「ももち どっと こむ」より

還暦祝い!平成30年9月15日(土)桃組「小さな勉強会」と「暑気払い」のご案内。山と山とは出会わぬものだが人と人とは出会うもの(また会う道もある花の山)。

2018年08月01日|イベント



Lesson14 信頼ってなに?(2)―三種類の相互作用

三種類の相互作用

このような情報の二分類によって相互作用については一歩進んだ理解をすることができます。それは、相互作用が物的と情報的の二種類ではなく、情報的相互作用が第一種の手段的情報と第二種の本質的情報によって分類される、少なくとも三種類の相互作用で構成され、それらが常に関連を持った働きをしているという認識です。

 A 物的相互作用
 B 情報的相互作用
   第一種の情報的相互作用、超越論的な枝の情報
   第二種の情報的相互作用、解釈学的な蔓の情報
村上,1994,p136)

またこの分類をこう表現することも可能となります。

  • 経済的交換とは、それにかかわる情報的相互作用の中で第一種の比重が高いもの。
  • 社会的交換とは、それにかかわる情報的相互作用の中で第二種の比重が高いもの。
    村上,1994,p139)

すなわち、経済的交換でみれば、そこでおこなわれる売買という物的相互作用は、量と価格という第一種の手段的情報と、第二種の本質的な情報のふたつの情報の上に成り立っているということです。これは私たちが商品を選ぶときに、いったい何を基準に商品を選択しているのかという「選好基準」の問題を考えることにつながります。つまり、私たちは経済的交換の際に、なにを優先させて商品を選好しているのか、という疑問です。経済的交換においては、これはかなり複雑な要因が絡み合っていることは直感的に理解できるでしょう。たとえば、自動車を購入しようとする時の選好基準(車を選ぶ基準)を考えてみましょう。

私たちは、排気量や馬力や価格が同じであれば、価格の安いものを必ず選択するんだろうか、という問いに対して、「たしかにそういうときもある」と答えることができます。しかし、「そんな時ばかりでもない」と答えることもできるはずです。たとえばハイブリットカーを選択する人の選好行動というのは、機能と価格の対比だけでは車を選ばない典型的な事例です。クルマとして同程度の基本機能と性能を持っていると考えられるカローラを選ぶ人とプリウスを選ぶ人との選好基準を比べたらこれは明確なはずです。環境保全に熱心な方は、少々価格は高くとも環境を考慮した(と世間では思われていると自分が思っている)プリウスを選択している、と考えられます。佐沢隆光は、アマルティア・センの『合理的な愚か者』を引き合いに出してこういっています。

地球環境保全に熱心なあなたが、地球温暖化防止のためにと、太陽電池を屋根に取り付けたり、ハイブリッドカーを買ったりするのは、効用最大化では無論なく、共感でもなく、コミットメントにほかならない。コミットメントは、確固たる主義主張の持ち主にとっての重要な選好基準となる。人間の選好順序を動かす要因は、共感やコミットメント以外にも多数ありうるのに、効用最大化のみを選好基準とする経済人は「愚か者」と呼ばれても仕方あるまい。』(佐和隆光,『経済学の名言100』,ダイヤモンド社1999,p119:ここでいう「コミットメント」とはアマルティア・センのいう「コミットメント」なのだが、この理解はとても難しい。センのいう「コミットメント」に関しては『合理的な愚か者』(アマルティア・セン,大庭健ほか訳,勁草書房,1989)を読んでほしい。正直にいえば私も未だにセンのいう「コミットメント」は理解できない。)

それから、たった二人しか乗れない割にはばかに値のはるスポーツカーを購入する方々の選好基準も、機能や性能と価格の対比だけでは説明がつかないでしょう。これは「かっこいい」(と自分が思っている→他人からそう思われたい)デザインや高性能(それを試す機会は日本での日常生活には存在しない)や数々のレースでの戦歴というような物語性(そんなものは自分には全然関係のないことでしかない)を基準として車を選ぶ人もいるということです。さらには個人がメーカーに対して持っているイメージとか信頼感とかセールスマンへの熱意とかが大きなウェートを占める場合があることも私たちは経験的に知っていますし、先の社長の車はなぜ高級車なのかという問いに対する答えである、買い手が持っている「偉そうにみえるミームを購入している」も、この選好基準の複雑性を物語っていることが理解できるはずです。

つまり、この自動車の例にかぎらず、私たちは普段の「買い物」でも、価格と量の第一種の情報だけではなく、価格と量以外のもっと別な理由から商品を選択している時があることに気がつくはずです。その価格と量以外のもっと別な選好理由が、第二種の情報には含まれている、と考えるわけです。

私たちが商品を選ぶという選好基準は複雑です。金に糸目はつけないという時もあれば、やっぱり安いのが一番、という時もありますし、色々考えたけれども、お金と品質のバランスを考えるとこれがいいや、という時もあるわけです。そればかりではなく、別な店で買えばもっと安いけれども、私はいつもこの店でしか買わない、という時もあります。少々高くても商品やメーカーや販売店を変えない場合は以外に多いものです。

では、何がこのような選好基準を作り上げているのでしょうか。ここでは、経済学がいうふたつの理由をみてみましょう。そのひとつは「情報の非対称性」であり、もうひとつが、取引費用機会費用との相対的な大きさの問題です。 

Written by 桃知利男のプロフィール : 2007年12月23日 10:39: Newer : Older


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