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『会田誠作品集 天才でごめんなさい
』を読む
午前6時5分起床。浅草はくもり。会田誠展「天才でごめんなさい」に出掛けた時、「ミュータント花子」を買ってきたことは書いたが、もう一冊の代物が、この『会田誠作品集 天才でごめんなさい
』なのである。
この本は、会田誠展「天才でごめんなさい」の型録の役目を担っていているのだが(たぶん)、それにしては未だに分からないのだ。なにが、と聞かれれば、会田誠がだが、この本を読んでも尚一層わからなくなった。
「いかにすれば世界で最も偉大な芸術家になれるか」という冒頭の一説で、彼は次の用に書いている。
- 同じことは――いや似ていることさえ、二度と繰り返すな。
天才芸術家には毎秒毎秒記憶喪失を繰り返すくらいの、精神の鮮度が必要だ。 - 自分の過去がどうだっていいように、人類の過去だってどうだっていい。
天才芸術家にとって過去の奴らなんて、みんな取るに足らない下手っぴばかりだ。 - 芸術家にスケジュールや納期という概念はない。
- 英語を喋るなんて凡庸なことを平気でできる時点で、自分の才能を疑った方がいい。
どうしても母国語以外を喋るという暇つぶしがしたいなら、古代シュメール語とか犬語とか、面白いのにしておけ。 - パスポートは要らない。海の向こうからの客は、気が向けば迎えてやってもいいが、自分が客になることはありえない。
- 指から伝わって魂が腐るから、金には触るな。
というか、そういうものが腐ったこの世にまることを、最初から知るな。 - 大物な権力者やコレクターやキュレーターやギャラリストや批評家にあっても、すぐに忘れろ。
そして次にあったら「は?どなたさん?」と言え、というか、理由もなく突然、殴ってみてもよい。 - 向精神作用のある有害物質を含む、あらゆる嗜好品を常時摂取し続けろ。
それを肝臓で濾過するのも馬鹿馬鹿しい話だから、あらかじめそんな無用な臓器は摘出しておけ。 - 大恋愛と決闘は、定期的にやるとよい。
- 仕事するな。何も作るな。
それで、彼は「考えない人」をつくったのだが、だれも会田誠になろう、という人はいないだろうし、あたしも芸術家になろう、とは思わない。だが、この10箇条のうち、自分に都合のよいことはやってみよう、と思うのだが、いざやるとなれば、どれもが出来そうにないことに気付く。
例えば、一番(あたしに)近い、と思われる「10」の「仕事するな。何も作るな。」は、なんとなくわかる脳梗塞後の3年5ヶ月なのだが、「1」の「同じことは――いや似ていることさえ、二度と繰り返すな。」なんて、冗談じゃなく無理なのだ。
あたしは毎日ブログを書いている、毎日書く事で何かを掴もう、としているのだが、天才は「毎秒毎秒記憶喪失を繰り返すくらいの、精神の鮮度が必要だ」と言い放つのだ(しかしなにも生まれやしないのだけれども)。
トリックスターと解放の笑い―「考えない人」は何を考えないのか―
そしてCHAPTER(章)では、CHAPTER4「トリックスターと解放の笑い」が大好きだ。その章の始めには「考えない人」がいるのだが、あたしは「考えない人」になぜか惹かれている。
「考えな人」がトリックスターであることには気がついていた(ような)気がしていたのだが、この原型は、ロダンの「考える人」とお釈迦様だろう。そしてやっぱり考えないんだな、と「考えない人」を見ていてつくづくと思ったのだが、しかしこれは、何を捻ろう、としているのだろうか。
もりもりうんこが金色に光って、そこから花が生えている。緑色の身体におにぎりの顔をもち、もうやる気がない。しかしバリバリ働く、という日本人のイメージに、それとは逆の(まるであたしのように)、あまり頑張らない人――仕事するな。何も作るな――なのかな、とあたし達が常日頃正しいと思っていたりすることを捻っているのだろう、と思うあたしがいるのだ。