「中小建設業情報化の為の5つのポイント」 序説   

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序説 「創造的情報化の為の自社の理解」



本講座は「中小建設業情報化の為の5つのポイント」の理解のための集中講座です。
中小建設企業が情報化に取り組む際に必要な視点を以下の5つにポイントとしてまとめ各々について解説をしていきます。

 1・経営トップのリーダーシップ
 2・組織的な取組みと情報化キーマン
 3・徹底した業務の電子化
 4・コミュニケーション&コラボレーション
 5・建設業の情報化=現場の情報化

本序説においては、これらを理解し実践しようとする前段として、最も重要な視点である、自社の企業文化の自らの理解について述べることとします。

■企業文化(社風)

御社では、社員が自由に自分の意見を「表現できる」企業文化(社風)をお持ちでしょうか。
この問いへの答えは、御社が情報化を推進しようとする場合の『困難の大きさ』への人間的な側面からの回答となります。

「何を言っても無駄だから何も提案しないほうが良い」
「社長の言うことにはハイと答えておけばいい」
「提案や改革案を出しても、課長や部長のところで握りつぶされてしまう」等々。

こんな意識が組織内に蔓延していませんでしょうか。
このような意識が社内で強ければ強いほど、御社の情報化への取組みは困難の度合いを大きくすることとなります。

一人一台のコンピューターを導入し、最新のアプリケーションを揃え、情報技術(IT)をフル活用したところで、そこで交換される情報が、上司や社長のご機嫌伺に終始していたり、自己保身意識が強く作用しているようでは、本当に必要な情報が実はどこにも無いという情報化になりかねませんし、むしろ情報化はしないほうが良い結果となりかねません。

■本当に情報が必要なところとは

御社において第一義的に情報が集中すべきところとはどこでしょうか。
それは、「意思決定を司る機関」としての管理層、経営層に外なりません。
端的に言えば、組織がきちんと機能している限りにおいて経営トップにこそ情報は集中しなくてはなりません。

経営トップは、自ら進んで情報を集め、解析し、理解し、統合し、意思決定を行い、自ら情報を社内にかぎらず社外へも「表現」する必要があります。
それはマネジメントの最高責任者としての経営トップ当然の機能です。

問題はその経営トップに対して、はたして真実の情報は流れているのかということであり、逆説的には、経営トップは真実の情報を発信しているのかという問題です。

この命題はアナログであろうとデジタルであろうと同じ文脈で語られるものです。
つまり、情報化に取り組もうとしている貴方の会社は今現在どうなのかという問題です。

情報技術は、本来、デジタル化されたデータの流通速度を速めるに道具過ぎません。
偽りのデータが情報技術によって加速度をつけて流れる情報化を想像してみてください。
それは、御社の繁栄ではなく終焉を加速度をつけて実現しよとするものであるといえるでしょう。

ですから、問題は情報技術ではないのです。
情報化の障害とは、常に組織と業務上の問題として存在し続けます。
それ即ち人間の問題なのです。

逆説的には、経営トップに必要とされる能力の1つは「情報の信憑性を見極める目」ということもいえますが、こと自分の会社の中で、そのような能力をフル回転させなくてはならないこと自体、経営の効率化を阻害している要因が社内に存在している証でしかありません。

■管理志向の情報化

自社の情報化の取組み姿勢を翻って見てみましょう。
それは御社の情報化の志向はどこを向いていますかという問いです。

多くの建設企業では、情報化のベクトルは極めて内向的です。
即ち、情報化の指向は、勘定系(基幹系)のシステム構築をベースとした、所謂管理を主目的とした傾向を持つ傾向が強いといえちます。そして、この志向が強い情報化では、業務にシステムを合わせるという考え方が支配的であるのが特徴です。

しかし、こと建設業の場合、管理を主目的とした情報化からコア・コンピタンスを得ようとすることは容易ではありません。
それは、管理を志向する情報化が差別化経営の根源となることはまずないということです。

  ◆建設業の原価管理がどれだけの精度を持ち得るか考えたことがありますか。
  ◆月次決算の数値から、潜在顧客の規模を予想し得ますか。
  ◆ところで貴殿は管理数値をちゃんとお読みでしょうか。

コア・コンピタンスと差別化の経営を意識した情報化は例外なく顧客を志向しなくてはなりません。
なぜならコア・コンピタンスは「市場の要求」の中にしか存在し得ないからです。

けだし、情報化すべきは、御社のフロントライン(最前線)の部分に他ならないということです。
建設業におけるフロントラインとは、現場(営業も含む)にほかなりません。

■情報化への障害

自社の情報化への障害は技術的なものではなく、自社の組織と業務上に存在するとの認識が大切です。
情報化失敗の要因は技術的なものでることはあまりありません。
要因の多くは御社の組織と業務に関するところに存在しています。

情報化により業務の効率化が可能となることとは、情報化の持つ合理性が炙り出す組織と業務上の不合理性の駆逐故なのです。ですから、情報化に失敗したくないのでしたら、まず自社の企業文化(社風)を良く理解し、己の欠点を理解した上で取りくむ必要があるのです。

98/12/16
00/07/04 一部改訂

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