総菜 いちふじ
谷中銀座 総菜 いちふじ 2009年4月29日 with VQ1015 Entry+クロスプロセス by Picnik


谷中銀座では下町プロモーションの成功故の下町の記号的消費をみることができる、と書くのは容易(というか安易)なことでしかなく、そもそも下町に棲んでいるあたしが下町を記号的に消費することなどパロディでしかない。

しかしあたしはその商魂のたくましさに違和感があるわけもなく、長い行列をつくっている総菜のいちふじで焼きおにぎりとハムカツを二つずつ買って260円也。

焼きおにぎりとハムカツ
焼きおにぎり1個80円 ハムカツ1枚50円

けっして褒めるような味ではないけれど、客あしらいも手早く、うちの近所の250円弁当ぐらいのインパクトはある。観光のお客はさらにいろいろと買い求めるものだから、結構な金額になったりしているわけで、繁昌しているその姿をみれば、なるほど総菜という自転車で10分以内の商品でも、こういう商売のやり方があるのだなと感心してしまう。

うちの近所にも総菜を売る店はあるけれど、観光客が近寄るわけもなく、いちふじはまったく奇異な総菜の店に見える。この店にも生活者の店である名残はあり、実際に地元の方々の利用もあるのだとは思う(たぶん)。

けれど、あたしのような余所者がなにかまわずに購入してしまうようになっての歴史は浅いはずで、撮影禁止の張り紙があったり、客あしらいはけっしてうまくはなく、下町を消費しないあたしには、粗野な商魂の剥き出しがザラザラと伝わってきて、それがなんとも面白い。

それはこの粗野さこそが谷中銀座の魅力かもしれず、浅草の観光客相手の店がもっている冷淡さの裏返しの鷹揚さのようなもが身につくにはあと100年ぐらいかかるとしても、そんなものはない方がいいのかもしれないということだ。

ただ100年後に(というか10年後でもいいのだが)谷中銀座が今の繁栄を維持しているのかどうかはあたしが知るはずもなく、この商店街から観光のお客がいなくなったら、この商店街はどうなるのだろうかと余所者が考えるぐらいの哀しさはある。