2006年8月26日 三遊亭圓丈・白鳥二人会(仲入り後)

仲入り前から続く。

ワザオギレーベル三遊亭白鳥1

ワザオギレーベル三遊亭白鳥1 

 内容
1.「マキシム・ド・呑ん兵衛」
2.「青春残酷物語」
ワザオギレーベル
2000円(税込)

白鳥師匠初のCDは8月25日に発売されたばかり。 

仲入り後は、ようやく親子会らしくなり、円丈師匠の作品を白鳥師匠が演じ、白鳥師匠の作品を円丈師匠が演じた。まずは白鳥師匠の「パパラギ」から始まった。

パパラギ(円丈作)

パパラギ

原作は『パパラギ』という本であるらしい。パパラギとは、(白鳥師匠曰く)サモアの言葉で「空から降りてきた来た人」のことらしく(つまり白人=文明人)、サモアの何処かの村の酋長ツイアビが、百年ほど前にヨーロッパを旅して帰り、その印象を島の人に報告した演説がベースになっている。

その文明国を日本に置き換えてやるのが落語の「パパラギ」なのだが、そうなるとなにか文明批判臭い噺になりかねない。しかしこの噺はそんなことはどうでもよいのであり、ポイントは瞬間キアスムとでもよべる、話し手が酋長にはやがわりするところにある。

着物をパット脱いで、風呂敷の腰巻一枚になり(パッチははいているけれどもね)タビ、センス、座布団を放り投げ、頭に花飾り、首と腕にはフラダンスのレイをつけて「パパラギ~!」とやる(古典の破壊である)。

そして客もまたこの瞬間酋長の演説を聞く村人にならなくてはならないわけで、全員で(挨拶のことば)「ボラ」とやるわけだ。まあ、ばかばかしいことこの上ない。 あとはひとり語りであって落語的ではなくなる(だから脱ぐ瞬間がすべてなのである)。噺の内容は聞いているほうが勝手に解釈すればよいわけで、つまりこれは(似非or擬似)イタコ落語なのだ。(笑)

白鳥師匠はテレビドラマ出演かなにかの都合でダイエット中らしいが、立派な身体をしていた(つまりデブ)。それはまるでパパラギ的病気(成人病)の酋長といった様相であり、もっとそれを有効に使えば、もっと面白かったのに、と(私は)勝手に思った。(笑)

江戸前カーナビ(白鳥作)

円丈師匠は、たぶん噺をよく覚えていないのだろうが、もしかしたら、わざとそういうフリをしているんじゃないのかと思ってしまう――ファンというものはなんでも贔屓目にみるものでございます――のだから不思議なものだ。

江戸前カーナビを搭載した車はタイガー三号という。自称江戸っ子の中古車屋(火の車)がつくった車である。なのでこのカーナビの名前は「とらさん」といい、つまり、寅さん(渥美清)風に喋る葛飾限定カーナビなのである――「さくら」という妹カーナビもいる――。この車を1000円で手に入れたニート君のなまえは「ひろし」というわけで、これが東洋館でうけないわけがない。(笑)

喋るカーナビなんていうのは現実化しているが、そもそもが落語的なのである。落語が現実化しているのか、現実が落語化しているのか――たぶん大阪弁で喋るカーナビがあったはず――、まさにキアスム図式的展開的に世の中がバカバカしくなっていくことを予見しているリアリティに溢れた噺で、つまりバーチャルもリアルもたいして変わらないという、Web2.0的落語なのだ。(私は)かなり大笑いさせてもらった。

ということで終演である。笑う門には福来る。(笑)