「建設業情報化の為の5つのポイント」 その4
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■コミュニケーション&コラボレーション
情報化が当初の目標通りに進展しないとか失敗したといった場合、その問題の多くは情報化のベクトルと御社の社風に見つけ出すことができます。
◇まず最初に考えなくてはいけないことは自社の情報化のベクトルは何処を向いているのだろうかということです。
例えば建設CALS/EC対応というアプリケーションが多く発売されています。これらは、確かに何がしかの業務の効率化を御社にもたらすことにはなるでしょうが、経営者はそこから得られるものがいったい何なのかを考えてみる必要があります。
つまり、このアプリケーションを導入することで(建設CALS/ECに対応した)情報化ははたして完結するのだろうかと考える必要があるということです。
私は業務効率の向上レベルでは積極的な市販アプリケーション(パッケージ)の導入を推奨していますが、それは極めて局地的なOA化レベル域、若しくは情報化全体の中でのモジュール的な発想としてです。
業務用パッケージアプリケーションの導入にはある前提があります。
それは全社的に高い情報リテラシーが取得されていることと、コミュニケーションとコラボレーションが機能する情報システムが既に構築されていることです。
(建設CALS/ECに対応した)情報化とは、それらの(建設CALS/EC対応という)アプリケーションを導入することで完結することではなく、まず第一義的に高いレベルで(即ち全社員レベルで)のコミュニケーションとコラボレーションを可能としようとするものなのです。
つまり、今という時代(IT革命の時代)がまず要求している情報化とは、コミュニケーションとコラボレーションを第一義的に志向するベクトルを持ったものではなくてはなりません。
故に情報化の目的の一つはコミュニケーションとコラボレーションの実現である必要があります。
◇情報は常に真実である必要があります。
これを可能とするものが、ハードとしての情報システムというよりも、極めて人間的なメンタルな部分に存在することで情報化は経営の問題として存在し情報化の最大の障害は組織と業務上に存在することになります。
真実の情報が流れにくい社風というのを良く見かけます。つまりモラルハザードやセクショナリズムや自己保身やそういうものによって情報が湾曲されるような社風です。
こういう社風の会社組織で情報化を行ったところで、経営者は常に嘘の情報を基に経営判断を行わなければならない結果となり、情報化は嘘の情報が加速度をつけて流通するだけの結果になりかねません。
この場合、情報化の問題はハードとしての情報システムにあるのではなく、ソフトとしての社風や組織文化に存在します。上記の例は極端な話ではありますが、多かれ少なかれどこでも見受けられるものなのです。
情報化の主眼をまずコミュニケーションとコラボレーションの達成に置くのはそのためなのであり、御社のコミュニケーションとコラボレーション手段こそが御社の社風であり組織文化であるといえるでしょう。
コミュニケーションとコラボレーション、この言葉の根底に流れる理念は、自らが「情報」を発信する、自らが「情報」を取得して内面化する、自らが内面化し熟成した「情報」を形式化(デジタル化)して発信するという、自らが自らの仕事を通じて自己実現を図ろうとする人間としての基本欲求です。
情報システムの目指す処とは、情報のデジタル化による「知識」の共有と、その共有をより高いレベルで可能としようとする(人間として)当然の欲求を可能とするためのシステムだといえます。そしてそれは何時の時代にも経営における最も重要な視点でもあります。
この人間のとしての欲求に反した情報化(それを私は「管理主眼の情報化」とよんでいますが)は決して社員に対してモチベーションやインセンティブを提示できるものではないでしょう。
逆説的にいえば、イントラネットなどで殆ど発言されることのない掲示板や電子会議室をみることがありますが、つまりそれは人間の基本欲求としてのコミュニケーションとコラボレーションが達成できないような環境に問題があると考えたほうがよい場合が多いのです。そしてその原因は何処にあるのかを真剣に考えてみることも情報化の取組みに他なりません。
情報化のリーダーシップを取る方々は、情報化が目指す方向としてこの視点を常に忘れないことです。
■ノウハウ・アイディア=会社資産としての認識
情報化の目的の1つは、企業が紙の上に文書化してきたデータと社員の頭の中にあるデータを共有可能な知的財産とすることです。
デジタル化されていないデータを可能な限りデジタル化し、統合化し、組織の共有財産とし、効率的に運用できる組織、システム、風土を作り上げることです。
個々人に帰属しているアイディアやノウハウ(つまり「知識」)は、デジタル化され形式的に共有されることによって、それがまた個々人によって内面化され熟成され、デジタル化され表面化し共有されるという知のスパイラルが機能可能な情報システムを目指しましょうということです。
企業のコア・コンピタンスは、一つの技術やアイディアやノウハウでは無く、むしろそれらを生み出す知のスパイラルを機能することが可能な企業文化や風土つまり社風ということができます。
つまり、ここで勘違いしてはならないのは、会社の資産としての知識とはデジタル化され形式化された知識データそのものばかりではなく、(むしろ)それを共有し活用し新たな知識を生み出そうとする「意識」とその意識を個々人に与えつづける社風であり経営者の経営理念そのものであるということです。
1998/12/19
2000/07/23 一部改訂
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