談志 (挨拶もそこそに、座るなり)俺、今ネ、日本に関しちゃ腹がたつことが山のようにあるのよ。甘ったれすぎてるよ。だからミサイルの三十発も北朝鮮から飛んでくりゃ、いくらか日本人も目が覚めるだろうなと。そンとき、池袋なんかぶっ飛んでしまってもいいっつってるんだ(笑)。ただ北千住はかわいそうだから取っといてもいい(笑)。
高田 座るか座らないかでいきなりズドーンと来ましたねえ(笑)
談志 うん。北千住はなんかかわいそうだよ(笑)。銀座もなくなったらヤだな。でも渋谷はいらねえ。あんな若者ばかりいるところはいらない。嫌。
(中略)
談志 昔は「飢え」とか「戦争」があったから、どこかで協力しないともたない部分があった。二人で戦って一人やられりゃ、自分一人で戦わなきゃならないんだから、「しっかりせよ、と抱き起こし」もすれば、「友を背にして、道なき道を」にもなるけれど。今、そういうことがないから協力する必要がないんですな。
だけど、どこかで協力しないと人間ってもたないし、他がいないと自がないんだからね。それが、飢えがなくなり戦争がなくなりで、協力もしなくなった代わりに、オノレまであやふやになってきちゃった。
だから、ミサイルの三十発も飛んできたらいいっていう話になるんですよ(笑)。飛んでくりゃ、いくらか日本人も協力しあうようになるんじゃないか。
高田 町内会もしっかりする。
談志 町内会もしっかりする。(笑)
(from 『笑うふたり』:p254-256)
笑うふたり―語る名人、聞く達人 高田文夫対談集 (中公文庫) 高田文夫(著) |