「ももち どっと こむ」より

還暦祝い!平成30年9月15日(土)桃組「小さな勉強会」と「暑気払い」のご案内。山と山とは出会わぬものだが人と人とは出会うもの(また会う道もある花の山)。

2018年08月01日|イベント



Lesson16 中小建設業の技術のミーム(5)―意図に対する信頼を失った市場はやがて市場そのものが崩壊する

中小建設業のコア・コンピタンス

さて、中小建設業の「狭義の技術のミーム」として指摘した建設業許可や技術職員の数や経審の点数や営業年数やISOなどは、ふぐ屋の調理免許のようなものであり、市場参入要件にしか過ぎません。しかし、それはそれで公共建設市場における能力の信頼を裏付けるメタ情報であり、決して軽視しできないものであることも確かです。しかし、これだけではビジネスにならないのは、ふぐ屋も中小建設業も本来同じはずです。なによりも「おいしい」というような「広義の技術ミームコア・コンピタンス)」と、それを支えるもうひとつのメタ情報である「意図に対する信頼」が必要なのが本来の市場のはずなのです。

ここで、この「広義の技術ミーム」が中小建設業では何にあたるのだろうか、と考えると、そもそも中小建設業にコア・コンピタンスとしての「広義の技術ミーム」はあるのだろうか、そしてそれを支える「意図に対する信頼」というものは形成されているのだろうか、という疑問が湧いてくるはずです。

結論からいってしまえば、中小建設業には「コア・コンピタンス」も「意図に対する信頼」も存在していないのです。中小建設業、特に配分のルールが主流な公共建設市場という市場は、そもそもコア・コンピタンスを要求してはいないのです。

特にバブル経済崩壊後の、景気対策を大前提とした公共工事にはその傾向が強いといえます。そしてそれにかかわる既得権益の出現と社会問題化は、意図に対する信頼も同時進行的に崩壊させている、としかいいようがないのです。つまり、「公共工事という産業」が依存してきた「ヒエラルキー・ソリューション」が今という時代、つまり、インターネット社会に機能できなくなる大きな理由は、この「意図に対する信頼」の崩壊の文脈で考えることができるでしょう。それは「安心のシステム」として金魚蜂の崩壊も意味します。そして、私たちはこういうこともできるはずです。

意図に対する信頼を失った市場はやがて市場そのものが崩壊する

これに対して、中小建設業にもコア・コンピタンスはある、という反論も十分に予想できます。しかし、その反論が提示できる「広義の技術のミーム」といえば、業界的には「営業力」とか呼ばれているものに過ぎません。この営業力は、確かに業界内では他社との差別化の要因として機能してきたもので、たとえば、それはこんなものを例として挙げることができるでしょう。

  • 所属団体
  • OBさんの有無(数)
  • 政治的な活動

とか、まあ、そのようなもの……。

配分のルールが機能する、という条件付きでなら、公共建設市場では、これらはあたかもコア・コンピタンスとしての「広義の技術のミーム」のように、若しくは「意図に対する信頼」を提供する情報のように、それこそメタ情報として機能することは確かです。では、これらが意図に対する信頼の情報を提供するものとして、その情報の提供先がどこなのかを考えてみましょう。

すると、この視線の先には「仲間」しか存在していないことが理解できるはずです。業界外に存在しながら公共工事のステークホルダー(stakeholder:企業に対して利害関係を持つ人。社員や消費者や株主だけでなく、市民社会までをも含めていう場合が多い)である、納税者や有権者などという市民社会への視点などどこにも存在してはいないのです。

市民社会は、今や最大の公共工事に対する「消費のミーム」の持ち主です。つまり、これら、所属団体や、OBさんの有無や、政治的な活動などは、市民社会という「消費のミーム」を無視することで機能するだけであり、決して「広義の技術のミーム」などと呼べるものではありませんし、コア・コンピタンスでもありません。ましてや建設業界の意図に対する信頼を提供する情報だどであるはずもありません。むしろ市民社会に対しては逆の効果(不信)しか提供できないものなのです。それでは、これらはいったいなにものなのかといえば、これらは仲間内でしか通用しない、
 
安心の担保

でしかないということです。

Written by 桃知利男のプロフィール : 2008年04月02日 21:38: Newer : Older


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