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2019年03月03日|お知らせ



自営業者、中小企業の復活こそが雇用対策である。

図I-11 従業者規模別事業所数の増減率(民営、平成13年~18年)
図I-11 従業者規模別事業所数の増減率(民営、平成13年~18年)

民営事業所について、従業者規模別に事業所数をみると、「1~4人」が348万7千事業所(事業所全体の60.9%)と最も多く、次いで「5~9人」が109万7千事業所(同19.2%)、「10~19人」が62万3千事業所(同10.9%)などとなっており、従業者数10人未満の事業所が事業所全体の約8割を占めている。/従業者数についてみると、「10~19人」の事業所の従業者数が837万4千人(従業者全体の15.5%)と最も多く、次いで「1~4人」が747万2千人(同13.8%)、「5~9人」が714万6千人(同13.2%)などとなっている。/平成13年と比べると、50人以上の規模では事業所数、従業者数共に増加しているのに対し、50人未満の規模で減少となっている。事業所数では「1~4人」が8.3%減と最も高く、次いで「5~9人」が6.7%減、「10~19人」が3.0%減などとなっている一方、「300人以上」は9.4%増、「200~299人」は5.7%増などとなっている。従業者数では、「1~4人」が9.7%減と最も高く、次いで「5~9人」が6.5%減、「10~19人」が2.7%減などとなっている一方、「300人以上」は9.0%増、「200~299人」は5.7%増などとなっている。 from 統計局ホームページ/平成18年事業所・企業統計調査 結果の概要 I-4 従業者規模別

今問題になっている派遣切りの問題は、「社会の厚み」が此の国に無くなってしまっていることの表出でしかない。「社会の厚み」とは「中景」のことであり、このサイトで多用している言葉なら「街的」や「町内会」のことであり、「帰る処」である。「年越し派遣村」を知ったとき、かれらには帰る処はないのか?とナイーブに思った。

先に、【資料】『日本型福祉社会』(自民党:1979)で示したのは、日本型福祉社会レジームの構成要素だが、それは以下の4項目であった。

  1. 個人が所属する(あるいは形成する)家庭、
  2. 個人が所属する企業(または所得の源泉となる職業)、
  3. 市場を通じて利用できる各種のリスク対処システム(保険など)、
  4. 最後に国が用意する社会保障制度である。

これは開発主義によるキャッチアップが成功している時代※1 の日本型福祉レジームということができる。エスピン・アンデルセンの、自由主義的人間、家族主義的人間、社会民主主義的人間の分類※2 に従えば、「家族主義的人間」に近いものを理想の個人像とした社会であり、つまり「家族とは紐帯とコミュニティのこの上ない源泉」(アンデルセン:p241)であり、家族の同心円上に「広義の自営業者」、会社があった時代である。

村上泰亮による開発主義政策のプロトタイプ・モデルには、「小規模企業の育成を重視する」の一項目がある。※3 その項目と上記の4項目は、まさに戦後レジームなのであり、地場の中小企業(もちろんその中心は建設業であった)は、地域経済の活性化と雇用の確保を支える「社会的厚み」として繁栄できたのである。※4

もちろん、開発主義には問題があることもたしかだが、つい最近まで、自営業者や中小企業は社会的厚みとして機能し、日本の雇用は、大企業中心ではなく、自営業、中小企業が支えたのである。そして地方は「帰る処」であることで、セーフティネットと成り得た。

つまり大企業が雇用を調整し失業者が発生しても、その失業者を受け入れる「容れ物」が地方(に限らず日本)にはあった。それは雇用のセイフティーネットは「雇用」であり、失業給付はその補完に過ぎないということの実現である。

しかしそんなレジーム(体制・構造)は全部古臭いものとされ、「自由主義的人間」が理想モデルとさる時代(つまり小泉さんの時代)に、此の国が戦後の長い時間をかけて構築してきたソーシャル・キャピタル(社会資本)はただ闇雲に否定された。まるで魔女狩りのように、創造的破壊などという欺瞞のもと、中景は破壊された。

ネオリベ(新自由主義)的な政策が跋扈し※5、社会の厚みの構成要素である、自営業者や中小企業は、市場原理とやらで淘汰され、その数を減らし続けてきた。その典型的なものが、今やどの地方都市でもみることのできる中心市街地の空洞化(シャッター街化)であり、それと歩みを一緒にするように、「街的」や「町内会」は、ほぼ絶滅状態に至った。あたしはそんな社会を住みにくいと感じたわけだ。

なのであたしのやってきたIT化は、地方の中小建設業に僅かに残っていた、市場原理主義とかグローバリズムに対するオルタナティブとしての「社会の厚み」の維持作業となったし※6、浅草を中心とした「街的」や「町内会」を書くことは、戦後の様々な中景(共同体)破壊圧力※7の中で、今に生き残ることのできた「街的」や「町内会」の、その生き残りの秘密を知ろうとするささやかな営みなのである。 ということで午前8時30分起床。浅草は晴れである。

政治―政治学から「政治界」の科学へ (Bourdieu library) (単行本) 公共のサービス、公共の交通、公共の病院、公共の学校、それらと一体となって構築されてきた地域社会、そしてそれに裏付けされるように繁栄する大都市、こうしたことはすべて、構築するのに大変な努力が要ったまったく途方もないものなのに、それらが当然にあるものとして感じられるとき、それが構築された意味を、それが「非常な努力と細心の注意をもってして初めて維持しうる発明と構築」であることを忘れてしまっているのだ。(ピエール・ブルデュー:『政治―政治学から「政治界」の科学へ (Bourdieu library) 』)

※注記

  1. 日本が一人あたりのGDPでアメリカを抜いたは1987年のことである。
  2. 自由主義的人間、家族主義的人間、社会民主主義的人間―『ポスト工業経済の社会的基礎―市場・福祉国家・家族の政治経済学』 G. エスピン‐アンデルセンより。 参照
  3. 村上泰亮による開発主義政策のプロトタイプ・モデルは次の8項目からなる(村上泰亮, 『反古典の政治経済学 下 二十一世紀への序説』,中央公論社,1992,p98-9)。
    1. 私有財産制に基づく市場競争を原則とする
    2. 政府は、産業政策を実行する
    3. 新規有望産業の中には輸出指向型の製造業を含めておく
    4. 小規模企業の育成を重視する
    5. 配分を平等化して、大衆消費中心の国内需要を育てる
    6. 配分平等化の一助という意味も含めて、農地の平等型配分をはかる
    7. 少なくとも中等教育までの教育制度を充実する
    8. 公平で有能な、ネポティズムを超えた近代的官僚制を作る
  4. Lesson7 市場とミーム(2)―主流のメカニズム from 桃論―中小建設業IT化サバイバル論 参照。
  5. 「現在、これほどまでに雇用情勢が悪化した主要な原因は、1990年代に雇用政策の基本理念が大転換したことにある。そして、明らかにそれは失政であった。その反省をしないままに、こうした対症療法を重ねていくだけでは、根本的な解決にはつながらないとわたしは思うのだ。」(@森永卓郎 from 製造業への派遣労働解禁が誤りだったことを認めよ! / SAFETY JAPAN [森永 卓郎氏] / 日経BP社
  6. 市場原理主義とかグローバリズムが主流の民意だという時代である。それは維持するのがやっとであって、増幅するまでには至らなかった。絶滅しなかっただけれも儲けものかもしれない。
  7. その破壊圧力とは「交換の原理」には違いないのだが。

Written by 桃知利男のプロフィール : 2009年01月14日 09:31: Newer : Older

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