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2019年03月03日|お知らせ



岩手県、公共事業前倒しへ 雇用対策で30億円超。

岩手県、公共事業前倒しへ 雇用対策で30億円超

達増拓也岩手県は15日、景気悪化に対する雇用対策として、新年度に予定されている道路関係工事などを年度内に発注する公共事業の前倒しを行うことを決めた。事業費は30億―40億円規模になる見通しで、23日に県議会臨時会を招集し、関連の補正予算案を提出する。(中略)

県は議会の議決が得られ次第、設計や入札を実施する方針。3月中の事業着手を目指しており、雇い止めに遭った非正規労働者の雇用確保につなげる。

通常通りに新年度当初予算で実施する場合、工事着手は5月末以降になり、債務負担行為を2月補正で決めるケースでも着手は4月にずれ込む。雇用状況は急速に悪化していることから、できるだけ早い前倒しが必要と判断した。

併せて中小企業に対する経営安定資金の融資枠を拡大する補正予算案も臨時会に提出する。融資枠は昨年12月末に180億円から236億円にしたが、今回はさらに約160億円増額し、400億円近くにする方向で検討している。増額分のうち県が金融機関に預託する分は40億円程度になる見通し。from 河北新報 2009年01月16日

午前7時40分起床。浅草は晴れ。あたしは嘗て、岩手県の「建設業いきいきステップアップ委員会」の委員を務めていたことがあった。それは工事が減っていく中、岩手県の公共建設行政はどうしましょう、と話し合う委員会だ。

もちろんシナリオはできあがっていた。それは、これから岩手県は、規制緩和ならぬ規制強化へ向かいますよ、であり、市場原理(一般競争入札)を導入しますよ、であり、建設業の皆さんは新分野へ進出しましょう(農業なんかいいよ)なのである。

当時は小泉政権下であり、規制緩和と市場原理の大合唱。三位一体の改革などという「三位一体」の誤った使われ方がいわれ、岩手県の財源も減少し、当然、岩手県の公共事業費も減り続けていたのである。

そこには、地場の建設業が「地場経済の活性化と雇用の確保」という機能を担っているということが(わかってはいるけれど)蔑ろにされた議論があった。もちろんあたしは、構造改革的政策には反対する側の人間として呼ばれていたのだが、こういう委員会に反対派を入れるのは大事な儀式である(たぶん)。

なので岩手県の公共事業は、全国一のレベルで減り続けることになり、「負の資産」が積み重なることになる。その辺りのことは以前にも書いている。例えばこれ(当時の岩手県知事は、安倍改造内閣ー福田内閣の総務相となった増田さんだった)。

増田さんは、前の岩手県知事であり、私は、彼が知事の時代に、岩手県の建設産業再生プランの委員をしていたことがある。なので彼の政治姿勢は、肌で感じてきたつもりだ。

私の知る限り、県知事時代の増田さんの問題解決方法は、似非マーケット・ソリューションに過ぎなかった――マニフェストによる公共事業費の削減確約、一般競争の導入。雇用の問題はお決まりの農業への移行政策――のだが、それは大きな負の遺産を岩手県に残した(つまり失敗している)、といっていいだろう。

しかし増田さんは、知事就任当初は、公共工事の問題を 「地方財政の体力的な限界と、雇用対策の必要性とのトレード・オフの関係」と認識できていた方だ。つまり、何故、地方自治体は、似非マーケット・ソリューションしかとりえないのかを知っておられると思う。from 『安倍改造内閣の変わらなかったネオリベ。

当時のことでよく覚えているのは、盛岡近隣の町長さん(もしかしたら村長さんかな)が、「我が町(村)の農家の皆さんを、農業が暇な冬期間、是非、皆さんの会社(建設業)で働かせてください」といっていた新聞記事だった。それは大幅に公共事業が減っているにもかかわらずにである。

地方の構造というのは、公共工事量が減れば、農家の収入も減るのである。なぜ農家の方々が建設業で働かなくてはならなかったのかといえば、農業だけでは食べていけない現実があるからだ。それは開発主義のスキームで生きる地方の当然の姿でしかない。その仕組みを「構造」と称して批判し改革しようとするなら(それ自体は悪いことではないとしても)途方もない時間がかかる(というか慎重に行われなければならない)※1 というのがあたしの意見であった。

開発主義の幕引きは、それが成功してきたと同じぐらいに長い時間をかけて慎重に行われなくてはならない。なぜなら、開発主義は、地方が生きてきたレジームに他ならず基体なのである。であればそれは単に「公共事業に頼る地方」という問題ではないはずであって、日本の将来ビジョンをしっかり示して行われるべきものである。しかし現実は急激に公共事業費を減らしたに過ぎない(小泉さんには思いつきはあったけれど将来ビジョンは皆無であった。いってみれば刹那主義的な政策だった)。

そしてそれは新自由主義の饗宴の終わりとともに「負の資産」となって表出していまっている。状況は小泉さん以前よりも悪化している。だから「公共事業前倒しへ、雇用対策で30億円超」なのである。それは少しは効果はあるだろけれど、焼け石に水かもしれない(それぐらに「負の資産」は大きい)。ただ「雇用のための公共事業」という死語は確実に復活する。 

※注記

  1. 政治―政治学から「政治界」の科学へ (Bourdieu library) (単行本) 公共のサービス、公共の交通、公共の病院、公共の学校、それらと一体となって構築されてきた地域社会、そしてそれに裏付けされるように繁栄する大都市、こうしたことはすべて、構築するのに大変な努力が要ったまったく途方もないものなのに、それらが当然にあるものとして感じられるとき、それが構築された意味を、それが「非常な努力と細心の注意をもってして初めて維持しうる発明と構築」であることを忘れてしまっているのだ。(ピエール・ブルデュー:『政治―政治学から「政治界」の科学へ (Bourdieu library) 』)

Written by 桃知利男のプロフィール : 2009年01月17日 09:54: Newer : Older

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