世界経済が今後減速する兆候明らか=米財務次官
[ワシントン 12日 ロイター] マコーミック米財務次官は12日、世界経済が米国の消費と経常赤字に過度に依存している半面、アジアや湾岸諸国の一部は金融危機が始まる以前から大幅な経常黒字を計上してきたと述べた。 (略)
同次官は、シンガポールで開催中のバークレイズ・アジア・フォーラムにワシントンから衛星回線で参加し、「世界経済は過去5年間、いろいろな意味でゴールディロックス経済だった。高成長、低インフレに加え、金融危機もほとんどなかった」と発言。
「しかし、世界経済は実際には米国の消費の伸びと経常赤字の拡大に過度に依存し、多くの国で経常黒字が拡大していた」と述べた。
残念ながら、ドメスティックな経済環境の中で、公共事業に依存するあたしたちにとって、この五年間はあらゆる意味でゴールディロックス経済じゃなかったわけだけれど、
「世界経済は過去5年間、いろいろな意味でゴールディロックス経済だった。高成長、低インフレに加え、金融危機もほとんどなかった」
というマコーミック米財務次官のことばはかなしい。それは、破綻の危機にある夫婦が、なんとなくうまくやってきた時代を思い出しての「あー」のようでもあり、あたしたちが、なにげに暮らしてた平凡な日々を思いだしては、つい腹の底から出てきてしまう「あー」のようでもある。
そしてあたしは、中原中也が「冬の長門峡」で絞り出していた泣きの「あー」を思い出していた。
長門峡に、水は流れてありにけり。
寒い寒い日なりき。
われは料亭にありぬ。
酒酌みてありぬ。
われのほか別に、
客とてもなかりけり。
水は、恰も魂あるものの如く、
流れ流れてありにけり。
やがても蜜柑の如き夕陽、
欄干にこぼれたり。
あゝ! ――そのやうな時もありき、
寒い寒い 日なりき。『冬の長門峡』 中原中也
ゴールディロックス経済
ゴールディロックス経済というのは「あゝ! ――そのやうな時もありき」なのである。経済学の言葉では、インフレを起こすほど熱くもなく、不況を起こすほど冷めてもいない経済のことで、それがなぜゴールディロックス経済と呼ばれているのかについては、「日刊ベリタ : 記事 : 【28】「ゴルディロックス経済」と3匹のクマ」を参照されたし(非常によい解説)。
しかし「世界経済は実際には米国の消費の伸びと経常赤字の拡大に過度に依存し、多くの国で経常黒字が拡大していた」を、わかっていても止められなかったことで、今の事態を招いている。
つまりゴールディロックス経済というのも「シアワセ」には違いないのだが、悔いの残る「シアワセ」だったということなのだろう。それは「あのとき、こうしていれば」というようなもので、なんとも諦めが悪いのだけれども、その諦めの悪さが、人間のかなしさなんだろう。
あー
しかし考えてみれば、あたしはここ十数年、「あー」ばっかりなのである。「あー」と思ったあの頃でさえ、今では「あー」の対象だったりして、下手をすれば、毎日「あー」なのでる。なんなんだこの「あー」は。