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2006年10月16日(月) Tweet
「買い取る能力」はじゅうぶんでも「ものを欲しがる気持ち」が枯渇している。
ケインズ経済学の終焉?
経済学者のケインズは、需要を「ものを欲しがる気持ち」と「ものを買い取る能力」のふたつに分けて考えた。そして、ケインズの活躍した第二次世界大戦以前の世界では、「欲しがる気持ち」のほうは、まだじゅうぶんに存在すると考えられ、むしろ、買い取る能力が足らずに景気が失速するのだから、政府による公共事業によって、社会全体の需要を支えるべきだとした。/だが、今日の日本はそのまったく逆で、「買い取る能力」はじゅうぶんで、「ものを欲しがる気持ち」が枯渇していることは言うまでもない。(佐藤典司:『経済成長は、もういらない』:p19)
開発主義の終焉
午前7時起床。浅草は晴れ。これは昨日の続きのようなものか。公共事業という産業が直面している問題は、自らを生み出した欲望の具現化システムである開発主義が崩壊してしまったことだろう。そしてそれに代わる欲望のシステムが市場原理主義なのだから「買い取る能力」はじゅうぶんでも「ものを欲しがる気持ち」が枯渇していることはなにもかわらない。
だが、私たちの学生時代とはまったく違っているのは、商品以外に、彼らにとってもっとも欲しいものがあるという点だ。/毎年、新入生に、大学に入って何をしたいか聞くと、圧倒的に多く返ってくる答えがひとつある。もちろん、勉強ではない。「友達をつくりたい」だ。(佐藤典司:『経済成長は、もういらない』:p18)
逆説的には開発主義の幸福な終焉はこんなかたちでしかないのだろうし、それが反対側の軸としての市場原理の強化を招くのだろうが、しかしこれが(社会的な)不安を招く。
不安
ラカンによれば、不安は欲望の対象=原因が欠けているときに起こるのではない。不安を引き起こすのは対象の欠如ではない。反対に、われわれが対象に近づきすぎて欠如そのものを失ってしまいそうな危険が、不安を引き起こすのだ。つまり、不安は欲望の消滅によってもたらされるのである。(スラヴォイ・ジジェク:『斜めから見る』:p27)
つまり私たちは豊かなのでる。市場に商品は溢れ、どのような生活レベルであるかを問わず、食べるだけなら日々困ることはないだろう。しかしそれゆえに商品に対する欲望は枯渇し、消費するだけの生活に不安を覚えている。
欲しいもの
ラカンは、欲望をあきらめてはならない、といったけれども、だから(欲望の対象としての)消費をし続けることのできるひとはある意味幸せなのだろう。
しかしその消費さえ、なぜそれを買おうと思ったのかを自問してみれば――消費し続ける方はそんなことは普通しないだろうけれども、その理由なんてコミュニケーション(〈伝達/情報〉の差異の理解)の道具のようなもので、手に入れてしまえばしたで、たいした満足感もないのである。
つまり消費はいつまでたっても欲望(対象a)を満たさない。その空虚さのようなものに気付いたしまった人々が居るということ。 これがぶれない軸としての大衆(大文字の他者)の空気の一部なのだろうなと思う。
経営=環境×原理
だからこそ、この環境において公共事業という産業は自らの立ち位置を模索しなければならないのに、最近やっていることときたら「経済合理性」の導入(曰く、競争原理の導入)一辺倒である。
それは視点がずれているとしか(私には)思えないのだ。公共性を持つものはもっと非合理性さえ孕むバイロジックな思考の産物であって欲しいと思うのだが――ましてやパトリのための地方の公共事業は――、肝心の公共事業という産業ときたら、何時の時代のはなしだ、と云うようなことを繰り返すだけなのである。
参考図書
![]() |
経済成長は、もういらない ゼロ成長でも幸せな国 |
![]() |
スラヴォイ・ジジェク(著) |
投稿者 momo : 2006年10月16日 10:31 : Newer : Older
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コメント
ももちさん、こんにちは、
すんごく納得できます。なんつうかもうなにをしていいのか判らないくらい経済活動に対して興味と興奮を失っています。やばいです。
でも、人と会ってものごとを進めるのはどうしようもなく楽しいと感じているのも事実です。
「経済成長はいらない」時代の典型かもしれません、私は。
投稿者 ひでき : 2006年10月16日 17:05
>ひできさん
確かにね、経済活動に接続することに私もあんまり興味がなくなりつつあるのですよ。やばいかもです。(笑)
でもそれってある意味「動物化」(東浩紀)なわけで、なので考えることだけは放棄しないようにしています。
投稿者 momo : 2006年10月17日 14:48
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