毛ガニ 炒麺
毛ガニ                         炒麺
海鮮と中華がなんの衒いもなく出て来る思考のショートサーキット※1


刺身イカ刺し白子と牡蠣
刺身盛り合わせ        イカ刺し          白子と牡蠣
豚の唐揚げウニ玉のり巻き
豚の唐揚げ          ウニ玉           のり巻き

午前7時起床。浅草は雨。札幌へ旅行される方から、どこかお薦めのお店はありませんか、と尋ねられれば、あたしは大通西15丁目のハイブリッド居酒屋※2揚子江・黄金寿司をお薦めしている。けれど、そう云うあたしもここを訪れるのは約2年ぶりで、12月11日の夕餉は無理を云って揚子江・黄金寿司にしていただいたのだ。

そこは相変わらずのカオスだった。出て来る料理も中華と海鮮のハイブリッドなら、官公庁が立ち並ぶ一帯にぽつんとあるこの一軒アジールの喧騒は(アジールだからこその)群衆のものである。もちろんあたしらもその喧騒の中にいて、その喧騒をつくりだす当事者となる。じつに楽しくそしてかなしい。

つまり高村光太郎の「米久の晩餐」の比喩こそがこの店に相応しいのであって、うちの近所ならニュー王将※3に近い雰囲気であるなとも思う。そうだ、ここは浅草なのだ。

ぎっしり並べた鍋台の前を
この世で一番居心地のいい自分の巣にして
正直まっとうの食欲とおしゃべりとに今歓楽をつくす群衆
まるで魂の銭湯のように
自分の心を平気でまる裸にする群衆
かくしていたへんな隅々の暗さまですっかりさらけ出して
のみ、むさぼり、わめき、笑い、そしてたまには怒る群衆
人の世の内壁の無限の陰影に花咲かせて
せめて今夜は機嫌よく一ぱいきこしめす群衆
まっ黒になってはたらかねばならぬ明日を忘れて
年寄や若い女房に気前を見せてどんぶりの財布をはたく群衆
アマゾンに叱られて小さくなるしかもくりからもんもんの群衆、
出来立ての洋服を気にして四角にロオスをつつく群衆、
自分のかせいだ金のうまさをじっと噛みしめる群衆、
群衆、群衆、群衆。

揚子江・黄金寿司
 [ すし/中華料理 ]

揚子江・黄金寿司

札幌随一のアジール!

※注記

  1. これが思考のショートサーキットであるのは、なぜこの店が寿司屋と中華料理店のハイブリッドであるかなど考える必要はない、ということだ。客であるあたしらは、その不思議さに、ただ笑うしか対処の方法がないのである。
  2. 今回、揚子江・黄金寿司を居酒屋と呼んでしまったのは間違いかもしれない。居酒屋を「酒類とそれに伴う簡単な料理を提供する飲食店である」と定義してしまえば、それはこの店にはあきらかに相応しくない。しかし寿司屋でもなく、中華料理やでもなく、寿司屋でもあり、中華料理屋でもあるこの店を、居酒屋と呼ぶしかなくなってしまっているという哀しいあたしの語彙。
  3. ニュー王将は、和食と洋食のハイブリッドの店で、店の大きさも揚子江・黄金寿司よりずっと小さい。けれどその喧騒(混んでいるときはだけれども)は、揚子江・黄金寿司と同じ周波数である。