フレーム問題の解説

午前5時起床。浅草は晴れ。

昨日のフレーム問題の答えである。

フレーム問題解答
答え:4本 余白を使うこと。

正解の思い込み

フレーム問題とは、『桃論』では「正解の思い込み」と表現していたものだ。今回のパズルでは、周囲8個の点が文字通りフレーム(枠)となってしまい、外側余白が利用可能であることに気付きにくい。問題を見たときに、直感的に浮かぶフレームがバイアスになってしまい、そこから脱け出せない方が多かったのではなかろうか。しかしこの問題は、直感的に浮かぶフレームとは異なるフレームで考えないと解けないのである。

ヒューリスティクス

わたしたちが常識として備えている判断基準のほとんどは直感や感情――二重プロセスでいうシステムⅠ――である。それをヒューリスティクスと呼んでもよいだろう(マニュアルとはヒューリスティクスの集大成である)。それは「不完全ではあるが役にたつ方法」(アインシュタイン)であり、結構正しい解を導いたりする。(笑)

モンティ・ホール・ジレンマとバイロジック」でも書いたように、わたしたちの日常は、いちいち厳密な計算なんかしていないし、多くは直観で生きているわけだけれど、だからといってなにか特別困ったこともないのもたしかなわけだ。

それは、ジャック・ラカン曰く、「解釈(アンテルプレタシオン)は、貸借(アントルプレ)を満たすために、快速でなければなりません。」であり、わたしたちの選択(意思決定)は多くの場合快速である必要から、経験則をベースに解を求めるように脳は進化してきたのだろう(なんらかのミーム的な遺伝がある)。

円環モデルとヒューリスティクス

しかしその脳も「正解の思い込み」に陥るわけだ。今回のパズルでは、その常識が思考の邪魔をしてしまう。(これは仮説的な意見だけれども)ヒューリスティクスは「円環モデル」のような安定した環境ではうまく機能するのだと思う。

しかしいまの時代は円環モデルではない。変動の時代である――たぶん時代は暫くはこんな感じのままだろう。ポスト・モダンというか、高度情報化社会いうか、工業社会の成熟した時代というのは、こんなものだと思った方がよい――。であれば、いままで蓄えてきたヒューリスティクス(「正解の思い込み」)は、フレーム問題を起こしやすというのが、私の主張なわけだ(そしてマニュアル人間は自滅するか動物化する。まあそれも悪いことではないかもしれないが……)。

ではどうしたらよいのかについての私の考えは、簡単に「モンティ・ホール・ジレンマとバイロジック」に書いておいた。つまりバイロジックの実装である。それは合理性(科学的、論理的)――二重プロセスでいうシステムⅡ――の、非合理性への上書きである。

と書くと、お前は合理性重視なのかと云われそうなのだが、反対である。その上書きに耐えられる非合理性――二重プロセスでいうシステムⅠ――がなければ、合理は上書きできないということだ。

ということで、9月11日のセミナーは、こんな遊びを(工作の時間)を使いながら、楽しくバイロジックの実装をIT化のレベルで考えてみたいと思うので、興味のある方は(ない方もどうぞ)お気軽においでくださいませ。

フレーム問題

060910追記:答の図を変更した。変更前は左図であったが、これだと左下の点を二度通るようになってしまう。