「ももち どっと こむ」より

還暦祝い!平成30年9月15日(土)桃組「小さな勉強会」と「暑気払い」のご案内。山と山とは出会わぬものだが人と人とは出会うもの(また会う道もある花の山)。

2018年08月01日|イベント



Lesson15 コア・コンピタンスとしての技術のミーム

技術のミーム

さて、私たちはここで、市場を形成する「技術のミーム」と「消費のミーム」というふたつのミーム分類に立ち返ることで、ある産業の持つ「技術のミーム」が「第一種の情報」と「第二種の情報」との束であることが理解できるはずです。

たとえば現代の自動車産業の場合、「技術のミーム」における「第一種の情報」とは、いってみれば自動車の機能や性能や価格を表す「値」としての情報です。そして、そのような「第一種の情報」の値として表出させている商品の規格化と定量化の枠組み合意のようなもの、つまり、世間で認知されている「単位」とか「取引方法」などの、「人々の間で交わされてきた経験と解釈と信頼の蓄積を反映している「第二種情報」がその背景に存在しているということです。

 しかし、すでに明らかなように、このような要因だけを自動車という商品の競争力とすることは難しいことです。これは自動車産業とはある意味模倣が容易な技術を基にした産業だ、ということなのですが、このような模倣が容易な技術を基盤にした産業で、競争力の根源(コア・コンピタンス:ここでは自社の商品を消費者に選んでもらえる強力な理由)は何なのだろうか、と考えてみればよいのです。答えは、このような技術模倣が容易な産業での競争力の根源は、

〈企業間にあるわずかなミーム(文化子)の相違〉

でしかないということです。(村上泰亮,1994,p152)

この企業間にあるわずかな「技術のミーム」の相違が、企業と不特定多数の「買い手」の間に構築される組織(広い意味でのコミュニティ)に流れる「ソーシャル・キャピタル」の差、若しくは「消費のミーム」の差を形成しています。この自動車産業に見られるような傾向は、模倣が容易な技術を基盤にする産業ではどこにでもみることができます。一例を挙げれば、複写機業界というのは模倣が容易な技術を基盤にした産業の典型例として考えられます。

たとえばこの業界を代表するX社とR社の製品を比べた場合、その製造者のロゴマークを製品から取り去ってしまえば、どちらがX社製かR社製かを区別することは複写機業界以外の方々には不可能でしょう。

しかし、それでも消費者は製品を選別して購入しているはずです。消費者は「なんでもいいや」とは思ってはいません。ここでの私たちの関心は、その時々に、人々の選好基準をきめているいるのはいったい何なのだろう、ということです。そこには、価格や狭義な技術以外にも、「なんだかよくわからないけれども人を束ねる力を持った情報」が大きなウェートを占めているのではないだろうか、と考えることができるはずです。

これをミームから見れば、経済的交換(市場)では、自社の「技術のミーム」のシェア極大化(マーケット・シェア極大)というのは自然な姿でしかない、ということができます。そして私が「模倣が容易な技術を基にした産業」という部分に「こだわって」例を挙げているのには、もちろん理由があります。それは、

〈中小建設業は模倣が容易な技術を基盤とする産業である〉

ということです。中小建設業の技術模倣が容易でなければ57万社の許可業者が存在し 600万人を超える雇用を抱える産業が存在することなど、説明のしようがありません。

Written by 桃知利男のプロフィール : 2008年01月18日 21:43: Newer : Older


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