主流のメカニズム
本書では、主流が生成されるメカニズムを大変重視しています。このことは、ミームが主流であったりそうでなかったりする、つまり文化形成のメカニズムを知ることで、私たちがさんざん耳にしてきた、「中小建設業にIT化はいらない」という文化をつくりだしてきた仕組みを知ろうとすることを意味しています。それは、逆説的には「中小建設業にIT化は必要だ」というミームは文化を形成できるのかを考える基盤になることを意味しています。ここではその概観を見てみることにします。
信頼の構築による淘汰から再生へ
本書では、主流が生成されるメカニズムを大変重視しています。このことは、ミームが主流であったりそうでなかったりする、つまり文化形成のメカニズムを知ることで、私たちがさんざん耳にしてきた、「中小建設業にIT化はいらない」という文化をつくりだしてきた仕組みを知ろうとすることを意味しています。それは、逆説的には「中小建設業にIT化は必要だ」というミームは文化を形成できるのかを考える基盤になることを意味しています。ここではその概観を見てみることにします。
それでは、ミームとはなんでしょうか。『現代用語の基礎知識2001』(自由国民社)から引用すると、
・ミーム(meme)
生物の遺伝子のように伝えられていく人間社会の習慣や文化。
では、「ミーム」についての理解をはじめる前に、ひとつの問いを持ちだしましょう。それは、「なぜ社長の乗る車は高級車なのか」という問いです。会社で社長用の車を購入する時、皆さんの会社でも、それが新車であれ中古車であれ、高級車とよばれるものを例外なく選択するはずです。その行為の良し悪しはここでは関係がありません。問題は「それはなぜなのか」ということなのです。
本書では、IT化と情報化を明確に区別していますが、ここではIT化と情報化を簡単に分別する方法を書いておきます。それは、簡単にはこんなふうに理解してもらえばよいかと思います。
「コミュニティ・ソリューション」は、その位置を「コミュニティへの方向性」に置く問題解決方法です。これは、コミュニティを形成するメンバーとの積極的につながりを構築することで問題を解決しようとするもので、例えば「オルフェウス室内管弦楽団」による「オルフェウス・プロセス」(※ソロやコンダクターを務めることのできる力を持った一流の演奏家の集まりですが、世界で唯一の指揮者のいないオーケストラとしてそのコモンズの問題解決方法)や「リナックス・コミュニティ」(リナックス・コミュニティには企業組織のような権限によるヒエラルキーはなく、リーナスが最終的に下す決定をコミュニティ・メンバーが承認するというルールが出来ています)(金子,2002,p49))がその事例とされています。
では最初に、「ヒエラルキー・ソリューション」について簡単にまとめておきます。これは選挙のようなシステムで、権限を第三者に委譲することで問題解決を図る方法なのですが、アローのいう「選挙によって選ばれた政治体制による政治的決定」の最高機関を「政府」とすれば、インターネット社会ではこの問題解決方法の存在価値は薄くなるものでしかありません。
ここでは、インターネット社会の特性をベースに、社会的、経済的な問題に対する既存の問題解決方法の問題点をまとめておきましょう。ここでの考察は、後に行う公共工事依存型の中小建設業が抱えるさまざまな問題(公共工事という問題)の考察にある示唆を与えてくれることになるはずです。
金子郁容は、『新版 コミュニティ・ソリューション―ボランタリーな問題解決に向けて』でインターネット社会を「ふたつの方向性」を持つ象限(※平面を直交した二直線で分けた四つの部分)によって描きだしています。(金子郁容,『新版 コミュニティ・ソリューション』岩波書店,2002)
ここでは、そのふたつの方向性を、金子によるインターネット社会の描写をなぞることで理解を進めたいと思います。そのふたつの方向性とは次のようなものです。
グローバルへの方向性
G(global)軸
・世界が平滑化しグローバル・スタンダードが支配的になる
・マーケット・メカニズムが一層重要になるグローバルな活動が必要とされる
コミュニティへの方向性
C(community)軸
・文化的・経済的多様性と分散化が進む
・たくさんの新しい関係性が発生し多種多様なコミュニティが形成される