「ももち どっと こむ」より

還暦祝い!平成30年9月15日(土)桃組「小さな勉強会」と「暑気払い」のご案内。山と山とは出会わぬものだが人と人とは出会うもの(また会う道もある花の山)。

2018年08月01日|イベント



Lesson12 正解の思い込み(4)―「仕事はある」という環境理解の誤り

「仕事はある」という環境理解の誤り

今までの教科書的な情報化は、「仕事はある」という前提をもって行われてきました。それは意識していても、していなくてもです。この「仕事はある」という前提は、今となっては過去の遺物のような右肩上がりの経営環境を前提としているに過ぎません。西部邁は次のようにいっています。

ITという「情報の機械」は未来が「確率計算可能なリスク(危険)」としてとらえられるかぎりで機能するにすぎず、「確率計算不能なクライシス(危機)」としての未来には「人間の組織」によって対応するほかないということである。(Voice2002年3月号,p234)

経営環境が「確率計算可能なリスク(危険)」であった右肩上がりの時代は、仕事はあるものとして計算済みのものですから、情報化はその仕事をいかに効率的に行うかのみに機能すればよかったのです。ですから、中小建設業でも、仕事があるという前提で、情報化は事務処理の延長上で解釈され、過去からの遺物のような「教科書に書かれた事務処理中心の情報化」が正解として大手をふってこられたのです。

例えば工事原価管理システムの導入を考えてみましょう。多くの経営者が考える最初の情報化のひとつがこれです。確かに、受注量・売上高が減少傾向であればあるほど、ひとつひとつの工事の原価管理を徹底し利益確保を確実に行いたいという気持ちはよくわかります。ましてや工事原価管理が現代の中小建設業の経営に必要不可欠なものであることも否定はしません。しかし、これをコンピュータ化することは、原価管理を行う「仕事がある」という前提に立っていなくてはできることではありません。ここでは、その導入前提条件「仕事はある」を「仕事はない」と入れ替えてみればよいのです。前提条件を入れ替えるだけで、このような情報化への期待は、もろくも壊れてしまうはずです。

つまり、原価管理システムを動かそうにも、その対象となる「現場」がないことには、このコンピュータシステムは必要がありません。そして逆説的には、原価管理をいくら一生懸命やっても仕事はとれないという、「情報化投資のパラドックス」が存在してしまうだけです。前提条件を入れ替えるだけで、情報化への期待は、いとも簡単に根底から崩れてしまいます。

前提条件とは、制度・慣行の変数としての環境と原理なのですが、今、多くの中小建設業が直面している環境とは、「仕事がない」もしくは「減ってきている」という現実です。これは否定しようもありません。けれども、多くの中小建設業は、長い間この事実を直視しようとはしていませんでした。それは、今までの「ヒエラルキー・ソリューション」の復活を期待しているようにしか私には思えないのですが、今やそれはありえない願望でしかないことを理解すべきでしょう。

「建設業は現場が稼ぐから建設業」なのであり、今や「仕事はない」という環境は承知のはずです。しかし、この中小建設業の環境と原理とは裏腹の、過去からの遺物のような情報化(ベスト・ソリューション)を盲目的に導入し続けていたのですから、その結果、いくらコンピュータに投資をしても、それが受注につながらないことは当たり前としかいいようがないのです。変化する環境と中小建設業の基本原理を無視して行われてきた制度・慣行(情報化)が、どこかで機能しなくなるのは当然のことでしかありません。

Written by 桃知利男のプロフィール : 2007年11月20日 08:59: Newer : Older


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