中澤製菓のベビーカステラ
千束通りから浅草4丁目の交差点を左折すれば、そこはいつものアジールであって、色とりどりのテントを張ったテキヤが並ぶ公界である。
その高い次元の空間では、食の安全なんてどうでもよくなってしまっていて、それに文句をいう人もいない。つまり食の安全なんていうのはアジールレベルで十分なのであるが、ここであたしが必ず買うのが、荒川の中澤製菓のベビーカステラなのだ。※1
午前6時40分起床。浅草は晴れ。昨日は二の酉であって、上の引用のように、あたしもにお酉さまにいってきた。
入院後は、お酉さまに行く気も起きず、しかし、そんなことを云いつつも毎年行っていたのは、そこに中澤製菓があったからで、あたしはここのベビーカステラを買い、そして一個の2分の1だけもらう、という、なんともつつましい、いや、楽しい生活をしていたのだ。
ベビーカステラは今や、見るだけでも毒である、と云われているが(あたしの場合=糖尿病患者にとってはだが)、中澤製菓の前の、何処までも続くかのような行列に並んで作業を見ていたら、粉を混ぜるおばさんが思い切り寸胴に入れた砂糖は4袋、4kgであり、あーこれが人工甘味料なら、4つは食べられるのに、と思う。
しかしこの中澤製菓の行列に並ぶことこそ、あたしの密かな楽しみなのであり、だんだんと大きくなる中澤製菓の、ベビーカステラを造る人達の、間違いなく繰り返すその単純作業の素晴らしさに、売り場のお姉さんの孤軍奮闘に、改めて頭が下がる思いなのは、あたしだけの楽しみなのである。