ウェブ人間論。(梅田望夫&平野啓一郎)

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遅ればせながら『ウェブ人間論』を読んだ。

ウェブ人間論

ウェブ人間論

梅田望夫(著)
平野啓一郎(著)
2006年12月20日
新潮社
680円+税

楽観性

この本を読んで感じるのは、まずなによりも、梅田氏の楽観性が際立つということだ。

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Web2.0 memeは、中景が崩壊した時代の――つまり近景と遠景と、中景の代わりに「交換の原理」(市場原理)しか機能していない時代の生き方を、われわれに示しているのだろうか。

その生き方とは、梅田氏が身をもって示しているように、まずなによりもRadical Trustであることなのかもしれない。

過剰な信頼

それは技術に対する信頼はもちろん、人間に対する信頼さえも孕むように思える――しかしどうしてこんなに楽観的になれるのだろうか――。

私のWeb2.0に対する興味は、なによりも Tim O'reillyの「What Is Web 2.0」にある Radical Trust:過剰な信頼にあって、それをなんだらかんだらと考えてきた。

しかしこの梅田望夫氏と平野啓一郎氏の対談を読んでいると、そんなことを考えること自体が、もうどうでもよいのかもしれないなと思えてしまう。大事なことは、だれよりも(将来に対して)楽観的であることだ。(笑)

動物化

進歩する技術を信じ、そのことによって人類にもたらされる恩恵を享受し、難しいことは考えずに、快適な方へ、安全な方へ、動物的に反応しながら生きること。それがWeb2.0的生き方であるのかもしれないし、それを悪いことだとは思えないところもたしかにある。 

本の内容はと言えば、『ウェブ人間論』という哲学的な?題名とは裏腹に、哲学的でもなんでもない――際立つのは梅田氏の楽観性ばかりだ――ことで、Webの時代の人間のあり方を示している(のかもしれない)。

平野氏は文学者らしく哲学的な議論を振る。しかし梅田氏のRadical Trustがそれを見事に打ち消してしまう。Radical Trustというのは、論理を超えて、なにやらやたらと強いことで(つまりはリバタリアニズム的なんだけれども)、そういう人間のあり方を強調している。

しかしこの楽観性は、(私には)どうも性に合わない――私の性分として楽観的に生きるのがつまらない、というだけだが――、この楽観性、Radical Trustの正体はなんなのだろうか、とまた振り出しに戻り考えるのであるが、そんなことを考えてもしょうがないじゃないの、と言っているのがこの本なのかもしれない。