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「街的」は地震に弱いらしい―街的な地震対策はないのだろうか。

建物倒壊危険度が高い地域
建物倒壊危険度が高い地域


午前7時起床。浅草は晴れ。中国四川大地震があったりして、今更ながら、東京都都市整備局発表の[地震に関する地域危険度測定調査(第6回)(平成20年2月公表)]を眺めていたりした。その解説は日経BP社 SAFETY HJAPAに連載されている細野透さんのコラム「震度7の建築経済学

に詳しい。

建物倒壊危険度ランキング

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そんな中から建物倒壊危険度を見れば、ワースト10にはうちの近所がならぶのである。台東区はいうまでもなく、墨田区も足立区もうちの隣である。

特に5位にランクされている台東区浅草5丁目というのは、地続きなのであって、そこはあたしの昼飯供給基地が並ぶ「街的」な空間なのだ。(なぜかあたしの居る浅草4丁目はワースト100にはないのだけれども、5丁目との違いはたいしてない)。

こうして見ると、古い建物の多い、そして路地が張り巡らされた「街的」な街は、地震に弱い。それは確かに

危険度の高い地域は、地盤が沖積低地や谷底低地にあり、古い木造や軽量鉄骨造の建物が密集する荒川および隅田川沿いの下町地域一帯に集中する。具体的には、足立区南部、荒川区、台東区東部、葛飾区西部、墨田区、江東区北部に広がる地域である。一方、多摩地域では、区部に比べると、危険度が格段に低くなっている。(from http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/ba/42/index1.html)

なのであって、当たり前でしかないのだろが、しかしその対策は何も施されていない。(たぶん) わかっているなら、なにかすればよいだろうに、「あぶないわね」と言ったきり、なにもしていないように思えるのは何故だろう。

江戸的な合理性

ひとつは、対策はいらない、というものだろう。それはとても江戸的な合理性であって、火事の多かった江戸時代は、そもそもがプレハブみたいなつくりの家で、焼失したり、消火のために壊されることが前提なのである。

家財道具も必要最低限、その日暮らしと背中合わせの「宵越しの銭はもたない」の長屋的生活が庶民の生き方だ。

そんな環境では、財産をためても燃えてしまえば元も子もないのであって、つまり消えモノ(食事とか芝居や相撲見物)に消費し、消えないモノ(家具や道具など)は最低限度にしか金を使わない江戸っ子の特徴的な性癖はそんな環境から生まれてきた。

だとすれば、壊れるまでなにもしないというのは、江戸的な合理性にかなっているのかもしれない。

「街的」のための耐震補強

しかし現代の経済合理性は、消失した後の「街的」の復活を許さないだろう。地震がこなくても「街的」は絶滅危惧種なのであるが、関東大震災でも東京大空襲でも消滅しなかった東京の「街的」も、次の大地震ではその住処を根こそぎ失ってしまうだろう、とあたしは考えていたりする。であれば、「街的」の建築的要件は失われない方がよい、と考えるのが路地教信者なのだ。

それに今の時代の過密は江戸時代とは比較にならない。人工の高齢化も進んでいる。そんな中で大きな地震が発生すれば、「街的」の人的被害も多大なものとなるだろう。

そういう被害コストを予防コストが下回ればよいと合理的に考えるなら、そして社会的資産としての「街的」を維持しようとするなら、安価でできる耐震補強システムというのは商品化されてもいいような気もするのだ。つまり「街的」仕様の耐震補強システムである。

東京都が一割ぐらいの補助金を負担しても、地元の大工さんが施工すれば、景気対策にはなるだろうし、そのシステムは(たぶん)世界中に売れると思う。それはたしかに江戸的ではないのかもしれないけれども。

Comments [3]

No.1

浅草は意外に危険度の高い地域なのですね。
一般的に海洋プレートは大陸プレートより強固で、二つがぶつかり合うと海洋プレートが大陸プレートの下にもぐり込み、いつかそれに限界がきて大陸プレートが大きく跳ねます。それが地震で、関東はまさにその真上にあると言っても過言ではありません。
師匠!!早くお逃げになった方が・・・・>

No.2

>ryogoさん

来月は浅草でお待ちしております。
たぶん地震はないかと思いますが、こればかりはわかりませんねぇ。(笑)

No.3

このあたり、低地であるとともに、昔の河川跡が結構多い。
江戸時代に利根川をつけかえ、さらに、荒川など流れのかわったものが多い。

旧河川地域は結構危険。市販の古地図で自分の住んでいるところがどういう場所なのか、知る必要性があります。むろん、最重要事項ではないのだけれど。

~土砂崩れでこんな事例~
地震ではないが、水害で、ある地域で、勾配のきつい箇所よりも緩い(ほぼフラット)箇所で土砂崩れが発生した区域があった。これは、もともとあった沢を埋め立てたところが流されていた。・・・どうしても自然が100年以上かけて創った地盤と、人間が造った地盤では強度・耐久性ともに雲泥の差がある。

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