地方財政健全化法案と日経による連結実質収支比率試算。

2007年度決算分はこちら

自治体の隠れ借金

自治体の隠れ借金の存在と、それをあきらかにする必要性にはついては、先に書いた。→「隠れ借金」の開示で公社・三セクの淘汰は確かに加速するだろう―ではどうするのか。

日本経済新聞社は、6月3日付けの紙面で、自治体の連結実質赤字比率(下の図を参照)の試算を行っていた。それは(私にとっては)とても興味深いデータなので、ここにまとめておくことにした(つまり今回はデータだけの記述である)。

地方財政健全化法案

地方自治体の財政再建を早期に促すため、今国会で審議中の法案。実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率の4指標で財政状態を評価。財政状況に応じて「財政健全化団体」か「財政再生団体」として再建を促す。

再生の第一段階が健全化団体で、健全化計画を策定して自主再建を図る。財政がさらに悪化して再生団体になると、総務相から再生計画の同意を得ない限り、地方債の発行・借り入れができなくなる。再生団体になる基準は年内に総務省が決める。(日本経済新聞2007年6月3日付け3面「きょうのことば」より。)

地方自治体の会計区分と4指標の対象範囲

地方自治体の会計区分と4指標の対象範囲

連結実質赤字比率(%)が25%以上だった自治体


市区町村名
(都道府県)

連結実質
収支比率

普通会計
の実質収
支比率

夕張市(北海道)

▲364.5

▲37.8

赤平市(北海道)

▲69.3

2.5

秋芳町(山口県)

▲57.4

5.6

積丹町(北海道)

▲52.1

4.6

室蘭市(北海道)

▲47.4

2.5

熱海市(静岡県)

▲36.1

4.2

泉佐野市(大阪府)

▲35.6

▲8.4

長洲町(熊本県)

▲32.8

0.9

宮古島市(沖縄県)

▲32.1

0.2

10

網走市(北海道)

▲25.5

0.6

現行基準であれば、これらの自治体は財政再建団体になる可能性が高い、ということだろう。ただ総務省は初期投資が大きい下水道や病院については赤字額の計上方法を調整する予定なので、日経の試算はあくまでも目安、と考えるべきだろうが。

連結実質赤字比率11-30位


市区町村名
(都道府県)

連結実質
収支比率

普通会計
の実質収
支比率

11

和歌山市(和歌山県)

▲24.2

0.4

12

留萌市(北海道)

▲22.6

▲3.4

13

羅臼町(北海道)

▲22.6

3.9

14

岩内町(北海道)

▲20.7

2.8

15

釧路市(北海道)

▲19.3

4.8

16

守口市(大阪府)

▲19.2

▲10.5

17

大鰐町(青森市)

▲18.4

3.2

18

宮津市(京都府)

▲17.7

▲3.0

19

今別町(青森県)

▲17.2

2.1

20

美唄市(北海道)

▲17.0

0.0

21

むつ市(青森県)

▲16.9

▲15.6

22

泉大津市(大阪府)

▲16.9

0.5

23

塩釜市(宮城県)

▲16.8

2.0

24

黒石市(青森県)

▲16.1

▲8.8

25

忠岡町(大阪府)

▲15.9

0.0

26

門真市(大阪府)

▲14.6

1.0

27

荒尾市(熊本県)

▲13.2

▲3.6

28

嬬恋村(群馬県)

▲12.6

7.8

29

米子市(鳥取県)

▲12.5

0.8

30

片品村(群馬県)

▲11.3

3.8

計算式

  • 連結実質収支比率=各会計の実質収支の合計/標準財政規模
    地方公営企業は「実質資金不足」という項目を赤字額として引き、実質資金不足がゼロの公営企業は「流動資産-流動資産」を黒字額として加えた――とのこと。

神野直彦・東京大学大学院教授の話

自治体は赤字だからといって必要な事業までやめるわけにはいかない。一方、観光事業などで行政が手掛ける必要のないものもある。住民は無関心でも結果責任を負う。本当に必要かどうか、あらかじめ意思表示すべきだ。