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2019年03月03日|お知らせ



豹変しなかった発注者が逮捕されてしまうのは何故か。

GC空間

遅々として進まない『桃論』のWeb化だけれども、昨晩、ようやくLesson18にたどり着いた。
Lesson18 発注者と市民社会(1)―発注者は豹変する from 桃論―中小建設業IT化サバイバル論※1

公共事業という産業の終焉 

2002年に『桃論』を書いた時点で)見えた公共事業の閉塞状況こそが、「種」としての「公共事業という産業」の終焉を早めている。

というのが「発注者は豹変する」の要旨であり、つまり足りなかったのは、閉じた円環にひねりを加え、〈他者〉=市民社会(つまりは地元)との「信頼」を構築しようとする、具体的な行動と想いなのである。

発注者は豹変する

普遍経済学のトポロジーGC空間」でいう第Ⅱ象限にいる「市民」が「みんな」化すれば、そのエージェント(代理人)である「発注者」も(保身的に)「みんな」化せざるを得ない。

それは第Ⅱ、Ⅳ象限(つまりローカルな領域)の壁を「交換の原理」が破壊する過程とでもいえるものだ。

「みんな」とは消費主体のことであり、つまり「発注者」も消費主体として動かざるを得ない状況となれば、公共事業の市場原理化、一般競争入札化は加速するだろうという2002年の予見は的中してしまった(と思う)。

豹変しない発注者  

しかし最近気になるのは、国交省がらみの、公取委ではなく直接警察が動く摘発(官製談合)で、発注者からの逮捕者も出ている。

2006年に活発化した、福島、和歌山、宮崎知事の逮捕に象徴される、地方自治体レベルでの「閉じた円環」(ヒエラルキー・ソリューション)の(代替え策無き)弱体化作業に、あたしは地方経済の疲弊と開発主義の終焉を感じていたが、それはいよいよ国のレベルでの開発主義(贈与システム)の破壊作業となって本格化したということだろう。「交換の原理」をいったん解き放てば(そのシステムが破綻するまで)歯止めは利かない。

開発主義が終焉する運命にあることに異論はないが、その終焉の仕方はあまりにも醜い。それは開発主義が生み出した「ヒエラルキー・ソリューション」が、スティグリッツの法則※1に導かれた組織(つまり発注者)のシステムであるからだ。

組織は、そもそもが贈与共同体でしかないが、「公共事業という産業」という組織の、その中核にある最大規模の組織の、その贈与共同体的システムを(純粋贈与という媒介を使わずに)「交換の原理」をもって止めようとするなら、それはハードランディングとならざるを得ない。当然に逮捕者もでる。

逮捕された方々は、いってみれば贈与の方々で、それは「豹変しない」、機会費用を考慮に入れない、非経済合理的な(あたし好みの人々)だった、ということができるかもしれないが、あたし的には「種に溶けた個」でしかないヘタレ(第Ⅳ象限のどぼん)なのである。

種の論理 

それは個人の問題というよりも、個が帰属する組織が、「経営=環境×原理」を考えることもない思考停止状態にあった「(種の論理」が働いていない)、という組織(「種」)の問題が発端なのだ。

個は種のミームの中で育ち、また種は個の変化によるミームの変化を内包している」でなくてはならないのある。つまり「個」を生み出すのは「種」なのである。組織は静的なものではなく、矛盾としての「個」を孕むからそこ、「個」における「種」の否定即肯定という運動を原動力に「種」は変化し存続し続けるのだ。「種に溶けた個」ばかりの静的な組織であるなら進化論的に淘汰されるだけでしかない。

つまり彼らもまた、既存のシステム(ヒエラルキー・ソリューション)にしがみつく「種に溶けた個」であった(対極にあるマーケット・ソリューションに走る人々もたいしてかわらない)。そのことで「種」は淘汰の危機にある。

「種の論理」が機能することは、大きな組織では所詮無理なことでしかなく(外部からの圧力がないかぎり自ら変化はしない)、だからあたしは中小建設業の方々に賭することにしたのだが、その想いはなかなか通じなかった(通じた方々もいるから、あたしはまだ諦めてはいないのだけれども)。

※注記

  1. 今回、原文の手直しは数多く、それは『桃論』当時のあたしの、その言い回しの諄さが嫌になったからでしかないが、だいぶすっきりしたかと思うそのテクストを読めば、今、同じ事を書くなら、半分の文字数で済んでしまうだろうな、ということだ。
  2. 官僚は何を最大化するのだろうか。一つの答えは、「官僚は自分の属する省庁のサイズを最大化しようと努める」、である。(Josef  E.Stiglitz:Economics of the Public Sector:W.W.Norton & Company:1986) 

Written by 桃知利男のプロフィール : 2008年05月16日 12:55: Newer : Older

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