桃知商店よりのお知らせ

自己責任とは「なにが起きても他人(ひと)のせい」のことである。

他力で生きる町内会

午前6時起床。浅草はくもり。「他力」で生きる、というのは意外と難しい。もちろんそれは親鸞の言った〈他力本願〉ではなく、もっと俗世的に、「ひと任せ」「他人依存」「成り行き任せ」の意味でである。

それは「自己責任」が強調される中で、その対極の生き方として非難されてきたけれど、この生き方を徹底するのは、ほぼ不可能なことでしかない。なぜならそもそも「他力」で生きる、と決めたのは自分なのだから「他力」は「自力」な生き方なのである。だから「自己責任」で生きろ、等といわれなくても、「他力」で生きている(町内会的な)あたしは、最初から自己責任で生きているのである。


なにが起きても他人(ひと)のせい。

自己と自我一方「なにが起きても他人(ひと)のせい」というのは「他力」ではない。それは自分を守ろうとする一時避難行動のようなもので、そこで保護している自分とは「自我」なのである(だから緊急避難的=自我が壊れそうな時には、それは〈有り〉でいい)。

つまり他人(ひと)のせい、とはいっても、じつはそこには〈他者〉(人)はいないのであって、世界は自分となんだかよくわからない自分と似たかたちをしたモノからできている。我思う我だけが我なのである。

よく人前で挨拶をする時に、その緊張を和らげるために、あれは人間じゃなくて、ジャガイモやカボチャが並んでいると思え、等というのがそれである。

そう考えることで楽になるときもあるのはたしかだから、あたしはそれを否定はしない。けれど、それを信条にしてしまうこと、つまり一時避難が常態化してしまうことは、恐ろしく孤独でパラノイアな生き方でしかない。それは「自己」のない生き方になってしまう。

マズローの自己実現理論(欲求段階説)

マズローの欲求段階説ここで今更ながらマズローの「自己実現理論(欲求段階説)」を持ち出すのは、その最高峰にあるのは自己実現の欲求だということの再確認でしかない。それは自我の欲求の上にある(というだけのことだ)。

それは〈他者〉からの尊敬と称賛であり信頼である。つまり「自己責任」の「自己」というのは〈他者〉を含んだ「」つまり「われわれ」のことなんだ、ということなのであって、その意味であたしは、「自己責任」は否定しない。

けれど世の中で起きているヘンな事件(秋葉原のトラックや、大阪やソウルの放火)のように、〈自我〉に汲々としてしまっている人がいるのはたしかで、ソウルから届いた「世間が無視する」という言葉は(あたしには)今の時代の「自己責任」の帰結の象徴に思えた。

「自己責任」というのは「自由」の担保だ。けれど今の時代(ネオリベがいう)の自由とは、金持ちが自由にその金を使って(投資して)金を儲けることのできる自由でしかない。

それはお金で自己実現は買えるということと同義であって、だからお金に窮した人々には自己実現の自由がなくなってしまうことになってしまう(ように思える)。「私って誰?」と考え始めれば、肥大した自由と自我が、「」の未規定さ(パトリの可能性)を疎外していることに気付くだろう。それは孤独でしかないことで、そこで強調される自己責任は「なにが起きても他人(ひと)のせい」に収斂してしまうなのである(たぶん)。

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Comments [3]

No.1

また難しい質問になるのかもしれませんがお許しください

街的、町内会も桃知さんの言う「自己責任」ではない
自己責任というなの他人への責任なすりつけというか
個に没入してしまう自己責任においては
成立しないのではないかと思うのですが・・・

No.2

いつもコメントありがとうございます。
「みんな」のレベルではおっしゃる通りだとは思いますが、語彙の理解で、行き違いがあるように思います。

つまり、あたしらの言っている「街的」とか「町内会」的をご理解されていない質問だと思いますので、答えようがありません。

それをここで解説するのは無理ですので、江弘毅の著作である『「街的」ということ』を読んでみてください。たぶんご理解いただけるかと思います。

答えになっていなくてすみませんが、宜しくお願いいたします。

No.3

マズローの自己実現理論ですが、自己実現より上の段階があるそうですよ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E7%90%86%E8%AB%96

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