「ももち どっと こむ」より

還暦祝い!平成30年9月15日(土)桃組「小さな勉強会」と「暑気払い」のご案内。山と山とは出会わぬものだが人と人とは出会うもの(また会う道もある花の山)。

2018年08月01日|イベント



Lesson10 IT化はなぜ遅れたのか(2)―経営戦略の無い産業

なぜIT化は遅れたのか

それでは、なぜ「中小建設業のIT化」は遅れてしまっているのでしょうか。いろいろある意見の中で、核心を突く答えをひとつピックアップするとなればこれでしょう。

「いくらコンピュータに投資をしても仕事はとれない」

ミもフタもない意見のようですが、これは間違いではありません。多くの中小建設業の経営者(以下、「経営者」と呼びます)は、なんだかよくわからないけれど、これから「キャルス」とかががやってきて、電子入札だとか電子納品だとかで「コンピュータ」を使わなければならないらしい、ということは頭の片隅にはあるものです。

しかし、コンピュータという子供のオモチャのようなものが、仕事に役立つという巷に溢れる噂に対しては、かなり疑い深いはずです。なぜなら、コンピュータへの投資が今までの経験から、直接的に業績向上に結びつかないものであることを知っているからです。

ここで通常のIT化本であれば、こう結論してしまうことでしょう。

「中小建設業でIT化が遅れているのは、それはコンピュータで仕事はとれないからです。でも私の進めるベスト・ソリューションは、そんな経営者のお悩みを解決いたします。○○は貴社の利益向上に寄与します。めでたしめでたし」。

でも、本書はそんな「めでたい」は本ではありません。私は「答えのない」コンサルタントですから、間違っても「ベスト・ソリューション」などという答えがびっくり箱のようにでてくることはないのです。それでは「なぜそうなのか」を、つまり「なぜコンピュータに投資しても仕事はとれないのか」を、例によって「わからない」という方法で地を這うように考えるだけなのです。

経営戦略の無い産業

たとえば、多くの経営者は、国や自治体の公共工事投資額と自社の売上高がシンクロしながら減り続けることに何の打つ手もないかのようです。面倒な言葉使いをすれば、経営戦略の転換も果たせないまま身動きもできず袋小路で喘いでいる、とでも表現できるのでしょうが、では、なぜ身動きがとれないのでしょうか。

この問いに対する答えは意外に簡単で、

〈経営戦略なんて最初からないから〉

というものです。しかし、この答えはトートロジーですし、「わからない」という方法では最低の答えでしかありません。たとえば「なぜあなたは朝寝坊をするのか」という問いに対して「早起きが苦手だから」と答えているようなものです。これのどこがまずいのかといえば、「早起きが苦手だから」という答えは、そもそも問いの朝寝坊と同じことであって、つまり、答えが問いを返しているだけです。このような同意反復を「トートロジー」といいますが、これはなんの答えにもなっていないのです。

思考をトートロジーから脱却させるには、問題になっている事項を徹底して理解するしかありません。「わからない」という方法は、「わからない」から考える、ということなのですが、それはトートロジーに陥ることを防ぐ方法でもあるわけです。ここでの疑問は「なぜ中小建設業には戦略がないのか」です。それではこの問題を、まずは公共建設市場の構造からみていくことにしましょう。

Written by 桃知利男のプロフィール : 2007年10月21日 12:10: Newer : Older


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