伊藤若冲‐鳥獣花木図屏風をみてきた。

鳥獣花木図屏風(右隻)
鳥獣花木図屏風(右隻)

伊藤若冲の描いた動物たちのまななましい姿を見ていると、人間と動物とのあいだに同質な生命の流れが流通しているのを感じて、不思議な幸福感に包まれます。その昔、まだ人間が動物や植物と分離していなかった神話的な時間が、そこには取り戻されているからです。(中沢新一:『対称性人類学』:p224)

中沢新一の上の言葉は、正確には、静岡県立美術館蔵の「樹花鳥獣屏風」に対してのものだろう。今、上野の東京国立博物館(平成館)」で開催されている、「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」に展示されているものは、よく似ている三つの作品のうちのひとつだ。でも、幸せになれるのは同じである。 中沢の言葉がそのままあてはまる。

オーナーであるプライス氏はこう云うのだ。

プライスコレクションの作品は、宗教や知識、あるいは様式のしがらみとはまったく無縁のものです。作品は自然の本質と深く結びついており、地位や職業に関係なくあらゆる人々にアピールするものです。オクラホマ出身の一エンジニアである私が江戸美術を深く愛するようになった理由は、これでおわかりいただけることでしょう。(プライス氏のメッセージ

これが江戸と云う時代の一面なのだな、と思った。自然との間に流れる、対象性無意識、縦に書く人間の創造性である。人を幸せな気持ちにさせるスーパーフラットである。

それは芸術が、高次元のなりたちをした無意識の働きを、社会の表面に引き出してくる技術のひとつであることからもたらされた特質です。(中沢新一:『対称性人類学』:p222)

プライスコレクション 若冲と江戸絵画展
8月27日(日)まで、国立東京博物館にて開催中。是非若冲を観ていただきたい。
その情報を見る目と創造力の凄さに驚かれることだろう。

対象性人類学

対称性人類学‐カイエ・ソバージュⅤ

中沢新一(著)


2004年2月10日
講談社