111006[5日 ロイター] 米アップル(AAPL.O: 株価, 企業情報, レポート)は5日、スティーブ・ジョブズ取締役会会長がこの日死去したと発表した。56歳だった。 病気療養中だったジョブズ氏は今年8月に、最高経営責任者(CEO)の職をティム・クック氏に委譲していた。

多くのアナリストは、アップルの将来は安定していると予想しているが、同社の今後を左右するいくつかの点をQ&A形式でまとめた。


<ジョブズ氏不在のアップルは今後も成功するか>

ジョブズ氏は、製品開発においてコンセプトやデザイン、実質的な開発業務まですべてに口を出すことで知られていた。ジョブズ氏の創造力は「Macintosh(マッキントッシュ)」、「iPod(アイポッド)」、「iPhone(アイフォーン)」、「iPad(アイパッド)」などの製品デザインに表れている。

一方、アップルの投資家や消費者はここ1年、ビジョンを示す指導者不在の状況に慣れたといえる。2011年1月にジョブズ氏が3度目の病気療養に入った時、多くはジョブズ氏がフルタイムで復帰することはないと考えていた。それでも、投資家や消費者のアップルに対する信頼が揺らぐことはなかった。

アップルは今のところ、発表予定の製品が多くあり、短期的には大きな問題に直面することはないとみられている。ただ、ジョブズ氏の製品ビジョンや営業マンとしての才能が最終的にアップルに受け継がれるかどうかは不明。

クックCEOのもとでの最初の大きな製品発表となった4日の「iPhone4S」発表にさほど大きな反響がなかったことは、同社の今後を示唆しているかもしれない。

<株価への影響>

2004年にアップルがジョブズ氏の膵臓がん手術について発表した時や、今年8月に同氏がCEO職を辞任した時も、株価にはほとんど影響しなかった。さらに、同氏の死去でも株価は時間外取引でほとんど動いていない。

これから発表される「iPhone」と「iPad」の新しいモデルに対するリライアビリティ(信頼性)や、スマートフォンおよびタブレット市場でアップルがグーグル(GOOG.O: 株価, 企業情報, レポート)やアマゾン(AMZN.O: 株価, 企業情報, レポート)の追撃をかわすことができるかが、株価の大きな材料になる見通し。

アップルの次なる目玉は>

ジョブズ氏が次の大きな製品ローンチに向け既に基盤を築き、その方向性をクック氏に託しているかどうかは不明。

IT業界では、アップルの次の目玉は、家庭のリビングルームに革新をもたらすようなものになる、との見方がある。アップルはこれまで、複雑で多くの課題を抱える音楽と通信というふたつの業界に参入し、大きな影響を与えた。今後は、テレビとその関連業界を「簡単なことは美しい(simple is beautifu)」という理念で大きく変える可能性がある。

<クック氏のもとアップルは変化するか>

ジョブズ氏とクック氏はともに、完璧主義者で知られている。クック氏は一緒に仕事をしやすく、コンセンサスを得て物事を進めるのがうまい、との評判がある。一方、ジョブズ氏は、エレベーターの中で社員を即クビにするなど、部下に対して非常に厳しい面もあった。

クック氏がどのようにリーダーシップを発揮していくかは不明。クック氏の性格や特徴は、完璧主義で物事の細部にこだわる点や、交渉に強い態度で臨むなど、ジョブズ氏と共通するところも多く、こうした点がクック氏の成功の要因との見方がある。

<ジョブズ氏の功績>

ジョブズ氏は、ヘンリー・フォード氏などとともに、米国の偉大な経営者として認識される。同氏は、アップルを1度だけでなく2度も世界的な企業にした。アップルコンピュータを設立し、同社を成功に導いた「アップルII」や「マッキントッシュ」を世に送り出した。

その後アップルコンピュータを解任されたが、業績が下降線をたどっていたアップルに1997年に復帰し、同社を立て直した。

1986年には、CGアニメーション技術のピクサーを買収し、CEOの座に就いた。2006年にディズニーがピクサーを買収した際には、ディズニーの個人筆頭株主となった。

ジョブズ氏は、類まれな才能で業界を革新し、デジタルテクノロジー、オンラインメディア、モバイルコミュニケーションの分野で革命をもたらした。 (from REUTERS)

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