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スパイト行動(嫉妬)につける薬―[田中 秀征:行政改革と公務員改革の灯を消してはならない]を読んで。

午前7時起床。浅草はくもり。

[田中 秀征:行政改革と公務員改革の灯を消してはならない - ビジネススタイル - nikkei BPnet]を読む。

秀征先生の言っていることは、いちいちごもっともなもので、反論の余地もない(ように見える)。


私が恐れているのは、改革熱の減退に便乗して、必要な改革まで棚上げされることだ。どうも政治はその方向に向かっているように思われる。/福田政権ができて、いまだ日が浅いにもかかわらず、今年中に策定が予定されていた「国家公務員制度改革基本法案」(仮称)が来年以降に先送りされた。また、キャリア制度の見直しなどを論議する有識者懇談会も、11月中の報告書提出を見合わせるという。/「改革の歪み」、「改革の影」の合唱の中で、今最も必要な行政改革や官僚改革が後退しつつある。先送りして、解散・総選挙にでもなれば、ご破算なるという思惑からだろう。

基本的には、行政改革や官僚改革が後退してはならない、という秀征先生の意見を(私は)支持するが、では改革したら国民は幸せなのか、と言えばそうでもないだろう。

つまり「私が恐れているのは、改革熱の減退に便乗して、必要な改革まで棚上げされることだ」という秀征先生の心配事は現実化するだろう。

それは国民が自らの幸せを求めるが故にである。

スパイト行動

なぜなら、国民の公務員批判はスパイト行動(意地悪)だからだ。

スパイトとは意地悪のことだが、そのエネルギー源は「嫉妬 jealousy」である。

[spite]

━ 【名】
【U】 悪意, 意地悪
He did it from [out of] spite. 彼は悪意から[腹いせに]それをしたのだ.

━ 【動】【他】 〈…に〉意地悪をする, 〈…を〉いじめる He did it just to spite me. 彼は私に意地悪をするだけのためにそうしたのだ.
New College English-Japanese Dictionary, 6th edition (C) Kenkyusha Ltd. 1967,1994,1998

つまり、俺ら生活苦しいのに、(俺らの)税金で生きてるおめーら(公務員)が(たいした仕事もしないで)いい生活してんのはおかしいじゃねぇのか、である。

これは、普通の人間なら誰もがもつこころの構造から生まれる感覚だろう。

この嫉妬をうまくとりまとめたのが、古くは細川さんであり、そして小泉さんであった。

彼らは国民の公務員に対する嫉妬を追い風に、公務員改革(例えば郵政民営化)を行い、公共事業を減らし、支持を拡大していった。

日本における新自由主義(小泉-安倍路線、つまり「小さな政府」)は、人間のスパイト行動(嫉妬)の初期的な帰結だと(私は)思っている。[世界最後の社会主義国家? 野口悠紀雄の『戦時体制未だに終わらず:史上かつてない平等社会』という欺瞞。](ちょと違うか?)

しかしそれは文字通りの「意地悪」をしただけであり、その意地悪の結果と言えば、〈俺〉の生活は改善もされれず益々悪化したに過ぎない。

けれども問題は、今日の雨傘がない、なのである。

背中とお腹がくっつくぞ!なのである。

国民の多く(給与所得者の40%とか言われている)は、今や年収200万の時代となった。[「個と組織 新たな挑戦」―働くニホン 現場発。(日本経済新聞)]

それはある意味当然のことで、スパイト行動は、自分の利益を犠牲にしても、相手が利益を得ることを阻止しようとする行動なのだから、嫉妬する側にも不利益をもたらす。(嫉妬の帰結なんてろくなもんじゃない)。

そして嫉妬につける薬はないとされている。

嫉妬の前では、どんな論理的な反論も意味を持たないのはたしかだが、しかし、こんな時だからこそ、嫉妬につける薬は存在していたりする。

それは皆さんが大嫌いな「ばらまき」なのだ。

一見すると,相手の足を引っ張る「スパイト行動」をとる人々がいる社会の方が,純粋に自己の利得のみに関心のある人々からなる社会より,悪い帰結がうまれそうである.しかし,上記の実験結果では,スパイト行動が公平性や協力を生み出す源となっている.これらは,「各個人が何らかの制約条件の下で自己の利得のみを最大化する」ことを仮定する伝統的な経済モデルからはわからない,実験による新しい発見と言えよう.(船木由喜彦、大和毅彦)

つまり「意地悪」の帰結は配分に向かう。

官僚の天下りを前提とした「ばらまき」「利権」に群がる土建屋と政治家という(手の届かない)おいしい構造に嫉妬したはずの国民が、今度は、土建屋抜きの直接的な「ばらまき」「利権」に期待した、というのが先の参議院選挙の結果だろう。

官僚は〈私〉だけを向いてくれれば(一時的に)許してもいいのである。(除く社保庁)

それで傘も買えるし、背中とお腹の距離は遠くなる(かもしれない)。

だから、福田内閣は、「ばらまき」にかわる言葉(語彙)の発明内閣となる、と私は言った。[欝の時代に治療薬として公共事業が使えないのはなぜだろうか。―南九州三県合同研修会より。]

それは勿論官僚が考えるのだけれどもね。w

ここで「私が恐れているのは、改革熱の減退に便乗して、必要な改革まで棚上げされることだ」は現実化する可能性は高いだろう。 下に恐ろしきは、嫉妬なのであるな。

秀征先生、(たぶん)残念でした、でしょうね。

Comments [2]

No.1

はじめまして。
「男の料理」等々、いつも楽しく拝見させて頂いています。

私は政治に疎いため、もしよろしければ教えていただきたく思い、コメント致しました。

国民の嫉妬の心理からくる要望で、例えば今後天下りしにくいような制度をつくった場合、結果的に嫉妬する側の国民が不利益を被ることになるのでしょうか。

天下り禁止法みたいなものについては、国民が自分の首を絞めるような結果にはならないような気がするのですが…。
私は政治に疎く、どういう結果をもたらすのか深く想像することができず、もしよろしければ教えていただけたらと思いました。

No.2

>marumaruさん

はじめまして。
コメントありがとうございます。

>国民の嫉妬の心理からくる要望で、例えば今後天下りしにくいような制度をつくった場合、結果的に嫉妬する側の国民が不利益を被ることになるのでしょうか。

わかりません。

ただ、例えば天下り禁止法のような法律をつくるというのは、スパイト行動を超えた、制度・公務員改革として必要だと思うのは、私は秀征先生と変わりがありません。

それが可能なのは、その改革を支持する国民があってこそでしょうし、それを実現するのは政治でしょうから、国民が目先の利益を超えて、どこまで政治というものを考えることができるか、なのだと思います。

しかし現実は(特に地方は)思考を超えて疲弊していたりします。
それはある意味「極端に」なのですが、極端はそれが限界質量に達したとき、どうしても大きな「ふりこ運動」を導きがちです。

だとすれば、小泉改革反省内閣としての福田内閣は、大きな揺り戻しの可能性が高いのかもしれません。そしてそうすることが、今の民主党の力を殺ぐには戦略的に有利なのだとすればなおさらだと思います。
http://www.momoti.com/blog2/2007/10/vs.php

ただ、上(本文)にも書いたように、公務員改革は進めるべきだ、というのは私の基本的なスタンスです。(これはずっと変わっていないのです)。

ただ政治も、それを選択する国民も、自らの嫉妬の範疇でしか動けないのであれば(と言うか、だからこそ)公務員改革は遅々として進展していない、と思えるのです。

今回のエントリーは、頭では絶対に進めるべきだとわかっている公務員改革が、なぜこんなに時間をかけても、遅々として進まないのか、ということを念頭に書いたつもりでした。

ということで、質問の答えにはまったくなっていないかと思いますがご勘弁ください。

今後とも宜しくお願いいたします。

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