滝田ゆう(著)
筑摩書房 |
午前7時50分起床。浅草は晴れ。今日はやっと机に向かい、パソコンのディスプレイに目をやった。17時である。
先日、鉄蔵さんから借りた2冊目の本、『寺島町奇譚(全)』をようやく読み終えた。先の『猫楠―南方熊楠の生涯』を1日で読んでしまったのに比べれば、嘘みたいに時間がかかった。
面白くなかったのか、と聞かれれば、「いや、とっても面白かった」、と答えるしかなく、なせ時間がかかったのか、と言えば、毎日寝る前に読んだのでこうなてしまった、と答えるしかないだろう。
しかし何とも言えない滝田ゆう氏の自伝的作品だ。戦前の玉の井が生き生きと描かれている。
玉の井駅は今の東向島駅のことで、あたしがかよっている鐘ヶ淵駅の1つ手前である。雨でズブ濡れの玉の井駅のアップの絵なんかもあったりして、(見たこともないのに)何か懐かしく感じる。何にも知らない様なあたしでも、あのあたりに何があったかはよく知っているわけで。
今は店が壊されてしまった酒場遺産の「大衆酒場亀屋」の造りが、この漫画のスタンドバー「ドン」によく似ているという鉄蔵さんの意見も、なるほどよく分かるし、故カントク(亀屋の店主)の玉の井の話しもなつかしい。あたしたちの寺島町奇譚は、寺島町(東向島)ならぬ鐘ヶ淵を軸に回っていたんだな。
独特の滝田ゆうの吹き出しもおかしく、空襲で玉の井が燃えるラストの章は何度も読み返してしまった。