IT化講座序―フィロソフィア・ヤポニカ(中沢新一)

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フィロソフィア・ヤポニカ

「IT化講座」(現在は「Being Digital」に統合されている)の最初のエントリーに、これを書くのは少々気が惹けたのだが――たぶんマニュアル的なものをお望みの方には、敬遠されてしまうだろうから――、中沢新一の『フィロソフィア・ヤポニカ』は、私のIT化の教科書であるこことで、(あえて)これを最初に持ってきてしまった。

フィロソフィア・ヤポニカ

フィロソフィア・ヤポニカ

中沢新一(著)
2001年3月10日
集英社
2730円(税込)

IT化の方程式

これが私のIT化論の教科書なのは、これが「IT化」の本だからではない。この本は、田邉元の「種の論理」と、西田幾多郎の「場の哲学」という、ふたつの日本哲学(フィロソフィア・ヤポニカ)について書かれたものであり、内容は現代思想、哲学的なものだといえる。

しかしそれを、(あえて)IT化の教科書だというのは、私のIT化論は、次の方程式を、IT化――つまりは経営の基本方程式として機能させようとするからだ。それは伊丹敬之氏の受け売りだが、「IT化=環境×原理=経営」である。

これは、当たり前のことをいっているに過ぎない。つまり、「ITが普通にある時代」に、IT化とは経営であり、それは環境と原理との乗数としてある、ということだ。

 IT化と経営とは別のものではない――これは最近はかなり理解されてきたように思う。またそれは、環境と原理の乗数として示されることで、IT化=経営なのである。つまり、IT化と経営を、マネジメント(ドラッガーのいう意味で)と読み替える ことが出来る。であれば、この方程式は、企業経営ばかりでなく、協会や、地域社会にも、同様に機能すると(私は)考えている。

情報を見る目

つまりこの方程式を機能させるため必要なものは明白である。それは、環境と原理を知ること――環境と原理を見る目、つまり情報を見る目――である。であれば、その目としての基底――つまり哲学は必要だと(私は)考える。それをフィロソフィア・ヤポニカ(日本哲学)に求めているということだ。

桃論』後の困難

しかし、これを教科書だ、と断言してしまう私は、その断言故に、困難を背負わされてもいる。それはなによりも、この理論の面倒くささである。

個人的には、『桃論』後、この一冊を中心にして思考のリンクを広げてきた。であれば、いくら複雑で難解とはいえ、(私自身は)多少なりとも読めるし、説明できるし、実践に活用できるようにはなる。しかし、困難は残る。

それは、こんなものを基底にしてしまっている私のIT化理論を、皆さんに理解してもらうことが難しいということだ。『桃論』後の私の活動は、それとの戦いのようなものであって、それは今でも続いている。

「種の論理」の可能性

桃論』以降、ほんの数年の間に、公共事業という産業も、地域(パトリ)も、衰退に加速度を加えてしまった。しかし、多くのマネジメント・システムは、この状況にまったく対応できてはいないのである。

私が、フィロソフィア・ヤポニカ――特に「種の論理」(田邉元)をベースにしたIT化論を組み立てているのは、それが、「こんな時代」だからこそ威力を持つ実践の哲学だ、と(少なくとも私は)信じているからだ。

それは欧米流のマネジメント・システムの受け売りでもなければ、欧米流の合理のシステムでもない。徹底した中間の思考である――故に単純バカボン的な白黒思考に慣れた脳みそには理解は難しいと思う。

しかし、私が「こんな時代」と呼ぶ環境の中では――その概観(つまり環境)は、「7月25日北上での講演資料(裏浅草グルメマップは防災協定マップである)」にまとめたので、其方をご覧いただければ、と思う――、「種の論理」は、大きな可能性を秘めていると考えている。

ということで、このIT化講座は、哲学的な部分を極力省いて書いていこうと考えていたのだが、私のIT化論の基底にある「種の論理」だけは、どうしてもはずせないので、それは、次回に簡単に説明を試みたいと思う

その後、企業ベースと協会(事業者団体)ベースに分けて、IT化の実践をまとめてみたいと思う。また、この「IT化講座」のエントリは、常に編集モードであることを、あらかじめお断りしておきたい。

参考

場のマネジメント―経営の新パラダイム

伊丹博之(著)

1999年1月30日
NTT出版

追記

2007/04/09追記:結局「IT化講座」は書かれることはなく「Being Digital」カテゴリーに飲み込まれてしまった。(笑)

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