低価格入札―国で損して地元で稼ぐ(10月22日産経新聞より)

10月22日(日)産経新聞のトップは「国で存して地元で稼ぐ―関東の中堅23ゼネコン 国交省調査」と題されたものだった。

国土交通省が、同省発注工事を落札率80%未満の安値で落札した関東地方の23業者について、その後の落札状況を追跡調査したところ、国発注工事では安値落札を繰り返す一方、自治体発注工事を高落札率で受注する傾向が鮮明に表れたことが21日、分かった。調査対象の業者は中堅規模の地場ゼネコンがほとんど。国の工事を採算度外視で受注して実績を作り、自治体の工事では談合を疑わせる高値落札で利益を上げている実態が浮かび上がった。(三枝玄太郎)

同省が業者の落札状況を追跡調査したのは初めて。過度なダンピングをなくす制度作りのため実態を調べたが、自治体の入札で100%すれすれの高落札率が多いことが分かり、自治体発注工事では談合が横行していることをうかがわせる結果となった。

調査は、平成15年に関東地方整備局が発注した工事634件のうち、80 %未満の低い落札率で落札された工事の受注業者 23社が対象。それから17年まで2年あまりの間、この23業者が同局や都県発注の工事をいくらで落札したか追跡した。 23社がその後に落札した工事は計105件。うち80%未満の低落札率で受注したのは28件で、内訳は国発注が25件、都県発注の工事が3件だった。

061022Sankei.jpg逆に80%以上の高値落札え受注した工事77件の内訳は、都県発注分が58件、国発注分が19件で、4分の3が自治体の工事だった。

80%未満の低額落札は、都県発注分では61件中3件だけだが、国発注分は44件中25件にのぼった。

このうち1社の落札率推移=グラフ=をみると、自治体発注工事の江落札ぶりがはっきりとわかる。

(途中省略)

国交省は「高落札率が即、談合とは考えていない。ダンピングで不良工事されることが困る」としている。

国交省にしてみれば、自省発注工事のダンピングの多さに業を煮やしての調査発表なのだろうが――つまりそんなに安く出来るのなら積算があまいのではないかと云われるのは当然でしかなく、それでは国土交通省の面目は丸潰れなのである、――この報道は自治体発注の工事は高落札率であると云う偏向を読者も持たせかねないだろう。

しかし問題は(地場の中堅・大手の参加しない)小さな自治体発注の工事でさえ(むしろ)、ダンピングは行われていると云うことであり――それは長野県で顕著であったはずだし、私の知る範囲ではダンピングは全国的に蔓延している――、その制度設計のまずさが不良工事を生みかねないし、地場の中小の経営を圧迫し、そこで働く方々の収入を圧迫しているということだろう。

例えば積算単価13000円の普通作業員が、月に20日日間働いて得る収入は実質20万円程度でしかなく、それがダンピングが常識となったら更に下がるしかなくなってしまう。そしてそれは地方(パトリ)の疲弊に直結してしまう。

こういう大新聞の片手落ちの報道を見るたびに、この業界の生きにくさを痛感するし、国土交通省は、国のデザインと云う観点から、もっとパトリ性を重視した生活感ある政策を提示すべきだと思うのだが、ぶれない軸としての大衆は、私のような意見を支持することはないのだろうなと思う。ほんとうにじりじりとするような戦いを強いられている(それも戦う相手がよくわからない)そんな時代なのだ。