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『日本経済論』―「国際競争力」という幻想 松原隆一郎を読む。

 日本経済論―「国際競争力」という幻想

日本経済論―「国際競争力」という幻想 (NHK出版新書 340)

松原隆一郎(著)

2011年1月10日
NHK出版
820円+税


午前7時10分起床。浅草は雪だ。東京で見る雪は久しぶりだけど、気温もぐっと下がっているようで、 窓ガラスが白く曇っている。

『日本経済論』

この本は2008年から2010年までの社会事象を、「経済」を中心に、「外交」「民主党政権」「(国民の)安心」「公共性」に即して論じている。その根底にあるのはアダム・スミスの公正さや共感――松原の考える「信頼」――である。

日本経済論』は、藤井聡の『公共事業が日本を救う』を読むために購入したのだ。

なぜこの本を選んだのかのついては、たいした意味は無く、直感のようなものだ。兎に角、『公共事業が日本を救う』を読む為には、別な本を読まないといけないな、と本能的に感じたのだ。

藤井は“「コンクリートから人へ」のウソ”と、今の政権党である民主党を批判している。そこから始めようとする。

だが、ちょっと待てよ、なのである。それはそれでいいとしても、その前に小泉純一郎(自民党をぶっ壊す、といって本当に壊した人)を見ておくべきだろう、と思った。なにせ旧自民党は公共事業を出していたにもかかわらず、小泉政権になって、くるっと逆方向を向いてしまったのだから。

そこから民主党を見ることで「公共事業不要論」もはっきりと見えるような気がしたのだ。それで『日本経済論』なのだ。

宮代真司の言葉から

そんな本書のp152にある、『各国の政治経済システムは。「(官僚に)任せる制度」=「権威主義」と「(市民が)引き受ける政治」=「参加主義」の対立、それに、「談合主義」と「市場主義」の対立という二本の軸で分類しうる』、という宮代真司の言葉から作ったものだ。

「権威主義的な談合主義」が自民党であるのはよく分かるとしても、宮代によれば市場主義というのは、「路頭に迷っても協会や金持ちが救いの手を差し延べてくれる土壌がなければ機能しない」のだそうで、それゆえ日本は欧州型の「参加主義的な談合主義」にい向かうべきとなる。 

 民主党は何を目指していたのか

重商主義の経済ありき

ところで『日本経済論』は、現代版「重商主義」批判、といえるものだ、と思う。この本は、わが国のいわゆる小泉「構造改革」の本質を、輸出企業を政策的に優遇した現代版「重商主義」 ととらえている。つまり小泉政権とは(上の図なら)「権威主義的な市場主義」なのである。

その結果として、国内経済の分断。大企業と中小企業、都市と地方、正規雇用と非正規雇用の格差、公共投資・政府支出の削減(「小さな政府」)。地方交付税交付金削減が見られたわけだ。

そして1990年代に、総額事業規模128兆円ものの公共対策を実施したが景気は回復しなかった。そこから構想改革(や金融緩和)へシフトしていき、「公共事業不要論」は生まれてきた、と考えるとわかりやすいのかも知れない。

「構想改革」は、特需のような外需が消え失せたと同時に消えてしまったが、「公共事業不要論」は、まだ民主党によっても生き続けている。

私的な感想

あたしは2009年8月に脳血栓で倒れたわけだが、入院中に政権交代になる選挙は行われ、鳩山政権が誕生した。その後に菅内閣が生まれ、参議院選挙で民主党が惨敗等、あたしには起きていることはわかっても、説明がつかずにいたのだ。

政権交代の選挙から1年6ヶ月、あたしの思考は止まったままだったようだ。その止まった思考が、ようやくこの本で解けはじめたような気がする、というのは言い過ぎだろうか。

Comments [2]

No.1

おお、「日本経済論」。今手元にあります。
同じシリーズで『大阪・うまいもん屋の街場論』書いてます。

No.2

面白い物を書いていますね。
完成を期待してますね。

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