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新版 CALS度診断回答と解説

問診表採点表採点解説


■建設CALS/EC対応度診断問診表

問1 貴社の建設業登録業種または営業業種
   @建設業登録業種
   A建設関連業種                 )
   参考:受注比率   公共(   %)   民間(   %)

問2 貴社の従業員数(     人)@
   うち(事務系・営業系     人)A
   うち(技術系       人)B=@−A

問3 Tコンピュータ導入率
    貴社のコンピュータ導入数(     台)C
    うち(現場使用    台)D
   全社導入率C/@(     )%−A
    現場導入率D/B(     )%−B
    ※%未満切り捨て
  
   U使用されているコンピュータの導入形態
    @全て会社で準備
   A従業員個人が準備
    B原則個人で準備だが会社からの購入支援(補助金等)がある
    C会社で準備しているものと個人で準備しているものが混在

問4 基幹系(会計・勘定系)のシステムは
   @PCスタンドアロン
   APC−LAN
    Bオフコン・ホストコンピュータ
   C電算処理は行っていない

問5 社内で使われているOSやアプリケーションは社内標準が策定されていますか
   @社内標準が策定されている
  A一部社内標準が策定されている
    B社内標準はない
  
問6 社内ネットワーク(LAN)について
   @全ての社員のコンピュータがLANで接続されている
  A一部のコンユータがLANで接続されている 
    BLANは構築されていない 
    
問7 問3において現場事務所で使われているパソコンがある場合
   現場と本社、現場と現場間は 
    @ ネットワークとして接続されている
    A 一部接続されている
    B 接続されていない
   参考:接続されている場合、接続方法は
   (                             )

問8 インターネットの利用状況
   T御社のインターネットへの接続環境は
    @全社員が会社から自由にインターネットへ接続できる
    A特定のパソコンから全社員がインターネットへ接続できる
    B特定のパソコンから特定の社員だけがインターネットへ接続できる
    Cインターネットの活用は全て社員個人に委ねている
    D会社からインターネットの接続は出来ない(認めていない)
    
 U御社のインターネットメールの利用状況は、
    @会社として全社員にメールアドレスを配布して活用している
    A会社として特定の社員にメールアドレスを配布している
    Bインターネットメールの活用は全て社員個人に委ねている
    C会社ではインターネットメールは利用していない(認めていない)
    
問9 TCADの利用状況
    @導入済み
    A未導入

   UCADの利用は
    @専任のオペレータが専用のCADを使っている
    A現場担当者がそれぞれCADを使っている
    B専任のオペレータと現場担当者がCADを使っている

問10 建設CALS/ECの存在をご存知でしたか
    @はい
    Aいいえ

問11 御社には、社内の社報化を推進されるIT化キーマンがおられますか
    @はい
   Aいいえ

問12 御社には、社内のIT化を推進するための会社公認の組織があり機能していますか
    @はい(公認)
    Aはい(非公認)
    B公認組織はあるがどちらかというと機能していない
    C非公認組織はあるがどちらかというと機能していない 
    D組織はない
 
問13 御社の社長様はパソコンを使えますか 
    @はい
    Aいいえ

問14 御社の社長様はIT化に対して自ら積極手に取り組んでいますか
    @はい
    Aいいえ

問15 よろしければ、貴社のISOへの取組み状況を教えてください。
    @ISO9000’s取得済み(若しくは取得中)
    AISO9000’への対応は考えていない


■採点

別表の採点表により採点を行う。評価は100点満点からの減点法としている。ただし、建設関連業種(建設コンサルタントや測量業)の場合、現場利用パソコンや現場からの接続の必要が無いことを考慮し、対象設問 (問3-T及び 問7-T)の減点分を問1の業種別によって調整を行っている。つまり満点は90点となる。

70点以上を合格としているが、想定した0点モデル(IT化不可能)と合格モデル(70点以上)を参考までに例示している。

◇合格モデル(70点以上)
・コンピュータの導入率が全社、現場ともにで51%以上あること
・その導入形態は最低でも個人準備に対して何らかの会社補助が行われていること
・OSやアプリケーションの社内標準は全てではなくとも一部でも策定されていること
・LANの構築は当然として、一部でも現場との接続が行われていること
・インターネット接続は最低レベルで特定のパソコンから特定の社員が接続できていること
・メールの利用は最低レベルで特定の社員にメールアドレスを配布していること
・CADについてはなんならの形で現場レベルでの利用が行われていること
・建設CALS/ECについては当然に理解していること
・IT化のキーマンが存在していること
・会社公認のIT化推進組織が存在し機能していること
・社長はパソコンを利用していること
・社長自らがIT化に対して熱心に取り組んでいること
・ISO9000'sについては取得済み若しくは取得の取組みを行っていること

以上の条件を全て満たしたところで合格点としたが、実はこれさえも出発点にしか過ぎない。
つまり、この合格モデルというのは戦略的IT化のスタートに立てる最低要件であるに過ぎないことを理解してほしい。

◇不合格(69点以下)

これには二種類ある。

1・問13が「@はい」の場合

この場合かなりの確立で「脈」がある。極端な例として、問13だけが「0」であり、ほかの全ての設問がマイナス評点でもかまわない。IT化にとって何より大切なものとは、経営者自ら熱意とリーダーシップである。
但し、この場合問題となるのは経営者のIT化への理解度とIT化ベクトルであるが、注意すべき例としては私が「トップダウンの悲劇」とよぶものがある。(注1)

2・問13が「Aいいえ」の場合

基本的な考え方として、経営者の積極的な取組み姿勢がない場合には、他の関連する質問事項とあわせ合格点には到達できないような点数配分としてある。つまり、問13が「−20」で他の全ての項目が「0」という評点は得ることは出来ないような設問設定とした。
つまり、経営者にその姿勢がなければ、なにがどう進んでいようが不合格ということである。

◇0点モデルの説明
全社的コンピュータ導入率を除き、全ての項目で最悪の状況の場合を「0点」とした。このモデルではコンピュータの導入率が30%以下の場合には−(マイナス)評点となるが、69点以下は不合格であることには変わりなく、それは問題にするようなものではない。

■解説

以下、私が今までに収集したデータによる回答傾向を例示しながら、効率的なIT化への要点を述べる。

問1 「業種」によるIT化格差

◇建設業登録業種

建築、土木、設備等の建設業登録業種におけるIT化意識は総じて低い。IT化先進企業とよばれるところでも、従業員一人あたりのパソコン導入率が100%であるところは極めて稀である。ましてや、イントラネットを活用した現場を含めたネットワークの構築事例などはまだまだ例外的に存在しているに過ぎない。

◇建設関連業種

この業種において最もIT化が進んでいるのは建設コンサルタント業界であり、従業員一人あたりのパソコン導入率は100%を超えるところも多い。建設コンサルタントは扱う商品が「情報」そのものであり、むしろ建設コンサルタントは建設業の枠に入れるよりは情報産業と呼ぶべき位置にいるのだと考える。この建設コンサルタントと同じ流れにあるのが測量業や地質調査業である。

これに対して建築設計業界の取組みには個々のレベルで大きな較差がある。建築設計は比較的小規模な事業所が多いことで、個人レベルでのIT化意識がそのままIT化進展具合の格差となって現れている。

これらの業界に共通して見られる傾向は、スタンドアロン的な業務レベルでのIT化に取組みが留まっている傾向が強いことである。つまりIT化がコミュニケーション重視、知識共有型IT化重視の視点欠如のまま推移していることが多い。表面的にはIT化が進んでいるように見えるのだが、その実旧来業務をそのままデジタル化したに過ぎないレベルで終始している例が多いのは残念なことである。

◇市場によるIT化格差

特に公共土木を中心としている中小建設企業のIT化意識は低い。これは問15の解説でも触れるが、公共事業(市場)にIT化誘引が存在していないことを証明している。

問題は経営者の戦略策定能力の欠如に及ぶ。ご存知の通りCALSは建設省と建設産業界の戦略(Strategy)として存在しているはずなのだが、多くの公共事業中心の地場型中小建設企業はこれに対する戦略を持つことができていない。

つまり公共事業は戦略なき経営が可能な市場を長い時間をかけてつくりだしたが、その代償として、今という時代(IT革命)が最も必要としない、競争力(コア・コンピタンス)なきそこそこの業務遂行能力を持つ大量の中小建設企業と、戦略なき大量の経営者を生み出してしまったということだろう。

問2 「従業員数」によるIT化格差

従業員数によるIT化格差に一定の傾向は見られない。つまりIT化に会社規模の大小は影響を及ぼさない。むしろ、小規模ながら経営者のリーダーシップが発揮され全社的なIT化モチベーションの高い場合の方が、大規模会社のIT化進捗状況を遥かに凌駕する事例がある。さらにはIT化の初期段階においては、むしろ規模の小ささ故の有利さが機能する場合の方が多い。

問3−T 「コンピュータ導入率」

◇限りなく一人一台の実現を

この設問への答は明快である。限りなく一人一台の体制実現を早急に実現すべきである。導入に関しては、中小規模の建設企業においてパソコン導入を段階的に分割する方法はあまり薦められない。過去においては段階的な導入を推奨する意見もあったよだが、既に時遅しである。この方法は社内での情報リテラシー格差、モチベーション格差が生まれやすく全社的なIT化への障害としかならない。出来る限り同時期に一人一台体制を実現し、一人の落伍者も出さないという意識での取組みが重要となる。

◇現場のIT化視点の有無

さらにコンピュータ導入台数の問いは、全社部分と現場使用の部分を問うが、私は全体的な導入率よりも現場使用率をより重視している。つまりここでは「現場のIT化」への視点有無を確認しようと試みている。

総じて、建設コンサルタントや測量業という「建設関連業種」でのコンピュータ導入率は高い(ただし、これらの業種は現場で使用する必要はあまりない)。

一方、土木、建築業等の建設業登録業種(特に地場型中小建設企業)における導入率は、平均で一人あたり0.3台から0.4台程度であり、一人一台の環境を持つ例は極めて例外的に存在するだけである。

これらの地場型中小建設企業では、現場でのコンピュータ利用もまだまだ本格化していない。それはコンピュータが事務処理的なもの(OA化レベルの認識)という呪縛(IT化概念)から脱却していないことを物語っている。

建設業の特徴は現場の存在にあり、現場にこそ自社の「コア」が存在するという意識がない限り、建設企業のIT化は閉塞したまま進展は見られないだろう。建設業のIT化とは「現場のIT化」にほかならないことを肝に銘じてほしい。

問3−U「 会社購入か個人所有か」

もう一つの問題は、現場で利用されるパソコンの多くが社員個人の所有物であることが多いことである。これは会社のIT化対応の遅さに業を煮やした技術者の「あせり」なのかとも感じている。業務で使用するものである以上(また現場を含めたネットワーク構築を前提とすれば)業務で使用するコンピュータはセキュリティに面からも会社が準備する必要があることはいうまでもない。

問4「基幹系」

基幹系の問いは補助的な質問である。私はさほどこの問題を重要視していないし、この部分はパッケージアプリケーションの導入で十分だというスタンスである。ただしイントラネット上に本格的な工事データベース、人事データベース等の構築を希望する場合、基幹系との連動は無視できない。この場合の視点とは使われているデータベースエンジンである。広く汎用的に使われているデータベースエンジンを持つものを選択すればよいだろう。

問5 「社内標準」

この問は使われているアプリケーションを問題としているのではない。問題は使われているOSやアプリケーションが「社内標準」「自社標準」として策定されているかどうかということを聞いている。

この「社内標準」策定は意外と行われていない。この問と問12のIT化推進組織の有無や活動状況、問14の社長のリーダーシップを重ねみると、御社のIT化取組レベルの基幹部分の状況(意識、活動状況)が明らかになる。

問題は社長のリーダーシップの機能しない、極めて社員の自主性に委ねられたボトムアップ的なIT化である。その手法は部署毎、現場毎、個人毎という極めて局部的な勝手な標準が作られ、いざ全社的にネットワークを構築する、標準化を行う場合に過大な苦労を強いられることが多い。

IT化は標準化の作業であり、全社的な合意形成の作業であり続ける。その合意形成活動に社内標準を策定しないようなIT化は存在し得ない。

また、全社的、組織的IT化には会社公認の(社長のリーダーシップに支えられた)IT化推進組織の存在は欠かせないが、公認されたIT化推進チームが存在する場合でさえ、この標準の問題をないがしろにしているケースが意外と多い。これは端的なはなしIT化に対する勉強不足故なのだが、しかしそれはIT化とよべる代物ではないといわざるをえないだろう。

問6 「ネットワーク」

コンピュータが2台以上あればLANを構築するのは今や常識となっているようで、LANの構築率は非常に高い(ほとんどがWindowsによるPeer To Peer型である)。ただし、LAN環境で行われているものはファイル・データの共有とプリンタの共有がほとんどであり、グループウェア・イントラネットというような、よりコミュニケーションを重視したIT化組みを志向している例は建設業登録業種においては極めて稀である。
もっとも従業員一人一台の体制が整備できない状況で、そのような社内メールやグループウェアを利用すること自体が意味の無いことであるが。

建設関連業種(特に建設コンサルタント)においてはグループウェアはあたりまえのように導入されている。ただし活用レベル(IT化ぼベクトル)にはかなりの企業格差がある。

問7 「現場は自社のネットワークから除外されていないか」

社内LANこそかなりの普及を確認できるものの、現場と本社、現場と現場間がネットワーク化されている例は極端に少ない。これは「現場のIT化」視点の欠如故だと考えるが、建設業関連業種においては現場を自社のネットワークから除外しないという視点の欠如は建設業のIT化においては致命的でさえもある。私はこの現場を含めた全社的ネットワークの構築にはイントラネットの構築を推奨している。「建設CALS/EC」に対応すべきは現場にほかならない。

問8-T「インターネットへの接続環境」

この質問への最多回答は「特定のパソコンから特定の社員だけがインターネットへ接続できる」と「インターネットの活用は社員個人レベルで行っている」である。100%のコンピュータ導入率を示すような企業でも、インターネット接続を制限しているような企業さえもある。

IT革命の本質はインターネットによるコミュニケーションのスピードと質の変化にある。コミュニケーションがマネジメント(経営)の基盤をなすものである限り(人間社会生活の基盤でもある)、自社がIT革命に勝利し、情報社会で活躍できる精神的基盤は「インターネットの精神文化」にしかないという認識が不足しているのは否めないだろう。

しかし、現時点で「会社からインターネットの接続は出来ない(認めていない)」という回答しかできないない企業は、IT革命を生き抜くことを既に諦めたとしか思えないし、その様な企業がCALSに対応できるとはとうてい思えない。

問8-U「インターネットメールの利用状況」

最多回答は「社員個人レベルに委ねている」である。つまり会社としてのIT化視点にインターネットの利用、電子メールの活用という文脈が存在していない企業が多い。建設業界ではIT化においてインターネット利用を軽視する傾向が強い。それは経営者のインターネットへの理解不足(つまりイマジネーションの欠如)故であろう。その意味でも、まず経営者こそがインターネットを活用し自らその精神文化を感じ取る必要がある。

問9 「CAD」

これは補足的な質問であり、自社の「コア」はどこにあるのかという意識確認を行っている。驚くことには土木、建築主体の中小建設企業ではCADは使われていないという回答が多い。これはつきつめていくと施工図さえ自ら書かない(外注している)というような回答を得ることとなるのだが、中小建設企業での現場のIT化を考えるとこの傾向が抱える問題は無視できない。

「現場のIT化」とは、現場レベルでの職務遂行能力の向上を目標とする。それは「優秀な個」としての現場担当者を育成しながら「優秀な個の集合体」としての自社の実現を図るものである(「技術と経営にすぐれた建設企業」の本質はここにある)。

尚、CADアプリケーションについては現場で使いやすいものを使えばよいであろう。CALSにおけるCADデータの標準規定に準拠したデータフォーマット(SXF)を出力できるもの(コンバート可能なもの)であれば特に問題はない。

問10 「建設CALS/ECの存在認知」

この診断をはじめた当初は「建設CALS/EC」を知らないという回答がかなりあった。最近はさすがに知らないという回答を見ることはない。ただしその認知度が建設CALS/ECを推進する側(発注者)を含めてどの程度なのかと考えると上滑りしている感は否めない。つまり「建設CALS/EC」とは、電卓とペンと製図版がコンピューターに置き換わるだけのものという認識から脱却出来ていないように思える。

問11 「IT化キーマンとは誰か」

全社的なIT化のリーダーとして、IT化キーマンはIT化推進組織とともに不可欠のものである。この問いへの回答は「いる」と「いない」が半々程度である。ただし「IT化キーマンとは誰か」という部分になるとかなり問題がある。私はよくいわれているような、いわゆる「パソコンおたく」を「IT化キーマン」にすることには疑問がある。

IT化の推進責任者としてのIT化キーマンには最低限のITへの知識は必要だろうが、だからといって自社の「IT化キーマン」がマニアやおたくである必要はない。パソコンマニアやおたくの仕事はせいぜい社内のIT化支援ボランテアである(もっとも、これも重要な仕事ではあるが)。

IT化のキーマンに必要とされるものは、ITに対する知識よりも、だれよりも業務に精通していることであり、さらには誰にも負けないIT化による組織変革に対する情熱を持っていることである。そしてそれを支えるものとして社長自らのIT化への理解とリーダーシップが存在する。

問12 「IT化推進組織」

これは核心的質問となる。回答の多くは「IT化推進組織は存在しない」というものなのだが、例えあったとしても機能していないことが多い。

非公認の組織があるという回答も多いのだが、これはやめたほうがよいというのが私の答である。社内的に(特に経営者)から認められない(支持されない)ボトムアップ的なIT化は必ずどこかで破綻する。それは、最終的にはIT化という経営に直結した取組みに対する責任所在の問題としてである。

会社公認でないIT化の結果は最終的には誰が責任を持つのだろうか。そもそも会社公認でないIT化は何故に経営足りえるのだろうか。IT化とは経営の問題である。

問13 「社長の情報リテラシー」

社長がパソコンを使えないことをそんなに心配する必要はない。私の経験からいえば、パソコンを使えない人は存在しない。本人にその意思さえあれば必ず使えるようになるからである。むしろ問題はIT化に対して理解を示さない方が多い点にある。

問14 「社長という誘引、社長という障害」 

「採点」でも述べたが、今回の診断に中で最も高いウエートを持つものがこの経営者のIT化に対する取組み姿勢である。はっきりいえば、社長がIT化に対して消極的な姿勢である限りIT化投資はしないほうが良いだろう。その試みは必ず失敗することとなる。

IT化はトップダウンの作業である。しかし建設業界においてはコンピュータを理解しようとしない社長が多いのは事実であり、このことから自らをIT化から関係のない位置に置こうとする社長も多い。さらには、自らの理解の範疇を超えて存在するITを、自らが理解できないからといって、自社の社員からも遠ざけようとする場合さえもある。

IT化に対しポジティブな姿勢さえあれば、パソコンを使えない人は存在しないし、自ら学習しパソコンを使い始めることに自らの意識以外に障害はない。問題は経営者自らの意識だけである。自らを(そして自社の全ての社員を)自社の経営的な取組みから外に置く理由はどこにもないのである。

自らインターネットへアクセスもせず、電子メールも使わず、社内のイントラネットにもアクセスしない経営者は、顧客とのコミュニケーション、社員とのコミュニケーションを拒否していることと同義であろうし、IT革命時代、情報時代の経営者としては失格といわざるをえないだろう。

問15 「ISOという品質の第三者評価システム」

CALS文脈からいえば、品質の第三者評価システムとしてのISO9000'sは、公共事業のCALS化の進展とともにその必要性が注目されることとなる。しかし、ISO90000'sへの取組みに私が期待するものとは、経営者自身の「マネジメント」に対する意識向上の面でであり、社員の意識改革のフックとしてである。

率直にいえば、多くの公共事業依存型の地場型中小建設企業ではマネジメントへ視点は極めて薄い。それは、経営者が経営者として業務を遂行しなくとも生存可能な市場故にであろう。IT化は、そのような市場とその下でマネジメント概念を必要としないままに存在している企業にとっては必要はない。その様な企業が例えIT化の取組みを行っても、社長がなぜパソコンを使わなくてはならないのか、なぜ組織的な取組みが必要なのか、なぜIT化に社長のリーダーシップ(トップダウン)が必要なのかを理解できないままのことが多い。

ただし、少なくともISO9000'sの取組みを行った企業においては、その理解を得ることが比較的容易であるることを私は経験的に感じている。


注1
○トップダウンの悲劇
中小建設企業に限ったことではないが、経営者が強い統率力を持つ組織では、IT化推進組織を設けずにトップダウンだけでIT化を進めるケースが多々ある。この場合、経営者が頼るのは多くの場合ベンダーであり、この場合ベンダーに任せきりのIT化がまかり通る。ここで問われるのはベンダーの質である。

中小建設企業の特質を理解できているベンダーは非常に少ない。例えば、建設業界へのIT化市場に参入しているアプリケーションメーカーの多くは、財務、CAD、積算、構造計算等の建設業のある一面に特化した専門メーカーである。つまり専門的な部分に関してはそれなりの効果をもたらす製品を提供が可能だが、経営全体をトータルにマネジメントするようなものではない。すなわち全て単なる部品にすぎない。

多くのベンダーが提供するこのような部品的アプリケーション導入中心のIT化は、中小建設業の本質を知らないベンダーが行う限り木を見て森を見ないIT化の典型となっている。

つまり、自社の組織的変革(社風とか全社レベルでの意識変革)に対する努力もなく、パソコンは社員全員に買い与えた、ベンダーがこれさえいいれれば大丈夫というCADも、積算ソフトもCALS対応ソフトといわれるものも買い与えた。社員の皆さん、さあ、どんどん使ってください。私はなんとIT化に対して理解のある経営者なんだろう(使えないのは社員の努力が足りないからで、私のせいではない)というようなIT化は典型的な失敗事例なのである。これなら、私が否定しているボトムアップでのIT化の方が数万倍効果はある。

2000/12/21 MOMO


桃知商店
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