午前5時起床、山鹿は曇り。昨日人吉から九州横断特急で熊本に向かかうあたしを、坂本駅で迎えてくれたものは、SL人吉号だった。
思いがけぬ出会い、初めて見る(子供の頃の記憶は消えていた)動くSLは、黒光りする先頭がりりしく立派に塗装されていた。
けれど走り去る車窓から手を降る人々を見た途端、なせか涙がこぼれた。
こちらがあの世のものなのか、あちらがそうなのかはよく分からないが、たぶんあちらがそうなのだろうと思う(なにしろあたしはこれから山鹿に行くのである)。
この世のものとは思えない不思議なものを見た、と思ったとたん、あたしの方があの世にいるのでは、と思ったことはあとから書く。