「ももち どっと こむ」より

還暦祝い!平成30年9月15日(土)桃組「小さな勉強会」と「暑気払い」のご案内。山と山とは出会わぬものだが人と人とは出会うもの(また会う道もある花の山)。

2018年08月01日|イベント



Lesson14 信頼ってなに?(1)―ふたつの相互作用と情報の二分類

ふたつの相互作用

さて、ここからは、市場を形成する情報とはなんだろうか、という考察を始めます。それは、市場に流れる情報としての「信頼」とはなんだろうか、を考えることを意味していますが、ここではまず、自分自身、つまり「自己」という存在を考えてみましょう。

私たちは相互作用(ネットワーク)の中で生きるミーム・ヴィークルではありますが、それでは、「私」(あなた自身)はいったいなにと相互作用をしているのだとうか、と考えるのです。答えは、私は「自己」「自然」「他人」の三者と相互に作用しあう存在だということが、理論的、経験的にもわかるかと思います。

この三者との相互作用を考えてみれば、私たちが考察の対象としている市場での相互作用、つまり経済的交換における相互作用というのは、当然に他人との間、つまり人と人との相互作用の関係で形成されていることがわかるはずです。

例えば、牛舎の建築を依頼された場合、建築の依頼主は牛ではありませんし、魚道を作る仕事は魚が発注したものではありません。車が持っている「偉そうに見える」ミームを買うという場合でも、代金は車に支払っているわけではありません。このように、市場は、人と人との間でおこなわれる売買という相互作用の場だ、といえるものなのです。この意味で、市場に流れる情報とは人と人との相互作用の中に流れるミームだ、ということもできます。

村上泰亮は、この相互作用を次のふたつに大別しています。

  • 物的な相互作用
    身体的直接の干渉(性行為をしたり哺育したり手を貸したり殴ったりあるいは殺したり)、事物のやりとり(交換の主要要素)などを含む。
  • 情報的な相互作用
    言語のやりとりはもちろんのこと、それに準じる表情・身ぶりなどのやりとりも含む。画像や音楽のようなやりとりも含む。
    村上,1994,p130)

「物的な相互作用」を経済的交換からみると、それは商品と対価の受け渡しという行為を意味しています。売買の成立、若しくは成立させようとしておこなわれる行為にともなう、商品の移動や貨幣の受け渡しがそれです。つまり、モノやサービスを購入したらちゃんと代金を支払わなくてはならない、でなければ経済的交換は成立しないということです。

一方、「情報的な相互作用」を経済的交換の範疇からみると、交換を成立しようとして(でも必ず成立するとは限りません)やりとりされる「情報の交換」のことです。この分類では「情報」という言葉がかなり広い意味で使われていることに注意する必要があります

私たちはここでいう「情報」の正体がミームであることをすでに知っているはずですが、このことは、ミームの持ついささか広い意味での情報、たとえば、価格や量ばかりではなく、先の「信頼」や「偉そうに見える」ミームというようなものも「情報的な相互作用」の「情報」の中には含まれるということを意味しています。


情報の二分類

さて、このように情報を広義の意味で扱うことができれば、情報は次の二種類に分類することができます。

  • 「第一種の情報」→超越論的な枝の情報→手段的な情報
  • 「第二種の情報」→解釈学的な蔓の情報→本質的な情報
    村上,1994,p132)

まず、手段的と本質的との違いから始めると、手段的な情報とは、何か他の目的のために役立つ情報を、本質的な情報とは、それを持つこと自身が値打ちをもつ情報を指します。

たとえば手段的な情報とは、商品の規格化と定量化の枠組みによって表現された情報、つまり商品の枠組みを知る手段的な情報です。自動車の例でいえば、エンジンの排気量(4000cc)や馬力(280h.p)最高速度(180Km/h)価格(600万円)といったもので形成されているものが手段的な第一種の情報です。雑誌やCMやパンフレットで知ることができる基本的な性能、エンジン性能や走行性などもこれに含めることができるでしょう。

一方、排気量、馬力、最高速度、価格を表す「cc」「h.p」「Km/h」「円」という商品の規格化と定量化の枠組み合意のようなもの、つまり、世間で認知されている「単位」とか「取引方法」などは、人々の間で交わされてきた経験と解釈と信頼の蓄積を反映して構築されてきたものであり、これは本質的な情報としての第二種情報です。従来の経済的交換といった時には、情報の二分類はこれでおしまいです。

しかし私たちは、経済的交換においても、もっと他の情報がやり取りされていることをすでにみてきました。それは、車を所有することで得られる満足感のようなもののことですが、ひとことでいってしまえば、いいクルマなのかどうかというような判断をするための定量化や文書化できないような情報=「評判」というような情報が動いているということです。

たとえばそれは、コマーシャルや口コミなどで形成されてきたブランド・イメージや評判のようなものまでを含みます。さらには、信頼感、ステータス性、乗り心地、物語性、その他にもメーカーや販売店やセールスマンに対する信頼感のような、「なんだかよくわからないけれども人を束ねる力を持った情報」も経済的な取引でやり取りされている情報なのです。ここでは、このようなどちらかといえば「社会的交換」の色彩の強い情報も第二種の情報に含ませておくことにしましょう。

Written by 桃知利男のプロフィール : 2007年12月23日 09:23: Newer : Older


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