ミュータント花子

ミュータント花子(復刻版)

会田誠(箸)

2012年12月
ミヅマアートギャラリー

1050円 (会田誠展「天才でごめんなさい」会場にて)


ミュータント花子

午前7時起床。浅草は晴れ。昨日は、会田誠展「天才でごめんなさい」に出掛けたことは書いたが、会場出口の売店で、本を2冊買って来たのだ。そのうちの1冊が、この「ミュータント花子」(復刻版)である。

復刻版と云うからには、当然元はあるわけで、この復刻版には「この本は、一九九七年に発行された私家版【ミュータント花子】の復刻版です。」との但し書きがある。1997年といえば16年前だ。あたしはまだ元の職業に就いていたころで、39歳のバリバリだし、会田誠は32歳の若さである(たぶん)。

「ミュータント花子」よりそんな若い会田が書いたこの本は、ズバリ面白い、と書いてもよいのだろう(か)。本作は、太平洋戦争末期の、日本人の〈欲望〉を表しているように見える。アメリカ兵に凌辱された花子は、原爆で命を失ったかに見えたのだが、「ミュータント花子」として甦り、アメリカ相手に壮絶な戦いを繰り広げる、という内様なのだ。

もともとは「戦争画RETURNS」という連作のひとつとして制作されたマンがであるが(会場にはこれに着色したものが飾られていた)、太平洋戦争のことをあれこれ考えていたために、副産物のように生まれたこれは、シリアスさの破片もなく、けれど、あまりの過激さに見事に暴走しているのだ。

SF+戦争+エロ+アクション+純愛+グロ+ファンタジー+ユーモア、その他盛りだくさんのマンガ、と云えないことはなののだが、はっきり云って「エロマンガ」であるこれを、いろいろと考えて読むのは馬鹿らしい。

しかしこれを書きたかった(のだろう)会田誠という人の、そして読んで喜んでいるあたしにとって、太平洋戦争とは、ノスタルジー以外の、そして想像のモノ以外の、何物でもないことを本作は教えてくれているのだ(と思うのだ)。