「ももち どっと こむ」より

還暦祝い!平成30年9月15日(土)桃組「小さな勉強会」と「暑気払い」のご案内。山と山とは出会わぬものだが人と人とは出会うもの(また会う道もある花の山)。

2018年08月01日|イベント



Lesson10 IT化はなぜ遅れたのか(4)―公共工事の目的とルール

市場のルールによるIT化の阻害

[図4]公共工事の目的とルール
[図4]公共工事の目的とルール

この〈自治体発注の公共工事はIT化を必要としていない〉という感覚は、公共工事が抱える本質的な問題に私たちの目を向けさせてくれます。それは、「中小建設業のIT化」の阻害をしているものが、自治体発注の公共工事の持つ性格(目的とかルール)の中に存在しているのではないかということです。ここでは、公共建設市場の目的を大局的に二分類することでそれをみていきます。

公共工事の目的とルールは次のふたつに大分類することができます。[図4]

  1. 「地場経済の活性化と雇用の確保」という目的
      →配分を重視したルール(ヒエラルキー・ソリューション
  2. 「必要なものをより良くより安くより早く校正に」に調達するという目的
       →効率的な社会資本整備
      →マーケット・メカニズムを重視したルール(マーケット・ソリューション) 

配分のルール

このふたつのルールのシェアは、圧倒的に配分を重視したルール(以下「配分のルール」と呼びます)が大きいものとなっています。先の公共建設市場のふたつのヒエラルキーで見れば、「自治体→中小建設業ヒエラルキー」を支配するルールが「地場経済の活性化と雇用の確保」という目的を持った「配分のルール」ですから、その優位性は当然のことです。そして、この「配分のルール」が「ヒエラルキー・ソリューション」という問題解決方法を基盤にしたものであることの説明はもはや必要はないでしょう。

これは「自治体→中小建設業ヒエラルキー」での公共工事が、開発主義的な配分政策に根拠を置いていることを意味しています。つまり、この市場で大切なことは「配分する」ことなのであって、そこでは中小建設業の毛細血管としての機能が期待されています。そして、その目的においては「競争」は、たいして意味を持つものではないということです。

マーケット・ルール

一方、これと対極の存在が「必要なものをより良くより安くより早く校正に」に調達するという、効率的な社会資本整備を目的とした「マーケット・メカニズムを重視したルール」(以下、「マーケット・ルール」と呼びます)です。これは「マーケット・ソリューション」という問題解決方法に位置するものです。

これは市場での自由な競争を前提としたルールです。しかし、このルールが「自治体→中小建設業ヒエラルキー」の対極にあるように見える「国交省→大手ゼネコン」というヒエラルキーで主流なのかといえば、そんなこともありません。このマーケット・ルールは、たしかに公共工事での競争入札の大前提にはなっていますが、今までそれほど有効に機能したことはないのです。

ただ、「自治体→中小建設業ヒエラルキー」に比べれば、「国交省→大手ゼネコンヒエラルキー」ではマーケット・メカニズムが機能しやすいのも確かです。たとえばWTO政府調達協定対象の大規模な工事などがこれにあたります。つまりインターネット社会の「G軸」であるグローバル指向に沿ったような工事は、「マーケット・ソリューション」が問題解決方法として有効である、ということなのですが、そもそもコミュニティ指向の空間に存在する中小建設業には、ほとんど関係のないことです。

Written by 桃知利男のプロフィール : 2007年10月30日 12:46: Newer : Older


このエントリーのトラックバックURL

https://www.momoti.com/mt/mt-tb.cgi/1514

Listed below are links to weblogs that reference

Lesson10 IT化はなぜ遅れたのか(4)―公共工事の目的とルール from 桃論―中小建設業IT化サバイバル論

トラックバック