」が明記されていることである。「情報リテラシー」という用語が使われているのも注目できます。
イ−2における、「情報化をリードする中核的な人材の養成・確保努め、全体的な除法処理能力の目差す。」は、情報化キーマンの必要性を言っています。
イ−3では、コンサルタント、SI等の外部リソース(人材)の活用を図るは、私の立場からは手前味噌になってしまいますが、必要且つ有功な手段だと言えます。
例題3
 
項目第2−3−(4)−ア−1「職員の情報化能力の向上」を、自社の立場で考えてみましょう。
原文
1. 職員の情報活用能力の向上

 職員の情報活用能力、いわゆる情報リテラシーの向上を図る観点から、管理職等への個別講習の実施等、情報システム関連の講 習会、建設大学校で実施している研修等の一層の充実を図るとともに、ヘルプデスク(パソコンの操作方法等の問い合わせに個別に応 じる外部スタッフ)の設置等を検討する。
回答例  職員の情報活用能力、いわゆる情報リテラシーの向上を図る観点から、管理職等への個別講習の実施等、情報システム関連の講習会等の一層の充実を図る等、職員の情報化意識向上のための対策を検討する。
・情報化推進組織の編成
・情報化キーマンの育成
・外部の人材(コンサルタント、SI等)の活用
解説 建設CALS/ECへの対応を見据えた社内情報化とは、社員の情報リテラシイの向上と、それによる会社風土の改革以外のなにものでもありません。
つまり、社員が自由に情報機器を扱えるスキルを持つ事が、すなわち建設CALS/ECへの対応となるわけですから、御社の社員の皆さんが情報化に対する向上意識を持てる内部体制を作り上げる事が必要だと思います。
また、社員のコンピュータリテラシイの向上にはそれなりの時間が必要ですので、取り組みは早ければ早いに越した事はありません。
■項目第2−3−(5)共通課題の解決
この項目で言われることは、非常に重要です。つまり、建設省が選ぶハードとソフトの問題です。
極端な話、建設省で使われているソフトウェアは、建設業界でのデファクトスタンダードになる可能性が非常に高いと言うことです。これは、建設省が意図しなくとも必ずそうなることと思われます。
建設CALS/ECは、データの標準化を当然要求していますから、発注者である建設省と受注者とのデータ互換性能は高ければ高いほど業務効率は上がります。
最も高い互換性能の保証は、発注者、受注者ともまったく、同じハードとソフトを選択することにあります。しかし、この考え方は非常に危険な側面も持っています。
この部分は関しては、建設省の慎重な対応が望まれるところですし、アプリケーションメーカーの発想の転換(データ非互換の囲い込み戦略からの転換)が望まれるところです。
まとめ
今回の「建設省行政情報化推進計画」に記載されている内容は、我々経営の情報化を職業にしているものから見れば、非常に優等生的な計画ですし、教科書通りの真面目な取り組み案とも言えます。
しかし、今頃、まだこんなこと言っているのか、という部分もあります。建設省に限らず行政の情報化は結構遅れていたようです。
しかし、それ故、早急な行政の情報化改革が求められているのも事実です。そして、中小建設業は、その行政の情報化改革の波をもろにかぶらざるを得ない状況に置かれていることも、今回の計画を読めば十分理解できることと思います。

今回は「中小建設業情報化支援」の視点から、「建設省行政情報化推進計画」を、皆さんの会社の情報化に置き換えて読まれることを提案しました。
現時点では、発注者である建設省の情報化は特別進んでいるわけではありません。しかし、この取り組みは確実に成果を上げていくことと思います。
中小建設業の立場は明確です。発注者に対して、「いつでも大丈夫ですよ」と言えるだけの社内の情報化、体質強化そして、効率的な社内情報インフラ整備の取り組みをしておくことです。それは今からでも十分に間に合いますが、今始めなければ、建設省には対応できないかもしれません。

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情報通信・エレクトロニクス/1998年
Small Office Home Officeの略。会社に出勤してこなしていた仕事を、パソコンとネットワークを利用し、近くのサテライトオフィスや自宅で処理することを可能にする勤務形態。電子メール、ニュース配信、データベース、ファイル転送などを利用すれば、同僚や上司の顔をみずにかなりの仕事が処理でき、他社との取り引きにも有用。通勤時間の短縮、オフィスビルの節約ができ、高性能の情報機器も安価に手に入ることから急速に普及している。アメリカではコンサルティング、マーケティング、金融市場調査などに活用されて利用者は3000万人以上(自営業者を除く)、日本では約40万人を数え、さらに増加する傾向にある。

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tele-work

経済・金融・産業/1998年
自宅や自宅近くのサテライトオフィスを仕事場とし、企業との間を通信で結んで出勤することなく仕事ができる勤務形態。通勤の負担がなくなり、時間や空間が節約できるほか、主婦や高齢者、障害者にも働く機会が広がるなど、利点が多い。一方で、同僚とのスキンシップがなくなり疎外感に陥る、人事管理がしにくい、などの問題点も指摘される。政府は普及を促すため、導入企業向け優遇税制の創設を検討している。郵政省によれば、95年のテレワーカーはアメリカの1120万人に対し日本は95万人と少ない。しかし最近では移動先で情報機器を使って仕事をするモバイルワーカーが着実にふえている。

出典
DataPal (electric version)91-96 (c)Shogakukan 1996電子ブック版・データパル 総合版 91-96 (c)小学館 1996
DataPal 97-98 (c)Shogakukan 1997/データパル 97-98 (c)小学館 1997
DataPal 98-99 (c)Shogakukan 1998/データパル 98-99 (c)小学館 1998

Thursday, 18-Jun-98 20:37:22


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