アーバンコーポレーションのチャート頻発する企業倒産の危機が、一流企業にもヒタヒタと迫っている。08年4―6月期決算がほぼ出揃ったが、日本を代表する東証1部上場企業が思わぬほど傷ついているのだ。

(中略)

すぐに気づくのは、トップ5に超優良企業がズラリと並んでいることだ。トヨタ、武田薬品、東京電力、三井物産、関西電力と押しも押されもせぬところばかり。ところが、トヨタの減額は2860億円とダントツ。武田と東電、関電は揃って経常赤字なのだ。前期のトヨタは純利益1.7兆円も稼いで儲けすぎを批判されたが、わずか3カ月で状況が一変した。from livedoor ニュース - 4―6月期 大幅減益の30社リスト


日本で、リセッション(景気後退)という語彙をあまり聞かないのは、ずっと不況だった、と言うか、ここ10年以上景気のいい実感はなかった、という感覚が多くの国民には強いからだろう、とあたしは思うのだけれど、一応、輸出主体の上場企業の多くは、最近まで好景気だったわけだから、こうして08年4-6月期決算をみていると、日本経済が急速に「誰がどうみたって不況」に向かっているのは間違いないのだろうな、と思う。

昨年の今頃、あたしは〈勝ち組/負け組〉の区分をグローバル経済に接続〈している/していない〉を用いて、ドメスティックな産業である「公共事業という産業」の「負け組」状態を説明していたし、グローバル経済と接続が難しい地方の衰退も語っていた。

だからといって、それがグローバル経済に接続できるわけもないし(公共投資次第の金魚論のままだ)、ましてや「勝ち組」の皆さんがそれなりに税収を上げている状況では、それを消費するものでしかないと(国民に)思われてしまった公共投資の増大はあり得ないだろう、と。

けれど、そんな接続的勝ち組さえ、世界的なリセッションの影響を受けるとなると、日本国中総負け状態となる。接続勝ち組の仕事をしていた沢山の中小零細企業もその影響を大きく受けるだろうし、不況時にこそ強い土建業は、今や死語なのだから、つまりこの国は立派な不況なのだ。

その不況の原因は海を越えてやってくる。だからそれは、公共投資を削減するだけで解決できるようなものではないし、構造改革を推進すれば解決がつくようなものではないだろう。つまり今までの政治経済システムでうまくいくわけもないのである。

ドキッとするような指摘をするのは、金融事情に詳しい作家の江上剛氏だ。金融機関は十二分の資金を持ちながら、“貸し渋り”は当たり前で、最近は、無理やり債権回収に走っていることを問題にする。/「まさに“貸し剥がし”です。銀行はリスクから『早く逃げる』ことばかり考えている。戦後、経営難にあえいでいたトヨタを救ったのは三井銀行だった。しかし、今の銀行にはその姿はありません」

建設業界にいて感じるのは、この強烈な銀行の「貸し剥がし」であり、国破れて山河と銀行が残って、いったいなにをしようというのだろうか。下記にある、アーバンコーポレーションは8月13日に民事再生手続きをしている。(それはしょうがないとしても)建設・不動産業界の悲惨さは先にも書いたように強烈で、この業界をここまで追い詰める必要はどこにあるのだろうか。

まあ、そんなものに頼らなくとも個人が生きていける術はあるはずなんだろうが、経済(交換の原理)がまともに機能しないとき、頼るのは国ではなく社会なのに、やっぱり社会の厚み(パトリ)が足りない、と(あたしは)思う。

戦後「交換の原理」はそれを不要なものとして壊してきたものだから、こういう時に、あたしらは依って立つ地面がない。仕事がなくとも、お金がなくとも「なんくるないさー」と言えるのは、結局パトリを持てる者だけじゃないだろうか。

【経常利益の減額幅が大きい上位30社(億円)】

◇銘柄名/07・6期経常利益/08・6期経常利益/差
トヨタ自動車/7,390/4,531/-2,860
武田薬品工業/1,904/-64/-1,968
東京電力/446/-1,163/-1,609
三井物産/2,376/1,253/-1,123
関西電力/438/-423/-861
日産自動車/1,513/825/-688
アーバンコーポレイション/301/-383/-683
東芝/340/-164/-504
中部電力/559/216/-343
JFEホールディングス/1,452/1,121/-331
第一三共/717/409/-308
住友金属鉱山/715/494/-220
東北電力/255/36/-219
パイオニア/162/-57/-219
大阪ガス/389/174/-215
CSKホールディングス/184/-30/-214
ソニー/838/629/-208
東京ガス/363/160/-202
エルピーダメモリ/37/-154/-191
住友不動産/527/337/-190
東京エレクトロン/412/223/-189
九州電力/199/13/-186
日本たばこ産業/910/726/-184
大平洋金属/297/117/-180
KDDI/1,427/1,248/-179
デンソー/1,049/892/-157
アドバンテスト/151/-3/-153
北陸電力/65/-88/-153
富士フイルムホールディングス/700/550/-150
オリンパス/276/127/-149
(日刊ゲンダイ2008年8月15日掲載) from livedoor ニュース - 4―6月期 大幅減益の30社リスト