鮪 烏賊
鮪                          烏賊


午前6時30分起床。浅草は晴れ。12月13日の昼餉ランチ は札幌は円山の鮨菜 和喜智。この寿司屋は思考回路の短絡ショートサーキットが楽しい。それは、うちの近所(浅草)の、どちらかと云えば生真面目な江戸前に慣れ親しんだ脳みそ(というか身体だな)には、新たな媒介と回路であり、つまり浅草的な予定調和が利かないことから生じる楽しさである。つまり、和喜智には和喜智の予定調和があるのだろうが(たぶん)、あたしはその予定調和を知らない異邦人だからこそ生まれ得る楽しさだ。

鰤ヅケ 海老
鰤                           海老

この日は醤油むらさきは提供されない。すべて煮きり醤油が塗ってあるか、ヅケか、塩+酢橘で食べる。例えば鰤のヅケなのだが、このヅケは単なるヅケではなくて、ニンニクの香りがしたりする。それは非浅草的な[寿司をたべる→うまい]の思考回路である。しかしこれもうまい!としか云いようがない。だから、普段の[寿司をたべる→うまい]のサイクルから溢れる剰余エネルギーは、笑いとなって放出される。

例えば海老、これは福岡産の天然物だそうだが、非常に大きな車海老で、一カンをふたつに切って供される。片方が煮きり醤油、もう片方が塩+酢橘である。煮きり醤油はまだしも(とは云っても嘘みたいにうまい海老なんだけれども)、海老のにぎりを塩+酢橘でいただくのは浅草的には地図のないことでしかなく、しかしこれが物凄くうまかたりするから、またあたしは笑うしかないのである。

つまり和喜智の楽しさというのは、真空管がトランジスタになるような楽しさ、トランジスタがICチップになるような楽しさ、つまりいつもと違うんだけれどもめざしているところは同じ、けれども回路は書き換えてみました、というところにある(ちょっと違うか)。

けれどそれを続けてしまうと客も緩みっぱなしになって逆に疲れてしまうから、ちゃんと基本オーソドックスな技もだす。真空管である。それは緊張と緩和(@桂枝雀)なのであって、和喜智の寿司は、落語の王道をいっていたりするわけだ。

赤貝いくら〆鯖
赤貝                 いくら                〆鯖
牛蒡お吸い物あなご
牛蒡                 お吸い物              穴子(この日の〆)

白子それであたしがこの日一番笑ったのが白子のにぎり。これは実質的なこの日の〆の握りだった。※1

白子とくれば、軍艦巻きにでもするのかなとフツーは思う。けれども和喜智は、じゅうぶんに火を通した白子を握ってきたのである。それもフワフワに緩い握り具合で。

だから、手を出してください、なのである。あたしの手のひらに、その白子のにぎりは置かれる。

それをそのまま口のなかに放り込めば、もうあなた、あはは…と笑うしかないのですよ。いったいぜんたいどうやったらこんな食べ方を考えつくんだろう。ここの親方は年中無休で寿司のことを考えているのだろうか。

鮨菜 和喜智 (寿司 / 円山公園)
★★★★ 4.0
札幌市中央区南二条西25-1-22
011-640-3768
鮨菜和喜智


大きな地図で見る

※注記

  1. 〆に出されたのは穴子なんだけれど、それは玉子ぎょくのかわりに、である。