よみがえり―郵政造反組の復党について。

ピエール・ブルデューのことば

私がその結末を目にすることは絶対にないでしょうが、そんなに大きな危険もなく告知することができると思います。あらゆる集団的構造――家族、アソシエーション、国家――のこうした破壊のプロセスを長引かせておくなら、いまだかつてまったく見たこともない知覚不可能な結果――都市部における暴力等、その徴候はすでにあります――が出現するのを目の当たりにすることになるでしょう。

一方の手で節約(経済化)したものの代価は、他方の手で支払うことになるのです。実施されつつある破壊プロセスの影響はかなり経ってからでなと分かりません。時間をかけなくてはならないでしょう。

医療システムが崩壊するよりも前に、なおも沢山の献身的に尽くす看護師たちがいますし、言ってみれば、システムの意に反してシステムを救う沢山の人々がいるからです。学校システムも同様です。フランスの学校システムは内部崩壊の途上にあります。となれば誰が黙っていられるでしょうか、こんな……非常事態の時に。(ピエール・ブルデュー:『政治』:p68)

政治―政治学から「政治界」の科学へ

ピエール・ブルデュー(著)
藤本一勇(訳)
2003年12月30日
藤原書店
2310円(税込)

藤晟一前衆院議員の復党

異例の評決「10対7」で衛藤氏の復党了承 自民」(朝日新聞)

自民党の党紀委員会(笹川尭委員長)は9日、郵政民営化法案に反対して05年の衆院選で落選、離党した衛藤晟一・前衆院議員の復党願を審査し、異例の評決の末10対7の賛成多数で復党を承認した。「郵政選挙」で落選した元衆院議員の復党は初めて。12日には7月の参院選比例区での衛藤氏の公認を決める。ただ、復党問題が政権の改革イメージの低下や支持率の低迷につながったとの指摘があるなか、党内の反対意見の根強さが表面化した形だ。

開発主義の終焉

郵政造反組の復党は、自民党という政党から小泉色を薄くすることで、小泉以前に戻ることを表明しているようなものだろう。

小泉前首相の言っていた郵政民営化〈賛成/反対〉の二分コードは、単に郵政民営化の問題ではなく、開発主義的利権の占有者としての自民党との決別の選択として有権者に評価されたはずだ。

そのことで多くの国民は、小泉前首相の政策を支持し、この国の開発主義(贈与的共同体性をベースにした産業政策)は終焉を迎えることにになった。

その終焉の作業は今も続いているわけで――例えば、福島、和歌山、宮崎の官製談合問題、そして大手ゼネコンによる名古屋地下鉄談合の摘発、さらには地方都市の首長がつぎつぎと官製談合で逮捕されていること、そして公共事業費の大幅な減少など――、贈与的共同体破壊の大きな流れは止まることがない。

壊れた地方と自民党のよみがえり

そんな中、安倍自民党の動きは、小泉以前の自民党への「よみがえり」のようにしか私には思えない。

そのこと自体を、(私は)悪いことではないと思ってはいるけれど、自民党が抱えているゆり戻し(としての矛盾)は、たぶん国民からの支持率をさらに下げることになるだろう。

そしてその「よみがえり」が、疲弊した地方への、なんらかの救済策となるのか、と言えば――たぶん自民党はそう言ってくるだろうけれども――そんな簡単なものではないだろう。

なにもしないよりはましだけれども、自民党は地方を壊し過ぎたのである――「節約(経済化)したものの代価は、他方の手で支払うことになる」(ブルデュー)でしかない。

ソーシャル・キャピタル

社会資本(ソーシャル・キャピタル)は、壊すの簡単だけれども、つくるには気の遠くなるような時間が必要なのである。公共のサービス、公共の交通、公共の病院、公共の学校、それらと一体となって構築されてきた地域社会、そしてそれに裏付けされるように繁栄する大都市、こうしたことはすべて、構築するのに大変な努力が要ったまったく途方もないものなのだ。

しかしそれらは破壊され過ぎた。それもあっという間にである。しかし「となれば誰が黙っていられるでしょうか、こんな……非常事態の時に。」ということか。