THE pinkhip WORLD    「中小建設業情報化講座」  |戻る 著作権|   

第5回 社内情報化プロジェクトチーム(2) 

あるコンサルタント会社の情報化物語


先日、熊本県の建設コンサルタント会社に勤務されている大村 裕一様より、一通のメールが届きました。この講座をご愛読くださっている読者様なのですが、そのメールに書かれている、ボトムアップからトップダウンへの移行の過程は、中小規模の情報化を実にリアルに表現し示唆に富んだ内容だと感じました。
今回、大村様、また大村様と一緒に情報化へ取り組んでこられた皆様から、メールの転載を快諾していただきましたので、とても参考になる事例として広く皆様へご紹介いたします。
尚、ご要望により会社名は伏せてありますが、その他の情報は実存するものです。

■大村様からのメール
毎週pinkhipのHPが更新されるのを楽しみしております。

現在、当社におきましては70台ほどのPCをwindows95peer to peerで接続しております。
ご指摘のとうり、簡易なLANであるためセキュリティ面での、不都合はありますが、外部接続をやってないことなどを理由に、グレードアップに至っておりません。
しかし、速度、安定性、維持管理、どれをとっても今のところ不満はなく使用しております。(ローコストですみます。)他のネットワークシステムを体験したことがないので、このようなことを恥ずかしげもなくかけるのでしょうね。
桃知さんのGomiねたとして、恥ずかしながら当社の接続をご紹介させていただきます。
当社には7つの部署があり各部約8〜10台のPCとプリンターが配置してあります。
スペック ノートパソコン MMX 150 メモリー64M
プリンターに接続されたPCとしてデスクトップ MMX 200 メモリー64M
各部署(1Fと2F)を10BASE5で繋ぎHUBより先を10BASE-Tを用い端末接続しております。
10BASE5の配線だけは、天井裏の工事になりますので業者さんにお任せして、あとはすべてDIYで、おこないました。
私は、現在熊本にて建設コンサルタントに勤務しております。
県内の建設コンサル業におきましては、桃知さんのおっしゃられている、情報化とは程遠いものだと感じております。
これからも私自身、建設コンサルにおける情報化について深く考えて行きたいとおもいます。

最後にボトムアップについての当社における経緯を書き付けたさせていただきます。

5年ほど前より趣味でPCの活用を模索開始(3人程度)
表計算より始まり、CADなど自費により試験施工。
直属の部長の理解が得られ、業務での使用ご認可されました。
しかし、当時のPC(ノートPC)は高価なものであり、なかなか普及には至りませんでした。
そんな期間が1年くらい続いたでしょうか。
とうとう、当社にも黒船がやってきました。
発注者サイドより、計算書等をFDいただけませんか。との担当者の個人的なお願いでした。
外圧に弱い当社は、すぐさま2台のノートPCを購入し対応しましたが、そこまででした。
外圧により表計算ソフトの使用までは漕ぎ着けたのですがそれまででした。また悲惨なことに、PCによる清書化が始まったのです。
技術者が作成した計算書を女子社員がPCに入力して清書しているでわないですか。
これでは、効率化どころの問題ではありません。

次の段階では、若手社員が徐々にPCを使用するようになりました。(ここまで約2年)
このころには、先んじてPCを業務に取り組む事を当初の目標としていたグループは、部内のLAN接続に一喜一憂していました。
また、CADによる図面作成も軌道に乗り、他の部署の視線を熱く感じることもありました。
このころからでしょう、徐々に経営者サイドに認められてきたのは。
CADによる図面出力という、目にみえる成果(ただ単に図面がきれい)があがった為でしょう。

しかし、当社の業務で一番時間をかけている設計図作成の業務において他の部署では、まったくCADの使用がみられませんでした。

このころの、中堅設計者の心情はこんな所ではなかったのかと予測すれば。
・ 手書きのほうが早い。
・ 俺達の時代には必要ない。
・ 若手に使い方を聞くのは恥ずかしい。
・ 会社の方針で義務ずけされていない。(CAD使用)
などがあると推測されます。
また、他の部署の若手設計者などは、自分の上司がCADを使わないのに、自分たちが使えるはずがないと、漏らしていたこともあります。

このころが、焼き鳥屋会議が最も盛ん時期でした(笑)
・ どうしたら、もっと会社全体でPCの使用が活性化できるのか。
・ PCの使用からPCの活用への意識改革。
・ PCを使った効率化とはどんなものか。
・ 自分が楽ができるにどうしてPCを使わないんだろか。
などなど、会議のねたは尽きることがありませんでした。

3年目あたりからでしょうか、業界等での会議でPCの話題が活発にでるようになったとのことです。
また、経営者の方々もPCに関する情報に目をそむけることができず、取締役会議や部長会議等でも、いちおう(得た情報の発表程度)の意見交換はあったとのことです。

そしていよいよ、建設CALSの登場です。
いままで漠然としていた社内情報化の流れが、一遍しました。
社長自ら、情報収集を行い具体性はないものの、全体会議等で成果品の電子化は避けては通れない道だと説き、CAD等による電子化の奨励を行うていただけるようになりました。
しかし、技術屋というのは頑固なもので、社長の具体性に欠ける呼びかけに応えるものは少なく、現状維持の状態です。

その理由として
・ 具体的電子化移行計画がなかった。
・ 上司の方々の統率力の甘さ
・ 社内PR不足
・ 社員への情報伝達甘さ。

まだまだ、情報化にたいする認識が欠落していたのでしょう。

そのようなことを踏まえて、昨年”PC委員”なるものが誕生しました。
桃知さんの言われるプロジェクトチームのようなものです。
そのメンバーには社長をはじめとし総務部長(大蔵省)また各部代表の課長クラス+若手(興味をもつもの)を代表とし、情報収集や、PCにまつわるさまざまの議題について上下関係を超え、活発な討論が行われるようになりました。
この場で決定したことは、社長命令(トップダウン)で伝達され社内統一事項として、取り扱われます。

もちろんのこと、トップダウン方式による改革には縦割組織の統率が十分である必要があります。

当社の社長は”PCを使えない社員は辞めてもらっても結構です。”
ここまで、公言されるようになりました。

殿様社会の構造は代々DNAのどこかに記憶されているのでしょう。日本における改革には、トップダウンが一番、スピーディーでその、効果は絶大です。

現在、まだPCを使用しているにすぎません。
これかれ先、使用から活用への転換。また、電子化されたデータを共有できる環境の構築に勤めて行きたいとおもいます。

文章を書くことに慣れないもので、誤字脱字や理解しがたい所も多々あったことでしょうが、お許しください。

今週のpinkhipの更新が楽しみです。

***************************************
kumamoto
○○○○○○○コンサルタント
設計第3部 大村 裕一
e-mail yuichi@try-net.or.jp
nifty QWA02537
tel 096-365-6565 fax 096-367-6290
****************************************
以上 転載終わり。

情報化の推進には2つの側面があると考えます。
一つは、パソコンの導入に始まるインフラの整備、ハード的側面。
一つは、組織を構成する人間的側面、リテラシィの向上などのソフト的側面。
この二つの側面をマネジメントすることが、経営者の役割です。
そして、これをサポートする大村様のような情報化キーマンの存在。
そして、私がいう「情報化プロジェクトチーム」のような調整機関の存在。
情報化の実現にはどれも欠かせないものだと考えています。とてもよい事例を公開してくださった大村様に深く感謝申し上げます。

次回は、前回に引き続き「標準」と情報化プロジェクトチーム役割について具体的に考えていきたいと思います。
更新予定は98/06/8です。

Friday, 22-May-98 08:00:23


桃知商店
(c) Copyright TOSIO MOMOTI 1998.All rights reserved

ご意見・ご感想をお持ち申し上げております。
pinkhip@dc4.so-net.ne.jp


戻る 著作権