社会資本整備の是非
from センセイ、聞いてください!:NBonline(日経ビジネス オンライン)


設問番号と内容

  • 第4問 道路や空港などの社会資本整備は、既に国民生活や経済活動を支えるのに十分なレベルにあり、今後はそのペースを減速すべきだと思いますか。
  • 第7問 地方経済を活性化させるには、国から地方へ権限と財源を大幅に移譲し、道州制などの導入も含め現在の都道府県の枠組みを見直すべきだと思いますか。
  • 第9問 経済の活性化のためには、更なる規制緩和を進めるべきであり、その結果として所得格差や地域格差が広がるのはある程度しかたがないと思いますか。
  • 第12問 都市に人・モノ・カネが集中するのは自然な流れであり、それが日本全体の競争力に繋がる側面もあるので、都市と地方の格差是正は必ずしも重要ではないと思いますか。
  • 第16問 外国との自由貿易を今以上に推進するためには、国内農家の保護をさらに強化するよりも、再編・淘汰を促しながら農業の競争力を高める政策を実施したほうが良いと思いますか。

午前7時起床。浅草はうすぐもりの蒸し暑い日だ。朝方、[センセイ、聞いてください!:NBonline(日経ビジネス オンライン)]という記事を興味深く読んだ。それは日経ビジネスが行った「第1回経済政策アンケート~日本再浮上への挑戦~」の結果分析である。

回答者は、ほとんどがサラリーマンなので、有権者というよりは、今のサラリーマンの考え方をある程度把握しようとしたものだと思う。

公共事業不要

そのアンケートでは、道路や空港などの社会資本整備のペースを減速すべきかを聞いている項目があって、当然にあたしはそれに反応した。それが上の図と設問で、「そう思う」を5点、「思わない」を1点として集計している。つまり、点数が高いほど不要派ということになる。 その結果を見れば、

東京都や大阪府など5都市に住む会社員と、それ以外の地方に住む会社員のそれぞれの平均点はともに4.1点という結果だった。地方は、都市に比べてまだ道路建設を望んでいるという見方は、もはや幻想なのかもしれない。

ということなんだろうが、それはいつもの日経の論調であって、とくに驚くようなことではない。

でも格差は是正して欲しい

しかし流石に「問12」だけは、「地方」は、どちらかと言えば「思わない」なのだし、ここだけは「都市」もトーンダウンするのが面白い。それは「格差是正は必ずしも重要ではない」とは思っていない、ということであって、なぜなら、格差を是正して欲しいのは、他ならぬ回答している自分だからだ(日経の分析はそれを無視しているのはいつものことだ)。

リバタリアン的なサラリーマンと小沢さんの思うつぼ

つまり、彼らは「格差是正」はして欲しいのだけれども、その方策に「公共事業」は不要だというのである。そして他の調査結果を見れば、皆さんは立派なリバタリアンである(小さな政府で規制緩和)。

全く矛盾した人達だなぁ、とあたしは思うのだけれども、この心象こそが今のサラリーマンに主流のミーム公共事業ダメダメミーム)なのだろう。

そしてこれが、小沢さんの求めていたものだろうな、とも思うのであって、つまりこれにぴったりと波長があうのが(小沢さん的な)「負の所得税」なのだ。しかし農家のそれ(民主党の全販売農家への所得保障制)は認めたくはないのである=問16の結果を見よ。

あたしは、ここに強烈に孤独な個人(利己心だけの個)を感じてしまうのだが、それはさておき、この心象にぴったりとあってしまう政策が(小沢さん的な)「負の所得税」であることで、つまり、なんらかの形で、サラリーマン減税(所得補償)を行う――その財源は公共事業費(民主党はこれに役所の無駄もあてる)――、という方向性を、民主党は強めてくるかもしれない(このあたりは小沢さんや小泉さんは政局的にうまい)。

このロジックは「わかりやすい」ことで強いミームになる可能性は強いのだけれども、この路線でこられたら、サラリーマン層の民主党支持は強くなるかもしれない。

しかしそんなことより問題なのは、こんな状況でも、公共事業という産業は、全くの無力(無言)のままでいいのか、ということだ。格差の是正は、公共事業という産業の仕事ではなかったのか。