どうしたら賃金は上がるのだろうか。

午前7時30分起床。浅草はくもり。

昨日書いた「個人消費が伸びないこと。」に対して、ひできさんからトラックバックをいただいていた。

ありがとうございます。

HPO:機密日誌|先日電車に乗っていたときの会話

「これからきっと賃金があがりますよ。私も小さな会社の社長なのですが、たぶんもうこの春から賃金をあげないと人がついてこないでしょう。」

確かにひできさんの言うことは一理ある。ただ問題は、その上昇した賃金を価格転嫁できるのだろうか、ということだと(私は)思う。

とくに公共事業の場合に。

業界によっては派遣社員の正社員化は進んでいる。「NIKKEI NET|パートの数、5年ぶり低水準・06年1205万人、2年ぶりマイナス

それは特に、対人関係の仕事(スーパー、アパレル、保険)で顕著であることを何処かで目にしたが忘れてしまった。m(__)m

ユーザーとの接続がアナログな業界においては、顧客の存在(収穫逓増モデルでいうシェアの確保・拡大)を優先するのであれば、顧客と接するという最も重要な職種に(一般的には)会社(仕事)に対する忠誠心の少ない(と思われる)非正規社員を置くことは、対顧客サービスの低下を招き、長い目でみれば、顧客の減少につながる可能性が高い。

たぶんそのことは、多くの企業もわかってはいたはずだが、背に腹は変えられない状況から、非正規社員を多用する戦略をとらざるを得なかったのだろうと思う――リストラ戦略。

しかしここにきて、それが改善の方向に向かっているのなら、それはよいことだと(私は)思う。

しかし「Biz-Plus|求人動向も景気「踊り場」シグナルを発信(上野泰也)」がいうように、求人動向は、景気が後退とまでは言わずとも、少なくとも「踊り場」局面にさしかかっているというシグナルを発信しているのではないだろうか。

特に中小企業の場合、その感は強い。

これに対して、中小企業の景況感を示す景況判断指数は、12月に49.1となり、「好転」「悪化」の分岐点である50を下回った(図表2参照)。景況判断指数は05年9月に14カ月ぶりに50台に回復したが、06年7月以降は50をはさんだ一進一退が続いている。売上高が堅調に増加し、雇用・設備の不足感が強いにもかかわらず、中小企業の景況感は一向に改善が進んでいない。「Biz-Plus|価格転嫁難しく、中小景況感は足踏み(商工中金調査部):下の図も」

図表2.景況判断指数の推移

その要因の分析等は、上記の引用したサイトを読んでいただければと思うが、短期的には(中小企業においては現在)、人件費のコストアップを価格に転嫁することが難しいということに尽きてしまうだろう。

労務費(給料)を含めた原材料費は、大企業のそれに引きずられるように上昇している。しかしグローバル化によるフラット化は、中小がそれを売価に転嫁するのが難し状況をつくりだしている。

「これからきっと賃金があがりますよ。私も小さな会社の社長なのですが、たぶんもうこの春から賃金をあげないと人がついてこないでしょう。」

確かにそうしないと優秀な人材は集まらないのだろうが、問題はそれを価格に転嫁できるかということなのだと思う。

特に建設業界の場合、「ゼネコン自滅―泥沼化するダンピング合戦」のように、大手さえも売価を下げてきているわけで――公共事業でさえ、予定価格を下回るようなダンピングが行われている。

それが正常価格ならば問題はないが、決してそんなことはなく、例えば役所の積算単価が、作業員1日8000円程度であるならば、この作業員の月収は20万円程度になってしまうだろう。 

つまり、ここは単純に考えてよいわけで、従業員の正規雇用と賃金アップのためには、その原資が必要でなのであり、それは端的に言えば適正な「売価」である――なにが適正なのかという議論は置いておく。とりあえずは従業員が食えて消費に貢献できるぐらいということで理解しておこう。

公取委も、低価格入札でゼネコン大手など数十社調査したことは先に書いたが、多くの地方の公共事業事業では、これから低価格入札が本格化するだろうと(私は)考えている――談合に過剰反応することで導入が進む一本競争入札がそれを加速してしまうことで、地方の疲弊はますます加速するように(私は)思う。