マーケット・ソリューション再び

午前5時10分起床。浅草はくもり。

福島県の談合問題は、知事の実弟と福島県の元土木部長が逮捕されるに至って、知事も万事休すである。もう関係ないと逃げ切れることはないだろう。

090627追記:「佐藤栄佐久・福島県知事(67)は27日、県庁で記者会見し、実弟や元県土木部長が逮捕された道義的責任を取って辞表を提出した。」と云うニュースが流れている。梶原さんも佐藤さんも悲しい老後だよな。

それは「公共財ゲーム」で云っても、この象徴の貧困の時代に――つまり感情が象徴界に居座っている時代に――だれもこれを「公正」と感じる人はいないからであって、つまりこれは悪い談合でしかない。(だれも知事を擁護してくれないと云うことだ)。

このヒエラルキー・ソリューションは、私が『桃論』で書いた入札制度の問題点

  1. 落札者の決定指標として価格の偏重
    →これが「似非マーケット・ソリューション」の問題点です。
  2. 入札制度が利権構造をつくり出している点
    →これが「ヒエラルキー・ソリューション」の問題点です。
    (『桃論』:p124)

の2にあたるわけだが、たぶんそれも自然発生的にいつの間にかできあがったものだろう。

それはある意味実践合理的なのであるが、この実践合理性はどんなに堅強にみえるシステムであっても、一皮むけば砂上の楼閣でしかないのも確かで、だれかがそれに疑問を持った途端――なにしろたずさわっている人々がそう思っていることが唯一の存在基盤なのである――、若しくは世間の「公正」の目に晒された途端、こうして第四象限は消えていくのである。

今後は、この反対側に振り子は振れるのは確実であって、次に待ち受けているのは、強烈なマーケット・ソリューションであるだろう。

既に、福島県の入札監視委員会は、すべての工事で条件付き一般競争入札の導入を提案している。

「市場原理に任せれば、(業者同士の競争が高まり)談合はできなくなる」(清水委員長)
このほか、電子入札の導入や随意契約の削減などを県に提案した。

それは当たり前で、わざわざ委員会で議論することでもない(いまや主婦感覚的なものだ)、すべての工事で条件付き一般競争入札を導入すれば談合は減る――1回限りの「囚人のジレンマゲーム」の繰り返しになる――。

それに対して業界側はなにも反論できないのも事実で、なぜなら「自由」と云う観点から云えば、業界が失う自由とは談合する自由であり、それを「公正」とは世間が見なさないからだ。

しかしそれがまた別な問題(地方の疲弊に収斂する)を引き起こすことは『桃論』にも書いた通りであり、たとえば今全国の都道府県で全工事の条件付一般競争入札を実施しているのは、たぶん長野県だけなのだけれども、長野県が実験的にやってきたことをみればよい。

つまり真性でも似非でも、マーケット・ソリューションに真っ向から対応できる中小建設業(公共土木依存型)はいないのである。これについて書き続けると止まらなくなってしまうのでここで止めるが、私の憂鬱は今回の事件の影響は福島県だけにとどまらないだろうから、 『桃論』で書いた悪いシナリオへ現実は傾きつつあることだ。