51TlKwHzsgL._SL500_AA300_.jpg

カリコリせんとや生まれけむ

会田誠(著)

2010年2月25日
幻冬舎
1500円(税抜き)


午前6時40分起床。浅草は晴れ。大晦日であるが全然大晦日という感じがしない大晦日である。東京はやたらと天気が良いのであるが、大晦日にこんな太陽でいいのか、と思う。

今日は大晦日恒例(昨年は頭が回らずやれなかった)七味五悦三会でもやろうかと思ったが、あんまり人に会うようなこともなかったので、七味も五悦も三会もままならず、それじゃ何を書こうかと考えれば、丁度、案外好きな現代美術家、会田誠の「カリコリせんとや生まれけむ」を読み終えるところだった。これは好都合と、感想を書いて今年を終わりにしたいと思うのだ。

会田誠って?

会田誠が好きだ、と書いたが、あたしが会田誠を知ったのは2007年のことだ。そのころ心惹かれていたアールブリュットの影響で、「食用人造少女・美味ちゃん」を知ったのだ(会田誠がアールブリュットっていうわけじゃないけれど)。それは現代美術なんて全然興味も無かったあたしでも、強烈なイメージで忍び寄ってきた。

さらにこのサイトでも、桃知商店のフレーズに引用した「美術に限っていえば、浅田彰は下らないものを誉めそやし、大切なものを貶め、日本の美術界をさんざん停滞させた責任を、いつ、どのようなかたちでとるのだろうか。(会田誠)」は、月に200~300件ほどのアクセスがあり、会田誠の名前は、バルトやラカン、それにクロード・レヴィ=ストロースと同じぐらいにあたしの脳味噌にこびりついてしまっている。

かといってあたしは会田誠については何も知らないに等しく、今回「カリコリせんとや生まれけむ」を読んで、あんまり現代美術ぽくなくて安心したのだが、そもそも現代美術ぽい話しがどういうものかなんてわかるわけもなく、あたしが会田誠が好きだと書いても、本当は好きかどうかなんてわからないな、と思う。

一番面白かった

それでこの書籍をどう評価するかだが、この本は幻冬舎のPR誌「星星峡」に書いた文章をまとめたものだ。主題も毎月変化している。けれど、あたしは今年読んだものの中で一番おもしろかった(1年と4ヶ月、ほとんど本を読めなかったあたしの感想だが)。

先の「美術に限っていえば……」に関する言い訳があるのだが(「ある近作についてのもにゃもにゃしたコメント」)、読んでいて「あー、そうか」と思ってしまう説得性だし、千葉県東金に住んで「ファスト風土」そして「国道16号線的郊外、ジャスコ-TSUTAYA的空間」、と(社会学系のあたしにとって)懐かしい言葉が出てくるあたり(「東金の暮らし」)は、復帰したての脳味噌には非常にわかりやすいのだ。

そう、この本は非常にわかりやすい文章で書かれている。辞書を調べて読むなんていうことはまずない。しかし、その代わりに心に残る文章を書くのだ。会田誠、いやー、年の終わりにいい本を読んだ、と記しておこう。