職業人としての誇りを大切にできない社会。

公共工事の電子入札導入進む 徳島県も本年度から全工事で 

自治体発注の公共工事の入札を、インターネットを介して実施する電子入札システムの導入が全国的に加速している。徳島県も本年度から、すべての公共工事の入札を電子化。入札事務の効率化と透明化を図るのが目的で、多くの県民が「談合防止につながるのでは」と期待を寄せている。しかし、業者にとってはIT環境の整備が入札参加の最低条件となり、対応に苦労する中小、零細企業は少なくない。

一方、IT環境の整備資金がなかったり、パソコン操作になじめなかったりする事業主からは「入札からの排除につながる」との声も上がっている。

零細建設会社の経営者ら約九千七百人が加盟する全徳島建設労働組合(フレッセ)には不安の声が寄せられている。パソコン講習など対策に取り組んでいるが、新居良雄書記長は「入札の公平性や透明化を高めるのは当然だが、ある程度以上の年代にはITに抵抗があり制度についていけないようだ。公共工事の減少も重なって異口同音に『厳しい』と訴えている」と複雑な思いを口にする。

これは「法令順守しなければつぶれるという危機感が足りなかった」と言っているような大手ゼネコンには、まったく関係のないはなしだろうが、私はこの記事を読んで、結局はこうなってしまうんだよな、と思うと同時に、少しだけ懐かしい気分になってしまった(私が起業した頃のことを思い出していた)――といったら叱られるだろうか。

最後の抵抗か 

「ある程度以上の年代にはITに抵抗があり制度についていけないようだ」という意見の表明は、市場原理化する入札制度への、今最も有効な、(そして最後の)抵抗手段かもしれない。

(本来は、こういう方々が参入できるのが公共事業なのである)。

公共事業の目的の変化

公共事業の2つの目的しかしその抵抗も2年、いや1年はもたないだろう、と思う。なぜなら、今や、地方の公共事業さえ、 「地場経済の活性化と雇用の確保」という目的をもたないからだ。

ただ闇雲に、 「必要なものをより良くより安くより早く公正に」に調達するという目的(これは本当は目標なのだけれどもね)へ収斂していく――その象徴として電子入札はある。

その要因は、「小泉さんのおかげです」(〈開発主義新自由主義〉という二項区分思考――日本的なネオリベの徹底)なのだが、これを止める術を地方自治体は持たない。

職業人として生きてきた誇りを大切にできない社会

そのことで、このままでは、「ある程度以上の年代にはITに抵抗があり制度についていけない」人々は、自らの職業人としての誇りを、たかが電子入札という道具によって、否定されてしまうことになるだろう。

入札も情報収集もインターネットを介して行う電子入札は、業者にとって業務の効率化やコスト削減などのメリットがある。また、入札情報が公開され、透明性が図られるとされている。従来の紙の入札方式では、入札参加希望者は、参加資格の認定を受けたり発注見通し情報を得たりするために、県庁や土木事務所に出向いて情報を入手する必要があった。

そんな人々に対して、これがメリットだという説明は、無意味でしかない。

※そうならないために、私の事業者団体ベースのIT化の取り組みは考えられたものだ。(それも今から6年以上も前に)。