桃知商店よりのお知らせ

生まれちまった悲しみに―北菓楼の「シェフのおやつ」(バウムクーヘン)。(砂川市)

シェフのおやつ
北菓楼のシェフのおやつ(バウムクーヘン)


いただきもの」にバウムクーヘンが並ぶことになってしまったのは時の運だが、1月25日岩見沢での講演に来てくれた温泉マンさんから、北菓楼のシェフのおやつ(バウムクーヘン)とおかきをいただいたのだ。今回の旅は帰りの荷物が多くなってしまったので、これも宅配便で自宅に送ったのだが、到着は28日、そしてバウムクーヘンの賞味期限は27日なのだった。

けれど、あたしには賞味期限はないのである。

つまりそんなことはぜんぜん気にしない。食ってみて食えればそれでよいのである。座右の銘は「くいものを粗末にするな」(by 立川談志家元)なのであり、賞味期限一日過ぎは、あたしの辞書では「まだ出来立てのホヤホヤ」と読む。もちろん「シェフのおやつ」(バウムクーヘン)もたいへんおいしくいただいたのだ。

北菓楼のシェフのおやつ(バウムクーヘン)
樹齢は(だいたい)15年

これはつまりバウムクーヘンのはしっこのところの切り落としらしく、それに「シェフのおやつ」と名前をつけて販売しているらしいのだが、それゆえにいつもあるとは限らないレア商品らしい。しかしいただいておいていうのもなんなのだけれど、あたしはこれ「商品」としては販売しないでほしかったなと思うのだ。

これはネーミングの通り「シェフのおやつ」のままであってほしかった。たしかに食べたらうまい、値段もリーズナブルであるらしい。しかしうまいけれどもなにか悲しいのである。その悲しさはなんだろうなと考えると、これはあまりにも正規品と似すぎているからだと思ったのだ。

(もっと徹底的に違う姿形なら、あたしのそういう感情も湧き出なかったろうと思う)。

正規品と「シェフのおやつ」の違いはほとんどない(だからこそ悲しい)。ただ、はしっこか/はしっこじゃないかの違いだけである。原材料も製造工程も同じ、ただ位置が(たまたま)はしっこであったことで「正規品」にはなれなかったのである。

その悲しさをこの「シェフのおやつ」は「商品」になってしまったことで表徴してしまっているのだ。こんな悲しいものを店は出してはいけないと(あたしは)思う。これはつくった者が責任をもって処分すべきものだと(あたしは)思う。それはくいものを粗末に扱うことではないはずである。

Comments [2]

No.1

先日こちらのコメント欄で質問をさせていただきましたmarumaruと申します。
その際はご丁寧にお答え頂き、ありがとうございました。
私は頭の出来があまり良くないため、お答え頂いて勉強になりました。本当にありがとうございました。

ところで端っこ商品ですが、悲しいと書いておられるのを拝見し、そう感じる方もおられるということを初めて知りました。
私は煎餅の端っこ商品が好きですが、高くて買えない煎餅が沢山食べられるという1番の理由のほかに、「少し良いことをしているような気分になれる」という、よく考えたら嫌らしい理由もあったかもしれないと思いました。

No.2

>marumaruさん

コメントありがとうございます。

これは、ほんとうは褒めまくろうとして書き始めたら、こうなっちまったというテクストなのです。

いくらどうしようが、偽者でしかない、つまり正真正銘の偽者がもっている悲しさみたいなものが強烈なのですよ、この商品はですね。

このテクストを書いていたら、その悲しさが、なにかふつふつと湧き出てきてしまって、しょうがなかったのです。

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