いさぶろう号の客室乗務員さん
いさぶろう号の客室乗務員さん


人吉→吉松→鹿児島空港

午前6時起床。浅草はくもり。昨日の帰路は肥薩線を使い人吉からは、10時4分発のいさぶろう1号(いさぶろう・しんぺい号)で吉松まで行き、吉松からは高速バスを使って鹿児島空港へ着いた。(JR吉松駅から高速バス停まではタクシーで6分ほどで料金は800円。高速バスは25分ほどで鹿児島空港につき、料金は730円だった)。

http://www.momoti.com/blog2/2008/06/2_17.php
いさぶろう・しんぺい号:真幸駅にて
(ホームにおられる方は乗客ではなく見学者である)

いさぶろう・しんぺい号

isaburo_mapいさぶろう・しんぺい号は、人吉-吉松間を一日2往復する観光列車だが、各駅停車の普通列車でもあるわけで、+300円で指定席がとれる(1020円)。

その指定席は《霧島連山を望む絶景を楽しみながらループ線やスイッチバックの壮大な峠越えを体感。 古代うるし色のボディに金のエンブレム、車内は木を多く使った作りで、古き良き時代の温かな雰囲気を醸し出しています》なのであり、

《日本三大車窓の風景を充分に堪能していただけるパノラマミックスペースからは壮大な車窓風景を楽しめます。》from いさぶろう号」「しんぺい号」 九州の列車 JR九州 東京支店) なのである。

指定席の趣のあるつくりは抜群の雰囲気で、たしかに昨日は桜島も見えたというべらぼうな景観、テツにはたまらないスイッチバックは2回もあるという魅力ある路線なのだ。

しさぶろう・しんぺい号の社内 パノラマミックスペース

しかしそんな素晴らしい路線でも、昨日の人吉発「いさぶろう1号」の乗客は二人しかいなかったのである。どうでもいいようなウイークデイである。しかたないことかもしれない。乗務員は運転手と客室乗務員のお二人なので、ひとり一乗務員という、ほぼ貸し切り状態なのであった。

しかし途中駅に停車するごとに、積み重なるように、ひしひしと「あーこれは贅沢な時間だな」と感じるのである。それは貸し切り状態だったからではない。

この列車、人吉-吉松間を1時間12分もかけてはしる。その大きな理由は途中駅で5分から10分ほど停車するからだが、その都度乗客も乗務員も列車の外に出て非日常の時空に身を置くにである。そこには、申し訳なさそうに観光用の施設もあるが、それは(あたしには)どうでもよかったのである。その地の日常の断片ををあたしはただ見ていた。時間はたしかにゆっくりと流れているのだ。

矢岳駅から 矢岳駅から
それぞれの地で繰り返されてきたそれぞれの日常の断片の断片:矢岳駅にて

"would becom tender"(やさしくなれるよ)

そしてこの日の客室乗務員さんは、とても美人でいい人だった。入り込まず、さりとてよそよそしくもなく、さりげなく、かといって突き放さず。あたしは"would becom tender"(やさしくなれるよ)というシェイクスピアの『テンペスト』の言葉を思い出していた。奉仕するこころには、斜に構えることなど必要もないことなのだ。

それは旅行する空間にいる〈境界〉(〈他者〉であるが〈他者〉でもない)、キアスムで云うトリックスターとしての客室乗務員の存在ををあらためて認識し直した時間であった。いい時間を過ごした。